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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
水の都セレスティア

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第20話

セレスティア 上空


「いっつぅ…ずいぶんといきなりだ…ねっ!?」


空中で姿勢を整えた魔族の青年へと間髪入れずに蹴りを叩き込もうとするが、即座に空中で体をひねったことでその蹴りをよけられてしまった。

舌打ちと共に睨みつけると、青年は肩を竦めるようにこちらを見ていた。


「やれやれ…少しは話を聞いたらどうだい?」

「問答無用って言葉知ってるか?」


風を操ることで魔族の周囲へと空気を集めていく。気圧がどんどん増していき、じわじわ魔族を押しつぶそうとするが、それよりも早く魔族の周囲に雨が集まっていき、自らを水で包み込んでいた。


「…なるほど、セレスと同じ水の使い手か。純粋な水の魔力であるあいつにどうやって闇の魔術を仕掛けたのかと思ったが、水と闇の複合魔術でも発動させたか」


複合魔術は一人では発動は難しいとのことだが、不可能ではないらしいし、俺達は万能の書を介して発動するが、ほかの奴らがどうやっているかはわからん。何か別の手段で発動させた可能性もあるしな。


「へぇ、察しがいいね。これでも魔王軍の幹部の一人だからね。あれくらいは造作もないさ」

「幹部ねぇ…。四天王の一人とか?」

「さすがにそれは違うよ。あの人たちは僕よりずっと強いからね」

「あっそ」


こいつが一人でやったとも思えんが、実際にセレスには魔術がかけられていた。

その四天王によるものか、それとも何かそれ専用のアイテムがあるのか、ただ魔法陣を描くだけかもしれない。まあ、そこらへんは今はどうでもいい。

とりあえず目の前の奴を倒すことが第一だ。


「それじゃあ改めて。水の魔族軍幹部『コルソ』がお相手しようかな」


水で作られたバリアの中でコルソは挑発じみた動きで一礼した。



「敬の奴…大丈夫か?相手は魔族だろ?」


街に降りた和也は上空で戦いを始めた敬達を心配げに見ていた。


「敬なら大丈夫だよ。今、敬すっごく怒ってるし」

「そうなの~?普段とあまり変わらないように見えるけど~?」


対峙している敬はその顔に笑みを浮かべ、じっとコルソを見据えている。


「敬はいつもね、喧嘩する時に笑うことはないの。ああいう時に笑うのはすごく怒っている時だけ」

「そういえばそうだな。何度か一緒に喧嘩したことあるが、たいていイラついているのか不機嫌そうな表情ばかりでああやって笑っているのは初めて見る」

「あれはね、敬が本気で怒ってる時だけ浮かべる表情なの。私も見た事あるのは一回だけかな…。セレスちゃんを利用したことが許せないみたいだからね」


そういいつつ気絶しているセレスの頭を優しく撫でた。


「ああなった敬は一切容赦しないからね…。相手の魔族さん、心壊れなければいいけど…」

「その前に死ぬかもな」

「それはないよ。ああいう相手こそ敬は殺さずに延々と苦しめるから」

「なにそれえぐい」

「そう…なのかな?敬曰く『死んですぐに楽にするより、トラウマ与えて一生苦しめた方がいいだろ』って」

「なるほど、わからなくもない」

「だから死なせることはないと思うよ。どれだけやるかは敬次第だけどね」


そういいつつ瑠衣は戦い始めた敬を見上げた。


「さて…面倒なのはあの水か」


コルソを包み込んでいる水は俺がコルソの周囲でまとめている大気の圧縮を受け止めている。たとえ風の刃を放っても貫通力がそこまでない攻撃では届かないだろう。

仕方ないので、とりあえず周囲の大気を操って水のバリアの水量を減らすことにする。まずは人差し指を一本伸ばしてくるくると回すと、青年の周囲に圧縮されている大気がどんどん渦巻いていき、竜巻へと変わっていく。


