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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
魔物憑き

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第126話


麻薬の元となる作物の畑や工房を襲撃し終えた翌日。一旦俺達は遺跡に戻ってから、俺と瑠衣、クーの三人だけ聖都へと来ていた。後始末というか報告をすることに対して玲と和也に関してはどうするかは個人に任せたところ、行ったところで何かすることがあるわけでも無い。ということで二人は遺跡のほうで各々活動し、俺達は聖都のほうに来ることにしていた。

いつも通り大聖堂の中へと入り教皇の執務室へと向かう。ノックをして許可を得てから中へと入る。


「お疲れ様。どんな感じだい?」

「やあ、よく来たね。今、フリットが問題の貴族を捕えに行っているところだよ」


内部では教皇と共に隊長さんが大量の書類を捌いていた。


「またずいぶんと豊作ですね」

「暇なら手を貸せ。こっちはあまり情報広げるわけにいかないから手を増やすことができねぇんだよ」

「へいへい」


適当な書類の山を回収して上からさっと見ているとそこに書かれていたのは麻薬の製造量とそれに関する帳簿だった。


「これ各工房から回収した奴か?」

「ああ。それを今まとめているところだ」

「主要人物に関してはすでに証拠固めは終わっているけどね、それ以外の取引先などの細かなところはまだこれからなんだ。そのための情報整理ってところかな」

「なるほど」


そう答えつつ書類を捌いていく。クーはまだ文字が読めないので膝の上に座っている状態で、瑠衣はそれぞれ捌き終えた書類の整理をしてもらっている。


「にしてもずいぶん手広くやっているなぁ。これ国外にも流れてね?」

「みたいだな。にしてもその割にはあまり騒動は聞かなかったんだがな…」

「騒動になるほど広まってなかったとか?」

「もしくは騒動にならない理由があったとか」

「例えば?」

「んー…俺が知っている範囲だが、麻薬の中にも鎮痛剤として使われている物もあったらしい。それが中毒成分と一緒になっていて危険なのはわかっていたけど、現時点では中毒成分だけ取り除くことができないからそのまま使っていたとかなんとか。昔調べた話だし、聞きかじりなところがあるから間違っているところもあるだろうがな」

「つまり今回もそのたぐいだと?」

「その可能性もあるって事。今回の麻薬に関して、調べてはみたがそう言った効果はなかったはずだ。よくある快楽成分と中毒成分によるものだが…」

「死に直面した兵士とかには効果があるかもしれないな」


そんな話をしつつも書類を捌いていく。


「まあ、今のところ問題が起きていないのならそれでいいだろう。麻薬の供給が止まればその後で中毒症状が出てくるだろうからな。問題はその時どうするかだな」

「中毒症状を癒す方法とかはないのかい?」

「薬ではないね。治癒魔法ならいけると思うけど」

「治癒魔法か…今後の事も考えて解毒も合わせてできる人を見繕っておこう」

「それがいいかもね」


そんな話をしながら書類の整理を進めていく。


「そう言えば隊長さん、件の孤児院はどんな感じです?」

「今のところ大きな変化はないな。ただ、今日あそこの後援である貴族が捕まるんだ。それによってあそこはいろいろと白い目で見られることになるだろうな」

「だろうなぁ。たとえ無関係であったとしても、今までその利益を享受してたことになる。贅沢な生活をしていたってわけではないが、それでも不自由のない生活をしていたんだ。それがわかれば周りの見る目も変わるだろう。特に嫉妬していた他の孤児院関係者からな」

「大丈夫なの?」

「数日程度なら大丈夫だろ。一応今日はこっちの情報の確認に来ただけだから明日その孤児院に行く予定だよ」

「明日でいいのか?今日これが終わったら行くかと思ったが」

「今日行ったところで向こうに貴族の逮捕に関する情報がまだ流れてないだろう。俺から話してもいいが、いきなり来ても疑われるだろうし、あの孤児院の先生からしたらその貴族派恩人だ。情報がない状態で不正が発生しているといっても信じないだろうしな」

