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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
聖都サントテフォワ

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第31話


聖都サントテフォワへと到着し、教会にて聖女プリエ達、そして教皇と接触したことにより、サントテフォワで起こっている聖女派と貴族派の派閥争いについて様々な情報が手に入った。

それらを宿で整理し、話し合った翌日。


「さぁて…どうすっか」


朝食を食べ終え、食後のお茶を飲んでいる時に俺はそう呟いた。


「どうするって、プリエさんのところに行くんじゃないの?」

「まあ、そうなんだが…わざわざ全員で行くわけにもいかないしな…」


昨日の時点で買い物と市場調査は玲達のおかげで終わっている。それのついでで派閥争いについていろいろと調べてもらい、その情報も昨日の夜にすでにまとめておいたので、それも併せてプリエに報告する予定ではあるが、全員で行くには仰々しい。

かといえ現状調べたいことがあるかというと特にないわけで…。


「よし、今日は各自自由ってことで。俺はとりあえずプリエの処に行ってくるが、瑠衣達は好きに過ごしてくれ」

「好きにって…派閥争いについて調べなくていいのか?」

「貴族派の方は俺達じゃ手が出せないし、聖女派の方も俺達が動きすぎると魔族からの注目を集めかねない。さすがにそれはまずいから今俺達が表立って動くわけにはいかないんだ」


俺の言葉に和也達が納得したようにうなずいた。


「だからとりあえず今は表立って動いてもらうのはプリエと教皇の方だ。俺達は魔族達に気取られないように裏でこっそりしておこう」

「裏でこっそりって何かやることあるの?」

「んー…」


セレスの問いかけに考え込むが、特に何かあるかというと思いつかない。


「せめて魔族の動きがわかったらいいんだけどねー」

「そうね~、今回派閥争いを促しているみたいだけど、それが陽動の可能性もあるものね~」

「ふむ、陽動か…」


確かに今回の一件、時間のかかり具合や規模を考えると、聖女の死や民衆の不満を煽る程度とリターンが少ない。玲のいう通り陽動といわれるとその可能性も考慮したくなってきた。


「何か魔族の方でもほかに思惑がある可能性か…確かにそれもあり得るが…それを調べるにしてもどう調べるかだな…」

「そこはほら、俺達旅人だろ?」

「?ああ、そうだが…」

「旅の資金を稼ぐっていう名目で、いろんな人に最近困った事や、不審なことがないか聞いて、それを調べてみるっていうことで報酬を貰えば…」

「情報収集と調査両方ができるって訳か」

「ああ、しかも仮に外れでも報酬がもらえるから無駄骨にはならないだろ?」

「ふむ」


和也の提案も悪くない。もともと昨日来たばかりの俺達ではこの街の異変に気付きにくいし、プリエ達は派閥争いのせいでそれどころじゃない時もある。難点といえば貴族の方がおろそかになることだが、それに関しては教皇派に動いてもらえばいいだろう。


