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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
魔物憑き

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第127話


麻薬の元となる畑を潰し、その黒幕となっていた貴族が寄進していた孤児院へと向かった翌日。とりあえず勧誘はしたが考慮する時間は必要だろう。ということで数日程待つことにした。

その間、もう一つの孤児院に関しても調査しようと思ったが、それよりもカトルの特訓がそろそろいい具合になる気がするのでそっちの仕上げに近い物をやる事にした。


「にしても、いろいろと起きてんだなぁ」


休憩中、今までの旅の話をねだられたので少しずつだが話している。


「ま、まがりなりにも戦争中だからな。戦線はもとより、そこから遠い場所だって何かしらの問題は起きるだろう」


戦線から遠いはずの皇国でも聖都でも両方とも問題は起きていた。皇国に関しては内部の問題はわからないが、それでも周囲にはウェアウルフにそれを率いるライカンスロープがいた。ライカンスロープがなぜあそこにいたかまでは推測でしかないのでわからないが、それでも不穏分子が皇国の近くにいたのはたしかだ。

そして聖都の方でも魔剣を保管していたが、それを狙った魔族に内部から争いを引き起こされた。

そこ以外だとしてもセレスの出身地であるセレスティアではセレスに魔族の手が伸びていたし、セシルの村だって勇者を狙っていた魔族によって滅ぼされたいた。戦争が続いているうちは、どこにいようと安心できる場所なんてないんだろう。


「私たちは村から出ることもなかったからねー。魔物が襲ってくることはあっても、魔族とは無縁の話だったよね」


もぐもぐとおにぎりを食べながら一緒に休憩しているアリカがつぶやく。


「だろうな。向こうだって前線を押し上げてあるわけでも無く、特筆した目的がないような場所をわざわざ襲うようなことはないだろうからな」


セシルのように勇者としての力を持っているとかなら話は別だろうが、それだってそうそう持つわけではない。わからないからといって端から襲撃していたらそれこそ前線を押し上げられかねない。こちらだって自国で好き勝手やっている奴を放置するとも思えんしな。


「でもその戦争って昔から続いているんだろ?そんなの止められるのか?」

「ま、完全に止めることは無理だろうな。細かい小競り合いはどうあがいても起きるから。それでも大きな戦いを起こさない方法はある」

「それが国を作るってこと?」

「いまいちわからんのよなぁ。なんで新しく国を作ることが戦争を止めることになるんだ?」

「そうだなぁ…」


どう説明すればわかりやすいか、頭の中で考える。


「例えばカトル。お前がウェアウルフと対峙しているとする。そのウェアウルフは会話もできる。そいつと仲良くできるか?」

「できるわけねぇだろ」

「だろうな。だから会ったら戦う。1対1だからな。じゃあそこにもう一体別の魔物…そうだな…ワイルドボアがいたとする。そうなったらどうする?」

「どうするって…」

「ウェアウルフと戦おうにも横からワイルドボアに襲われるかもしれない。そしてワイルドボアを先に倒そうとしてもウェアウルフに襲われるかもしれない。どう動く?」

「…どう動くも何も、動きようがないだろ。向こうが協力するとかなら退く事だって考えるがそう言うのではないんだろ?」

「ああ。ウェアウルフも、途中で参戦したワイルドボアも同じ状況だ」

「だったら自体が動くまで様子を見るしかないだろ。もしくはそこから退いて大勢を整えるか」

「だろ?つまり動きが止まるわけだ。それを国で行うんだよ。ウェアウルフは魔族、カトルは人。そしてワイルドボアは俺が作る国だ。お互いに戦おうとしたらちょっかいかけて動きを止めさせる。それが何度もあればお互いに大きな動きをすることはなくなる。小さな動きはあるが、それはそこまで大っぴらになる事はないし、なったとしても規模は大きくなければすぐに消えるものだ。それが長引けばどうなると思う?」


俺の突然の問いかけにカトルとアリカ、クーは首をかしげていた。ある程度察しがついているのか瑠衣はニコニコと笑みを浮かべながらお茶を淹れている。


「憎悪っていうのはな、維持するのって結構大変なんだ。それがよほど根深い物であればまだしも、そうでない物…例えば先祖が受けた屈辱を晴らせ!とかいう当人じゃない憎悪なんて特にな」