「これは…!?」

「さあ、その水はどれだけあるかな?」


複数の竜巻はバリアから水を吸い上げ、外へと吹き飛ばしていく。

竜巻の本数が増えるにつれ、包み込まれている水の量がどんどん減っていく。


「この…!」


再度周囲の雨や吹き飛ばされていく水を集めていくが、それよりも早い速度で竜巻が水をまきあげていく。


「ほらほらどうした?守ってばかりじゃ勝てないぜ?」

「そっちこそ、攻めあぐねているようじゃない?」

「そうでもないぞ、まだそこまで攻める気がないだけで…」


親指を上に立て、人差し指と中指をそろえるように伸ばしてコルソへと向ける。


「攻めようと思えばいくらでも攻めれる」


二本の指で練るように空気を圧縮していき、小さな空気の弾を作り出す。


「こんな感じでな」


放たれた空気の弾丸がすさまじい速度で水と共に中にいるコルソの肩を撃ちぬいた。


「あとこういうことも出来るぜ」


もう一度風の弾丸を放ち、今度は水の中で弾丸をはじけさせた。それによって圧縮された空気が一気に膨張し、水の一部を吹き飛ばした。

吹き飛ばされた場所を補うために水が動き、再度球状になるが、先ほどよりも明らかに水量は減っている。


「これでわかったか?俺は攻められないんじゃなく攻めないだけだ。お前を徹底的にいたぶるためにな」


笑みを浮かべてコルソを見据えた瞬間、コルソは一歩後ろへと下がった。


「どうした?腰が引けているぞ?」

「くっ…この!」


周囲の雨がそれぞれでまとまっていき小さな水の弾を複数作り出した。


「くらえ!!」


四方八方から迫ってくる水の弾を強風で軌道をずらすしていく。そして左右の手で握っているミスリルソード、シルバーソードで迫ってくる弾をすべて斬り裂いてはじけ飛ばしていく。


「終わりか?」

「こ…のっ…!」


あえて両手の剣を鞘へと納めてからコルソを見据え、指をコルソへと向ける。

竜巻によって量が少なくなった水のバリアへと風の弾を撃ち込んでいく。

そしてパチンッと指を鳴らした瞬間にパァンと水のバリアが完全に吹き飛んだ。


「さあ、次は俺の番だ」


風をブーストとして一気にコルソとの距離を詰め、鳩尾へと拳を叩き込んだ。


「カ…ハァ…」

「そら…よぉ!」


そのまま体を反転させてこめかみへと回し蹴りで踵を叩き込んだ。

吹き飛ばされたコルソの顔面をそのままわしづかみにし、湖面に向けて突進していく。

突進の最中に周囲の大気を集め、俺の周囲に風の幕を作り出した。


「さあ、お前の得意のフィールドだ!」


ドボーンと大きな水柱を上げ、俺とコルソが湖の中へと入っていく。


「ここなら全力でやりあえるだろ?」

「なめやがって…!」


口調が荒くなったコルソが右腕を振るって水流で俺を押しつぶそうとしてくる。

しかしその水流は俺の周囲に纏っている空気にぶつかった瞬間に左右に裂かれていく。


「全力でこの程度か?」

「ぐぅ…!」


コルソの表情には焦りの感情が浮かんでいる。

まだだ、もっと追い詰める。徹底的に。二度と立ち上がれないほどに。


「この野郎…!」


コルソの右腕で水が螺旋状に回転していき、ドリルのような形を作り出す。

その状態で俺へと殴り掛かってくるが…。


ガキンッ!