「その案、採用。んじゃあ…メンバーは昨日と同じで二手に分かれるか?セレスと瑠衣も和也達の手伝いしてもいいが…」

「私がいないと誰が敬を制御するのよ」

「うぐ」


瑠衣の言葉に反論できない。実際こっちの世界に来てからタガが外れたように好き勝手やってるからな…。


「私も今のままでいいよ。そっちの方が楽しそうだし」

「さいですか」


セレスもセレスで自由だな。まあ、俺も人のことも言えないが。


「んじゃあメンバーは昨日と同じでいいか?」


俺の問いかけにシエルとノエルも頷いた。クーに関しては俺の背中に張り付いており、そもそも離れる気すらないようだ。


「んじゃあ、和也達はさっき言ったように動いてくれ。俺達はプリエ達と話した後に教皇との連絡係と接触した後、あるようだったら冒険者ギルドに行ってみる」

「そこで依頼探すの?」

「暗躍してる魔族の手がかりがあるとは思えないが情報を集めるにはいいだろう。それに、もし街中の依頼があればそこからつながる可能性もあるからな」

「そっか」

「んじゃ、今日はそんな感じで。なんか気になることがあったら…連絡手段どうするか…」

「またあとでいいんじゃね?いざとなったら俺らは俺らで判断するし」

「だなー。だとしても連絡手段ぐらいはどっかで用意したほうがいいかもな…」

「それはまた今度考えればいいんじゃない?とにかく今は動こうよ」

「それもそうだな。んじゃ行くか」


今日の予定も決まったので俺達は宿を出た。



「で、どっちを先にするの?」


セレスの問いかけにんー、と声を上げつつ周囲の気配を探っていく。教皇の影が俺達を見張っているなら動きでわかるが…今のところそれらしき人物はいない。


「奴さんの動きはないみたいだし、聖女さんの方が先だな」

「じゃあまずは教会だね」


瑠衣の言葉に頷いて俺達はプリエ達がいる教会へと向かった。


「それにしてもいつ見ても派閥争いが起こっているって思えないほど平和だねー」


教会へとたどり着いたが、それまでの道中、特に騒ぎが起こっているわけでもなく、平和な街並みを見ていたセレスがそう呟いた。


「それだけ規模が小さいってことだろ。不満を抱いているにしてもそこまで大人数って訳でもなく、貴族に対してある程度の人数が小規模な抗議活動をしているってところだろ」

「その程度なんだ」

「じゃないとこういう教会じゃもっとピリピリしてるもんさ」


そんな話をしながら警備をしている騎士に一礼してから教会の中へと入っていく。

教会の内部に入っても、ピリピリした雰囲気はなく、教会特有の静かでどこか神秘的な雰囲気が広がっていた。

中に入るとちょうど聖堂の掃除をしていたのか、プリエがこちらに気が付いた。


「ケイさん、ルイさんにセリアさん、クーちゃんも。よくお越しくださいました」

「どうもっす」

「おはようございます」

「おはよー」

「昨日話した一件で少々お話したいことがあるのですが…」

「あ、わかりました。ではまずこちらへどうぞ」


そう言ってプリエの案内で昨日入った応接間へと通され、その後部屋を出たプリエがグイードと共に戻ってきた。

ついでに淹れてきたのかお茶が入っているカップを俺達の前へと置いていく。


「お待たせしました、昨日の一件でお話があるとのことですが」


早速グイードが話を切り出してきたので、俺もさっさと昨日まとめた情報が書かれている冊子を二つ出す。それと同時にこれからの話が盗み聞きされないように、とりあえず周囲の気配を常に探り出した。


「これは?」

「昨日、教皇様と接触しました」

「!」


俺の言葉にグイードとプリエが驚きの表情を浮かべた。


「教皇様はこちらが考えていたように、すでに魔族の存在に気づいていました。どの貴族に接触しているのかも」

「そうですか…」

「民衆派についても魔族が接触しているであろう人物についてある程度絞っていました。それがこちらの冊子です」


そう言って右側の冊子を示した。


「そしてこれは俺の仲間である和也達が調べてきたことです。さすがに教皇様が今まで調べていた分ほどではないですが、市場や酒場で集めた情報をまとめた物です。こちらも数人候補らしき人物もいますが、こちらも調べていただきたい」

「構いませんけど…教皇様のだけじゃダメなんですか?」

「問題はないです。和也達が調べたことは基本的に現状の市場や民衆にどれくらいの影響を与えているか。そういった事が主になっているので。その中でよく話に出てきている人物をピックアップしただけにすぎません」

