表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
勇者教育編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/145

第70話


一旦、今日の報告ということで長の家へと集まった。


「それで、勇者の件ですが…本当にあの子が…?まだ10歳ですよ?」


ジレンからあらかじめ報告を受けていた長が戸惑ったように俺へと問いかけてくる。


「残念ながら事実です。聖剣が彼を選びました。彼が勇者です」


これに関しては揺るぎようがない事実だ。長夫婦は悲壮感たっぷりの表情を浮かべていた。

これから辛く過酷な出来事がたくさん待ち構えているだろう。そんな環境に10歳の子を放り込むのは確かに気が引ける。

だが…。


「一度勇者として覚醒した以上、魔族も放っておかないでしょう。ここに残るにしても、旅立つにしても、勇者として実力をつけておかないとかえって彼が危険です」


おそらく魔族もあの覚醒には気づくだろう。どれくらい時間が残されているかわからないが、接触はしてくるだろう。どんな手法を取ってくるかは不明だが。

場合によってはセシルの時のように村ごと焼き払うといったこともあり得る。

まあ、そんなことをさせる気もないが。


「彼がきちんと力を扱えるように、しっかりと教えます。彼自身の意思で選択できるように」


力を持つと望む望まない関係なくいろんな輩や出来事が引き寄せられる。

そこから何をどうするか。それを決めるためにも力が必要だ。それを選択できるようにしっかり鍛えないと。


「…わかりました。よろしくお願いします。それとしばらくここに滞在するのなら空き家が一つありますのでそちらをご利用ください。ジレン、案内をよろしく」

「はい。じゃあついてきてくれ」


松明を手に外へと出るジレンを俺たちは一度礼をしてから追いかける。


外に出てくると太陽は完全に沈んだようで、真っ暗闇に包まれていた。

この時代に街灯のようなものはないので、あるのはそれぞれの家屋から漏れ出ている光と月や星の明りだけだ。

ジレンが持つ松明によって足元は照らされているが、それ以外はほぼ真っ暗だ。


「にしてもジェノのような子供が勇者に選ばれるとはな…あれって基準なんなんだ?」

「さあ?そこまでは俺にもわからん。魔力量とかそういったものじゃなく、才能とか、何か特別な何かを持っているんだろう」


勇者は神に力を与えられた存在だ。おそらくその与えられた力が子供に継承され、それが徐々に広がっているんだろう。

隔世遺伝というものがある。与えられた力もそういうものに影響与えているのかわからないが、勇者の子孫が増えていけば、それだけ複数人の該当者がいてもおかしくはない。

おそらくそれが今回はあの候補者達だったんだろう。


「特別な何か…ね…あいつはやさしくまじめないい子なんだがなぁ…」


おそらく何もなければ否定していただろう。だが、あのジェノが選ばれた時、ジレンも一緒にいたんだ。あんな光景を見せられて否定できる要素なんてないだろう。


「ほら、ここだ」


そう言って示してくれたのは何の変哲もない平屋。特にどこかガタが来ているって感じではないが、なぜ空き家になったのか。


「ここはもともと老夫婦が暮らしていたんだがな。この間の流行り病で二人とも…。その後掃除してから空き家になったんだ」

