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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
水の都セレスティア

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第15話


水の都セレスティア。約300平方キロメートル、最大水深約1000メートル、貯水量約60000立方キロメートルもの巨大な湖の中心に浮かぶ大き目な街だ。

街の規模としては中くらいで、人口としてもおよそ数万人といったところだろう。

セレスティアへは湖岸から伸びている橋で向かう。


「おっきい湖だねー」


風でなびく髪を抑えつつ、馬車の綱を持っている瑠衣がつぶやいた。


「俺達の世界でもここまででかいのは…カスピ海位らしいぞ」

「え?カスピ海って海じゃないの?」

「区分的には湖らしい」


万能の書によっていろいろと調べていたのだが、余計な雑学まで出てきたが、簡単な情報を調べおえたので万能の書を片付ける。


「ほい、綱貸して」

「はーい。クーちゃんはこっちおいで」


膝の上にいるクーが瑠衣の方へと移動した。皇国を出た後で、クーは瑠衣にも十分懐いたので、たまに瑠衣の膝の上に座っていたりする。


「それにしても言うほど風強くないね。こういう湖岸とかってもっと風が強いイメージだったんだけど…」

「ああ、本読むのに邪魔だったから風の結界で弱めさせてるよ。完全に防ぐことも出来るけど、それはそれで風情がないしな」

「あ、そうなんだ」


風が強い中で本を読もうにも、ページが風で煽られるので面倒だったのだ。

そんな話をしているうちに橋に到着すると、そこで入国検査をしていた。どうやら橋の両端でやっているようだ。


「両端でやってるなんて珍しいね」

「ここで不審者などを弾いて、細かなところは街の入り口でってことだろ。橋を渡ってから追い返すのも手間だろうし、橋の途中で行動を起こされても困るだろうからな」

「なるほど」


とりあえず列の一番後ろに並んで、馬車を止めた。すると後ろの馬車に乗っていた和也がこっちに来た。


「敬、一つ相談なんだが」

「どうした?」

「実は馬車の方なんだが、あの山賊達が持ってた財宝とかも入っていてな、それはどうするんだ?」

「あー…規模はどんなもんだ?」

「武器防具や壺とかの装飾品とかもちらほらとって感じだな。あと金貨50枚くらいだな」

「それってどっちの馬車に入っているの?」

「敬達の方だな。気づかなかったのか?」

「捕まってた奴ら放り込んでそれ以降は知らん!」

「いや、少しは見ろよ…。んでどうするんだ?」

「そうだな…。とりあえず装備や装飾品は引き取ってもらおう。あっても邪魔だし」

「金貨と山賊の報奨金はどうする?」

「欲しいか?」

「ん~…旅費って今どれくらいあったっけ?」

「えーっとね、個人の方はわからないけど、共有財産としては…金貨は700枚ほどかな」

「え、そんなにあるのか?」

「ほら、商会のお金だったり、スティクさんに装備とか引き取ってもらったでしょ?それのお金や公爵家からもらった分とかだよ」

「ん~…んじゃあ全部渡しても問題ないか?」

「多分な。じゃあ玲にそう伝えておくか」

「ああ、任せた。もし何か不満があれば要相談ってことで」

「あいよ」


短く答えて和也は後ろの馬車へと戻っていった。


「でも、それだけの金貨どう使うのかな?」

「そこらへんはあいつら次第だろ。馬車で移動するにも金はかかるし、冒険者になるにしても装備代がかかる。それ以外だとしても飯や宿代といったものがかかる。金なんていくらあっても困るってことにはならないんだ」

「それもそっか」


納得したように呟きつつ、膝の上のクーの頭を撫でていた。

そしてしばし待つことで俺達の順番になった。

道中で山賊に襲撃されたので、それらを捕らえたこと。そして捕まっていた人たちを助けたことを報告した。


「ふむ、しばし待て」


そういって門番は捕まっている山賊の方へと向かった。

腰につけてある紙の束(おそらく指名手配や山賊の被害などの報告書)を確認し、それらと山賊達を照合して確認を終えると、一度兵舎の方に入っていって報酬が入っている袋を持ってきた。


「確認した。これが報酬だ、ご苦労だったな」

「はい、どうも」

「それで捕まった者たちはどうするつもりだ?」

「奴隷として登録されているわけじゃないですし、各々好きにさせます。元の町に馬車で帰るか、それともどこか別の場所に行くか、冒険者になるか、ここに住むか。どうするかは当人たちに任せます」

「そうか、わかった。馬車の手配が必要ならば街の中に停留所があるからそこに行くがよい」

「どうも。んじゃ通っても?」

「構わぬ。ただ、山賊達はこちらで引き取ろう」

「わかりました。連れにそう伝えておきます」


馬車から降りて和也の元へいき、山賊の処遇について伝える。

その後、和也達をこっちの馬車へと乗せ、和也に手綱を任せて俺は捕まってた人達に今後の事を話した。


「…というわけでセレスティアに着いたらとりあえず馬車の停留所へと連れて行く。そのあとは好きにしろ」

「好きにしろって…俺達は金もなにもないんだぞ?どうしろって…」


一番身なりがまともな男が声を上げる。最初に俺と会話したからか、どうやら交渉役はこいつになったようだ。


「金なら渡す。さっきの山賊の報奨金とそいつらが貯めてた金貨だ。装備や装飾品もあるから必要のないものは売り払って足せばいい。おそらく金貨100枚くらいにはなるはずだ。それだけあれば全員の路銀になるだろう」