「ではなぜ…?」

「教皇様の資料は問題ないのですが、問題なのはこちらが今まで魔族の存在に気づいていなかったという点です」

「といいますと?」

「逆に聞きますが、今まで一切調べる様子がなかったあなた方が、唐突に魔族に接触している可能性の高い人物達を重点的に調べ始めたら魔族はどう考えますか?」

「………何らかの情報提供者がいると考えるのが筋ですな」

「ええ。それを気取られるとこちらも動きにくくなります。教皇様から頼まれたのですが、魔族を捕らえるために、俺達はできる限り目立たず、伏兵として動くことになります。だから情報提供者として俺達が浮き彫りになる可能性を減らしておきたいのです」

「ふむ」

「そのためにある程度効率は落ちますが、的外れな調査もしつつ、少しずつ魔族に近づいていってもらいたいのです」

「なるほど、そういうことならわかりました。ではその資料、両方とも受け取ったのちに査定して動かせていただきます」

「お願いします。それともう一つ、これに関してはあくまで推測ですが…魔族にもう一つ別の目的があるかもしれません」

「別の目的…ですか?」

「ええ。これに関しては確証も何もないのですが…。今回の派閥争い、それ以外の目的が魔族にあるのかもしれません。調べてくださいとは言いませんが、ただ何か心当たりはありませんか?」

「心当たり…。すいません自分はここの司祭なのでそういった事には…」

「そうですか…プリエさんはどうですか?」

「…私にも詳しいことは。ただ…」

「ただ?」

「『大聖堂の地下深くには行かないように』と昔教皇様に言われたことがあります」

「ふむ…そこに何かがありそれを魔族が狙っている可能性も0ではなさそうですね。分かりました、それに関してはこちらも少し調べておきます。お二人は派閥争いに集中してください」

「わかりました」


その後簡単な打ち合わせをしてから俺達は教会を後にした。



教会を出て俺達は取り合えず一度裏路地へと入っていく。


「ねえ、敬。なんで裏路地入るの?」

「こっちの方が話しやすいからだよ。いるんだろ?」


そう言って壁に背を預け、裏路地の陰になっている隅を見据える。

教会を出て少し下あたりから監視してる人物がいるようだった。だから裏路地に入り、そいつと接触できるようにしたというわけだ。

そして想定通り、影の中からゆらりと人影が出てきた。


「…教皇様からの伝言はないが、そっちは何かあったのか?」


昨日も俺達を監視していた男がこちらに即座に聞いてきた。


「何かって程ではない。だが一つ聞きたいことができた」

「なんだ?」

「大聖堂の地下深くには何が眠っている?」


俺の問いかけに男から突如殺気が向けられた。


「貴様…なぜそれを?」

「聖女様から聞いたのさ。昔地下深くには行くなって言われたってな」

「………」

「あんたは知っているようだな。地下に何があるか」

「警告だ。あれには触れるな」

「それだけやばい奴ってことか?」

「そういうことだ」

「なるほど。なら警戒しておくことだ」

「なに…?」

「魔族の本当の目的がそれかもしれないってことだ」

「…どういうことだ?」

「今回関わっている魔族は3人。その割に今回の一件、規模が微妙だと思わないか?」

「……つまり今回の一件は陽動で、魔族の本当の目的は地下深くに眠っている物だと?」

「その可能性もあるって話だ。警戒は必要だと思うが?」

「…分かった。教皇様にお伝えしておく」

「よろしく。あ、それとついでに聞きたいんだが、この街って冒険者ギルドある?」

「冒険者ギルドなら東部にある。そこは冒険者たちが主に活動する場所だ」

「そうか、サンキュ」

「これからは俺の部下をアンタにつける。何かあればそいつに告げろ」

「あいよ。そういえば俺の仲間には?」

「そっちにも別の部下が張っている。何かあればこちらに情報が来るはずだ」

「なるほど。んじゃ万が一の伝言係任せるぜ」

「ふん」


不機嫌そうな雰囲気を纏い、男はそのまま姿を消した。


「さて、んじゃあ俺達も行きますか。冒険者ギルドにさ」


頷く瑠衣達を連れ、俺達はサントテフォワ東部へと向かった。


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