「なるほど」


ここに来てから何度か話題になっている流行り病。おそらくその病によってできた傷は思いのほか大きいのだろう。


「さて、じゃあ俺も帰る。ここは基本的に自由に使っていいが、くれぐれも騒ぎはおかさんでくれよ」

「ああ、ありがとう」


片手をあげてからジレンは歩き去っていった。松明を持つジレンがいなくなったので真っ暗になったから光球を作り出してから屋内へと入った。

おそらくこの村のほとんどの家が同じ間取りなのだろう。中は埃っぽい匂いはするだけであり、間取りに関してはジェノの家と同じだった。


「さて…んじゃあ、報告と相談しましょうかね」


適当に荷物を降ろして俺は座る。

念には念を入れ、周囲で聞き耳を立てている人がいないか気配を探っておく。

まあ、そんな暇な奴もいないだろうし、する必要はないとは思うが念のため。


「とりあえずジェノ君が勇者として目覚めたから明日から鍛えるの?」

「そのつもりだったが…今鍛えるわけにもいかなそうなんだよなぁ…」


ジェノと妹のソアラの姿を見てから考えが変わり始めている。

確かにジェノを鍛えれば勇者としての実力はあがるだろう。だが、それはきっちり体が出来上がっていることが前提だ。

二人は栄養不足故に通常よりか成長が遅い。その状態で鍛えても怪我のもとだ。まずは体を作らないといけない。


「とりあえずしばらくは体を作ることから始める。それと並行して和也とセレス、玲はインフラ…というか水回りと魔法陣のほうをお願いできるか?」

「ああ、構わんが…玲から聞いていたが、大工を呼んで家の建て替えするって話はどうするんだ?」

「そこらへんは俺達が手を出すこともないだろう。ってか、素人が手を出していいことじゃない」


俺たちがいた世界ではDIYというのがあったが、それはあくまで「できることは自分でやる」程度だ。家具を作る。庭や玄関前を整える、といったところはできても、建っている家を壊して建て直すなんてことはまず無理だ。

仮にできたとしてもそれはかなり危険な物となる。そんなことをわざわざやる必要はない。プロがいるならプロに任せる。それが一番だ。


「んじゃあそっちはいいのか?」

「ああ。必要なものは用意はするが、基本手を出すことはしない。で、瑠衣とシエル、ノエルは食生活のほうをどうにかしてほしい」

「どうにかって?」

「とりあえず…全体的な食事がどんな感じか。必要なものはなにか。この村で栽培するものやらなにやら、万能の書を渡すからそれらをまとめてほしい」

「いいけど…結構大変そうだねぇ…」

「私はまだすぐにできることはなさそうだから瑠衣の手伝いするわね~」

「大丈夫なのか?」

「別にいいよ。それに水回りだったら私もできるし」


そう言って胸を張るセレス。最近魔法陣関連ばっかやっていたが、セレスは水の精霊だ。本来水関連の担当をするのなら玲よりセレスのほうが向いている。


「ねえ、敬。なんでセレスちゃんに水関連の事頼まないの?水の精霊だからセレスちゃんのほうが向いてるんじゃない?」

「まあ、確かにそうなんだが…水回りって結構大ごとなんよ。魔法陣と同時進行はきついかなと思って」


魔法陣の勉強をしているのはセレスだけだ。もともとセレスが生きていた時代は魔法陣が結構発達していた時期でもあり、俺みたいに付け焼刃な知識に比べてもきちんと下地ができている。