「………」

「馬車を使えばそれぞれの故郷に帰れるだろう。冒険者になりたい奴がいるなら装備を整えればいい。どうするかはそっちが相談して決めてくれ」

「…その金はアンタらの物だろ?なぜこちらに渡す」

「別に。ただ助けたからには最低限の責任があるからそれを果たすだけだ。それ以上の意味はない」

「………」

「不服そうだな?」

「当たり前だ。そっちに対して利点がない。そんな行動、裏があるに決まっているだろ」

「裏ねぇ…」


確かに利点はない。戦った労力、時間なども考慮すればむしろ損したともいえる。

とはいえ、こっち…というか俺としてはこいつらをわざわざ助けに来たと言うわけではなく、たまたま通りがかりに山賊に襲われ、それを返り討ちにした結果こいつらが助かったというだけだ。

成り行きとはいえ助けた以上、最低限の責務を果たそうとしているだけなんだが…おそらくこの男は貴族社会の人間だろう。利点もなく誰かを助けるといったことはないだろう。

まあ、それは確かに間違っていないのだろうが…さて、どういえば納得するのやら。

…ってか納得させる必要もないのか。

そうだよ。別にそっちが納得しようがしまいが、やることに変わりないんだから別に無理に納得させなくてもいいじゃん。


「まあどう考えようとそっちの自由だがな。俺達は俺達のやりたいようにやらせてもらう」


そういって馬車から降りた。


「納得してた?」


待ち構えていた瑠衣が聞いてきたが、俺は苦笑を浮かべつつ首を横に振った。


「まあ、なんか裏があるって思ったんだろうねー」

「そこらへんは仕方ないだろ。善意だけでやるようなことでもないだろうしな」

「金貨に余裕がなかったらさすがにある程度報酬をもらう予定だったんでしょ?」

「まあな。こっちも余裕があるからな。んじゃとりあえず馬車の停留所に向かうか」

「はーい」


馬車は長い橋を渡り、水の都セレスティアへと俺達は入っていった。



入り口の門番に質屋の場所を聞き、とりあえず馬車の停留所へと向かう。


「質屋に先に行かなくていいのか?」

「ああ、そこらへんはアイテム整理してからがいいだろう。一応交渉役のあの男にも教えておいたからな」

「了解」


和也は手綱を軽く振って馬を歩かせる。

セレスティアの街並みは湖の上という湿度が高い場所だからか、全体的にレンガ造りの建物ばかりだった。


「木造建築が全くないねー」

「まあ、木造って湿気に弱い方だからな。かびたりとかするし。粘土とかがたくさん採れるのなら、こういうレンガ造りの街並みにするのは定石だろ」

「なかなか風情のある街並みね~。こういう場所日本にもなかったかしら~?」

「あー、赤レンガの街並みだったか倉庫だっけ?どこだったか忘れたがそんな場所あったな。行ったことないが」

「そういえばあったねー。こっちにも同じような場所あるのかな?」

「さあ?でも、観光できる場所はあるだろう。せっかくだからそこらへんも寄っていくか?」

「うん!」

「じゃあここには何日ほど留まる気だ?」

「一週間程度でいいんじゃね?それならある程度は見て回れるだろ」

「あいよ。んじゃ、あいつ等と別れたらまず宿屋を探さなきゃだな」

「だなー。おすすめでも聞いとけばよかったな」

「そうね~。停留所で聞いてみようかしら~?」

「それもありだな」


そんな雑談をしつつ、ゆっくりと大通りを歩いていく。

馬車が通る大通りということで広いこの通りは様々なお店やカフェが左右に乱立しており、多数の人が行きかっている。

そして馬車専用の通りもあり、今俺達はそこを通っている。

周囲を見てみると3階建てや4階建ての建物もいくつかあり、宿屋を兼任している酒場のような場所もあった。

ああいった場所は宿代や飯代が無駄に高いからやめといたほうがいいだろう。値段や質の両立をある程度するというのなら、多少は奥ばった場所にある宿の方が良かったりもする。

そんな事を考え筒周囲を見ていたら馬車が止まった。


「着いたぞ」

「あいよ」

「じゃあ私は停留所の人に軽く話を聞いてくるわね~」

「おう、俺はあいつらと話してくるから和也は馬車を頼む」

「任せろ」


俺は瑠衣達を連れ、馬車の中へと入っていった。


「着いたぞ。今後の事については決めたか?」

「…ああ」

「んじゃ、必要のないものは質屋に入れ、あとは好きにしろ。これ以上俺達はお前らの世話を焼く気はないからな」

「わかった、最後に一ついいか?」

「なんだ?」

「私はディオラ・フォン・ネルンハルドという。お主の名を聞かせて欲しい」

「…敬。旅人だ」

「ケイか。分かった。もしまた会うことがあればその時に今回の礼をしよう」

「期待しないで待ってるよ」


そういって俺は和也の元へと戻った。そこには一通り話し終えたらしい玲もすでに戻っており、俺達は馬車を置いてその場を後にした。


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