俺はそれをミスリルソードの先端で容易く受け止めた。

そしてそのドリルと逆回転の風を生み出し、水を弾き飛ばすとそのまま左手でコルソの顔面をぶん殴った。

そして後ろへと倒れかかったコルソの右腕をそのまま掴み、肘の部分を膝で逆側にへし折った。


「あああっ!」


腕を折られた痛みで叫び声をあげるコルソの後頭部を掴み、そのまま顔面へと膝蹴りを叩き込んだ。


「まだまだいくぜ!」


そのまま顔を、腹部を、足を、殴り、蹴り、骨を折っていく。

ボロボロの状態になっていくコルソの首を掴み、湖から上がって上空へと浮かんでいく。


さすがにこれ以上やると死にかねない。それをしたら意味がない。


「おい」

「ぐっ…がっ…はぁ…」

「うし、死んでないな。魔界は…確かあっちの方だったよな」


正確な魔王城の位置はさすがにわからんが、まあ、生きて向こうに付けばなるようになるだろう。


「お前の上司、そして魔王に伝えておけ。じきにその面拝みに行くから首洗って待っていろ…ってな!!」


風で全力のブーストを付け、コルソをそのまま魔界の方へと全力で投げ飛ばした。

コルソはそのまますさまじい勢いで遠い空へと消えていった。


「………あ、着地の事考えてなかった。…まあ、なるようになるだろ」


そのまま見限り、瑠衣達がいる地上へと戻った。


「ただいまっと」

「お疲れ様。落ち着いた?」

「一応はな」


瑠衣がセレスを抱きながら俺の元へと来た。和也達も瑠衣の後からついてきている。


「やれやれ、お主もずいぶんと無茶をするのぅ。魔族を一人で相手するとは」

「その方があの時はやりやすかったからな。セレスに関しても玲達に任せておきたかったしな」

「ま、何はともあれセレスも助けられて魔族も返り討ちにした。これで万事解決だな!」

「ん~…一つ気になることがあるんだが…爺さん」

「なんじゃ?」

「この街の魔術、コアであるセレスが抜けた形になっているが、どれだけもつ?そして復帰させるにはどうすればいい?」

「今の感じじゃと…おそらく三日といったところじゃの。直すにはコアを入れるのじゃが…おそらくセレスをそのまま入れたとしてもうまく機能せんじゃろう。一から構築とまではいかぬが、ある程度魔術を変えて新たなコアを埋め込まねば時期に効果が切れてこの街は湖に沈むじゃろうな」

「そんな…」

「三日で新しいコアを埋め込んでそれに合わせて魔術を調整するなんて可能なの~?」

「ん~…魔術を調整できればなんとか…?なあ、爺さん、魔石ってこの世界の全ての生き物の中にあるんだよな?」

「うむ」

「魔石を作る方法ってないのか?」

「魔力を長時間凝縮しておけば作ることは可能じゃのう」

「長時間ってどれくらいなの?」

「およそ半日といったところじゃのう。その間一度も魔力を切らすことなく凝縮し続けなければならぬ」

「半日…か。魔術の調整にしろ、やるのは水属性の魔術だ。ってことは…」

「私が魔石を作らないといけないのかしら~?」

「そうなるが…頼めるか?」

「仕方ないわね~。半日はなかなか大変だけど、頑張ってみるわ~」

「頼む」

「魔石の大きさはその時凝縮された魔力量によって変わるからの。大きい魔石にはそれなりの魔力が必要じゃ」

「できる限り大きい魔石がいいのよね~?」

「ああ、できればな。無理のない範囲で大きい奴を頼む。俺は魔術の改良をしておくから」

「いいわよ~」

「じゃあ話もまとまった事だし、一旦宿に戻ろ?雨のせいで服が濡れたままだし、このままじゃ風邪ひいちゃうよ」

「だな。セレスも休ませてやらなきゃだし」

「…休ませてやるのはいいけど、どうやってだ?ベッドだと濡れるだろ」

「………寝袋?」

「あれって一応防水性あったから…それしかないか」

「寝袋に入れてからベッドに横にしてあげるとか~?」

「可能ならそれがいいかもな。とりあえずさっさと宿に戻るかー」


瑠衣がそのままセレスを抱きかかえ、俺達は宿へと戻る道を歩いていく。

そういえば…衛兵に動きがなかったな…。特に何も起こらなければいいが…まあ、起きたら起きたでこの街人質にして要求飲ませればいいか。

そんな事を考えつつ歩いていくのだった。


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