だから魔法陣に専念をしてもらって、水回りのほうを玲に任せておきたかった。


「ま、その考えもわかるけどね。今回は私に任せてほしいな。ちょっと試してみたいことも有るし」

「試してみたいこと?」

「うん。ま、それは完成してからね。とりあえずこっちのほうは任せて」

「ふむ、考えがあるなら任せる。んじゃあ瑠衣と玲は食生活を頼む。俺は真白と連絡とったり、来た人と話しておくから」

「はぁい、で、今日はこの後は魔物討伐?」

「ああ、その予定。セレスはここで村を頼む。で、俺と瑠衣、和也と玲の二手に分かれてリストに挙げた魔物を討伐していこう。ってわけでクーはお留守番」

「…や…」

「やじゃなーい。暗くて危ないんだから、今回はお留守番」

「やー…」


グッとクーの手に力がこもる。

いつもなら連れていくのもいいが、今回は瑠衣と一緒に走り回ることになる。

移動速度が速い俺と瑠衣が少し離れた位置の大型の魔物を。和也と玲が近場の数が多い魔物を片付けることになっている。

オークなど一撃が大きい魔物もいたりするので、そこにクーを連れていくのはリスクが高い。

なだめつつ何とかノエル達と待っていてもらおうと必死に説得して、なんとか留守番に納得してもらった。

ちなみにその条件としてしばらくの間時間がある時に頭をなでてあげないといけなくなってしまった。

まあ、それくらいならいいか…。



さて、とりあえず明日の事は決まったので、クー達を留守番に俺たちはこっそりと村を出た。

それぞれ遺跡でリスト化した一覧を手に二手に分かれて森の中へと入っていく。


「えーっと、私たちは何だっけ」


瑠衣は早く移動できるのがないのでとりあえず俺が背負って目的地へと向かう。


「オークの群れが1にワイルドボアとかいうでかい猪が2、あとは幻惑を使うとかいうイリュージョンバタフライの群れに頭が二つある毒蛇のツインヘッドスネーク3だな」

「結構いるねぇ。大丈夫そう?」

「問題ないだろ。イリュージョンバタフライがちと厄介かもしれんがな」


幻惑を使うというが、実際には毒の鱗粉による乱反射を使うことで姿を増やすというのが主だ。

サイズも普通の蝶と同じサイズなせいで、どれが本体かわからず、倒しきる前に鱗粉を吸って毒によってやられるというのが主になってしまう。

まあ、種がわかればいくらでも対処ができる。派手にやって村人に気づかれるのも面倒だが、それで時間がかかって俺たちがやられたら元も子もない。少し明るくなるかもしれないがどうにかなるだろう。


「で、最初は何?」

「オークの群れだな。数は10。リーダー的なオークの上位種のハイオークが一体いるが、全体的な脅威度はそこまででもない。あと肉がうまいらしい」


事前情報で調べた結果。最後のほうにひっそりと書かれていた。

オークは全体的に肉がうまいらしいのだが、それは上位種になればなるほど美味く、一番上のオークキングに関してはかなりの金額で取引されているとかなんとか。


「…おいしいんだ…」

「血抜きして食料確保にするのもありかもなぁ…」


ちなみにワイルドボアもうまいらしく、それも食料候補となっている。


「おっと、そろそろだ」


遠くのほうにわずかだが火の明りが見える。

気配を消しつつ、少し高めの木に登って、上から全体を見下ろしておく。

見張りなのか、二体ほど焚火の近くにオークがいる。

その奥には小さな洞窟があり、気配を探るとそこの奥に残りの8体がいるようだ。


「とりあえず見張り2体に洞窟の中に8体。まず見張りから倒すか」


風を操って焚火を消す。唐突に暗くなったことにオークたちが驚いている間に、一気に木から飛び降りてすれ違うざまに2体のオークの首を切り落とした。


「これでよしっと。うし、内部行くか」

「私はこのオークさばいてるよ」

「え、いかんの?」

「敬だけで終わるでしょ?こっちは早めにやっておかないと悪くなりかねないからねぇ。ある程度さばいてアイテムバッグに入れておこうかなと」

「まあいいが…完全に食材としか見てないな、お前」

「まあねぇー、じゃあそっちはよろしくー」

「へいへい」


まあ、周囲に厄介そうなやつもいないし、問題ないか。

とりあえず洞窟の中に入ると、松明がところどころ壁に設置されている。


「オークって暗視持ちじゃないのか」


魔物は夜行性という印象がどこかにあったので、てっきり暗視持ってるかと思っていた。

ゲームやラノベ知識だが、ゴブリンは暗視持ちとして書かれることがおおいから、それも影響しているかもしれない。

とりあえず松明を消しつつ進んでいく。真っ暗になった洞窟はまともに見えないが、風のおかげで地形などはすべて把握できている。

松明の近くにいる見張りのオークも松明が消えた瞬間に焦るが、その隙に一撃で首を切り落としている。

そんな感じで途中のオークはすべて始末し、最後にハイオークのところへと向かったが…。


「扉まであるのは想定外だなー」


洞窟の一番奥には簡素な扉があった。

木で外枠が作られ、枝や葉っぱで塞がれた扉は、おそらくオークたちが作ったものだろう。

オークに知能がないとは言わないが、まさか扉を作ることがあるとはなぁ。ハイオークがいるからだろうか。

ま、そういったことは考えても仕方ない。とりあえず早めに片付けても戻ろうと扉に手を伸ばした瞬間、扉の奥から猛烈な勢いでこちらへと迫ってくる気配を感じ、とっさに後方へと飛びのく。