「まあ、そうだろうな」

「魔族と人との争い…それの起因が何なのかは俺も知らないが…ずいぶん昔の出来事だというのは確かだ。今は常に争い合っている状況だから憎悪へ至る燃料は常に投下されている。しかしその燃料が途切れれば、時間をかけて浅い憎しみは徐々に薄れ、下手したら争う意味すらわからなくなる可能性がある。そうなれば小競り合いすらしにくくなるだろう」


今は戦争渦中なわけだから、『なぜ戦わなければならないのか』といった疑問を浮かべるのはそのまま死につながる。しかし、それが戦争渦中ではなければ?一度剣を置き、戦線から下がった場合。その疑問に答えが出なければ再度武器を手に取ることはできない。

中には魔族を殺したいから、戦いたいから。そんな理由で再度武器を手に取る者もいるだろうが、そういった者はそこまで多くはない。今は必要だから戦争を続けることが通常であるが、戦わない期間が延びれば延びるほど、戦わない理由が浮かび上がる。それを消すことはなかなかできないだろうし、消さずに強引にやるには大義が必要になる。士気も高くはならないだろうし、戦線を維持し続けることはまず無理だろう。そうなれば必然的に戦争は終結する。


「ま、それをやるにしてもかなり時間はかかるだろうがな」


おそらく俺達が生きている間にそうなることはないだろう。だが、その次々につながる憎悪の連鎖を一時的にでも途切れさせればその先で再度つなげるにはそれ相応の労力が必要になる。さすがにそこまで面倒を見ることはできない。


「でも、途中で魔族と人が手を組んであんたの国を滅ぼそうとしたらどうするんだ」

「それはそれで問題ないよ」


俺がいる間はたとえ手を組んだとしても負けることはないだろう。数が多ければ多いほど俺の独壇場だからな。だが、そもそもの話…


「手を組んで敵を倒すことができるのなら、手を取り合って発展していく事だってできるだろ?」


カトルの問いかけに笑ってそう答えた。



さて、休憩を終えて再度軽く体を動かしてから一度初期に使っていた鍛錬場へと戻る。今俺達がいる間、カトルには追加で一つ鍛錬をさせるようにしたのだ。それは…


「うーし、んじゃあやるぞー」


そう言って見回したのはカトルと5人ほどの少年少女たち。この子達は以前外へと出たいといった子達であり、その後和也の鍛錬に食らいついていた子達だ。和也曰く、実力的にはまだまだだが、見込みは十分にある。とのこと。

というわけでカトルと模擬戦をやらせることにした。


「さて、とりあえず勝敗に関してだが、お互いに全員が戦闘不能になる事。気絶はいいが死なせないようにだけ気を付けてくれ」

「いいけど5対1なのか?」

「ああ。カトルは実力的には上だからな。そもそも今回お前にとっての鍛錬は自分より数が多い相手に対する戦闘訓練だ。相手全員が実力が上だった場合は即座に逃げるように動くべきだが、そんなの鍛錬しにくいしな。そもそも相手にしたら死ぬのが基本だし。だが相手が自分より実力が下の場合、その場合力の差を連携で埋めて超えてくることも有る。それに対する鍛錬だ」


今までずっと俺か和也と1対1でカトルは鍛錬していた。それゆえにタイマンでの戦い方は様になっている。だがそうやって戦えるというのはそこまでない。基本的に多対多か多対1だ。それゆえの訓練だ。


「お前たちは自分より実力が上の存在に対しての連携の取り方の確認だ。普段俺に対してやっている。だが俺は基本的に相手の攻撃を受け止めるタンク型だがカトルは動き回るスピード型だ。それゆえに動き方などは全く違うからそこをきちんと意識するように」


和也はその5人の子達へと声をかけていた。


「怪我をしたらしっかり治療しますので!」


そう言って力強く行ったのはアリカだ。ちなみにその隣にはノエルもスタンバっている。今回はどんな感じの怪我になるかわからないので回復魔法に長けているノエルにも来てもらったのだ。


「んじゃ、準備はいいか?」


俺は和也のほうを見て問う。和也も子供たちのほうを見ると子供達は頷いたので俺達は離れた観客席のところへと移動した。


「それでは…はじめ!」


その言葉と共にカトルが一気に駆け出した。





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