それとほぼ同時に扉が吹き飛び、こちらへと飛んできたので横へと吹き飛ばして壁にぶつける。


「あらら、静かにしてたつもりだが起こしちまったか」


荒い息遣いと共に出てきたハイオークが俺をにらむ。

なるほど、こいつは暗視持ちか。

いまだに真っ暗な中で、迷いなく俺を捕えるその目は明らかに俺を認識していた。


「ブモオオオオオオオオオオ!」

「うっるさ…!」


ハイオークの雄たけびが反響し、鼓膜を刺激する。そのまま俺を掴もうと手を伸ばしてくるが、それをひらりと回避しながら後方へと飛びのいていく。

洞窟内の狭い通路だ。そこで巨体であるハイオークとまともに戦うのは得策じゃない。しっかり回避しつつ出口を目指していく。

一定の距離をとるが、洞窟の壁にある土や岩をこちらへと投げてくるので地味に回避が面倒だ。

そんな感じで来た道を戻って外に出ると、解体が終わった瑠衣が内臓を焼却処分していた。


「あ、敬おわ…」


言葉の途中でハイオークの雄たけびが聞こえてくる。


「…ってないみたいだね」

「不意打ち前に起きてた。これから終わらせるところ」


外に出た瞬間に上へと飛びあがる。そして飛び出してきたハイオークが俺ではなく瑠衣の姿を見つけ、そっちへとロックオンした瞬間。


「おし…まい!」


自分の体重を乗せ、一気に上から脳天を突き刺した。


「お疲れ様―、これがハイオーク?」

「ああ。内部に他のやつもいるから解体していくか」


そんな感じでオークたちを倒し、次はワイルドボアだったのだが…。


「えい」


瑠衣のそんな気の抜ける声と共にワイルドボアの眉間に矢が当たり、そのまま脳天を撃ち抜いた。


「おしまーい」


全長5mほどの巨大な猪は瑠衣の一撃によって簡単にその命を絶たれていた。


「…まあ、突っ込んでくるだけだったからな…」


俺たちを認識したとたん、周囲の木々をなぎ倒しながら突進してきたが、それはまっすぐに勢いよく迫ってくるということであり、その勢いのまま矢にぶつかればそれは突き刺さるのは自明の理だ。

まあ、普通は固い体毛に阻まれて矢ははじかれるはずだが、そんなこともなく普通に貫いたのは瑠衣の腕によるものだろう。


「次はイリュージョンバタフライだっけ」

「近いのはそうだな。まあ、そっちのほうは手はある」


というわけでやってきましたイリュージョンバタフライの生息域。

キラキラと光る鱗粉とそれを放つ光る蝶。まとめて風の渦で閉じ込めて外から火種である瑠衣の炎を放り込めばあら不思議。炎の渦となって閉じ込めた鱗粉事すべての蝶を燃やし尽くしました。


「はい、おしまーい」

「ある意味一番楽だったね…」

「まあ、ばれずにってのがどうかは不明だがな」


炎の渦は結構明るい。村のほうで起きてる住人がいればワンチャン不思議な明かりとして見られていた可能性もある。

ま、見られていたらそん時はそん時だ。ごまかすなりなんなりやりようはある。

そして最後のツインヘッドスネークだが…。


「頭二つあるなら同時に潰せばいいよね」


ということで片方を俺が切り落とし、もう片方を瑠衣が撃ち抜くことで倒した。


「これで全部?」

「だな。んじゃあ帰って寝るかー」

「玲達は大丈夫かな?」

「大丈夫だろ。向こうだって苦戦するような奴はいないはずだ」


村の近くにいるのはゴブリンのような小物だが数が多いやからだ。あいつらなら苦戦することもないだろう。

案の定というか、家に戻ってみると和也達が先に戻っており、成果を報告後に俺たちは寝ることにしたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