「ま、それもそうだな。明日行くならそれなら俺も行くから先にこっちに寄れ」

「いいのか?」

「そのほうがいろいろと話が早いだろ。こっちとしても調査を終えたことであの孤児院は無関係…とまでは言わなくても非がないと言えるしな」


確かにあの孤児院は直接的に今回の麻薬の事件にはかかわっていない。しかし、あそこへ流れていた資金はその事件によって得た資金だった。それを資金洗浄としてあそこの孤児院へと寄付し、自らの傘下の商会で買い物させて正常化させていた。孤児院としてはただの寄付金として扱っており、犯罪に加担していたわけではないが、それでも全くの無関係というわけではない。かといって罪に問えるかというとそれ程ではないというのが実情だ。要するに黒とも白ともいえないグレーなところといった感じだな。


「あれがわかっててやってたんなら罪に問えるんだがな。どうにもそうじゃないし、帳簿と照らし合わせても直接的な繋がりはない。すべての出入金が件の貴族を介してだ。他の資金に関しては直接的な繋がりを持って洗浄している場所もあったが、あそこと他のいくつかの施設は貴族を介する感じで洗浄していた。おそらくすべてのところで直接的にやるとどこかから漏れる可能性を懸念したんだろうな」


貴族を介さずに洗浄しているのは直接麻薬商売に関わっている奴ら。そいつらはそこで得た資金を自らの手で様々な方法で資金洗浄している。しかし、中心人物である貴族から流れている資金に関しては本来『する必要のない動きの資金』だった。確かに貴族から直接的に資金洗浄を行っていればその動きが感知されやすく、今回の件ももっと早く露呈していたかもしれない。しかし、だからといってそれを手早く感知できるだけの人員が向こうにはあった。それでも複数の施設を介して資金洗浄をしていたのはおそらく好感度稼ぎといったところだろう。自分の庇護下とはいえ、寄付などで好感度を稼いでおけば、聞き込みされた時でも良い印象を語るだろう。この間言った時でもそうだったように。故に孤児院などに寄付して自らの好感度を稼ぎつつ資金洗浄をすると言う手を打ったのかもしれない。


「ま、無関係ならばこっちとしても遠慮なく勧誘できる、また明日よろしくな」

「ああ。といってもこの書類の整理を終えないといく事はできないがな」

「ごもっともだ」


苦笑を浮かべ、再度書類へと向き合った。



翌日、待ち合わせ通りに孤児院近くで隊長さんと合流する。


「やっぱなんかざわざわしてんなぁ」

「まあ、状況が状況だ仕方ないだろう」


不穏な雰囲気がちらほらとする孤児院。暴動が起こっているというわけではないが、それでもやはり雰囲気は以前来た時よりも刺々しい感じだ。


「んじゃ行きますか」


隊長さんと瑠衣、クーと共に俺達は孤児院の中に入っていく。


「こんちわー」


挨拶と共に中に入る。するとこちらに気づいたのは以前来た時に話をした責任者の神父だった。


「あ、司祭様にあなたは依然来ていただいた…よくお越しくださいました。本来なら歓迎したいところなのですが、実は今いささかたてこんでおりまして…」

「ああ、わかっています。それも込みでお話に来ましたので」

「…どういうことで?」

「まあ、詳しくは部屋で話しましょう」

「…わかりました」

「瑠衣、クー、二人は適当に遊んでてくれ。子供たちが不安がってるかもしれないから様子見がてらな」

「はいはーい」

「ん…」


瑠衣とクーに子供達を任せ、俺達は応接間へと行く。


「…さて、それではまず…こちらを支援していた貴族に関してですが、お話は聞いておりますか?」


隊長さんの言葉に神父は頷く。


「しかし本当なのですか?あの方が麻薬密売に関わっていたなんて…」

「関わっていたというか、むしろ大元といいますか。こちらへの寄付金もそれによって得た金で行っていたんですよね」

「そう…なんですね…」


落ち込むように俯いた直後、何かに気づいたように勢いよく顔を上げた。


「そう言えば以前こちらにお越しになった時、聞いてきた事ってこのことだったんですか?」

「あー…まあ、そうですね。といってもあの時点では証拠がなかったので聞き取り調査だけでしたが」

「そう…だったんですね…。ということはやはり私も捕まるのですね…」

「いえ、そこに関しては大丈夫です。確かに資金洗浄によってこの孤児院は使われていましたが、あなたはその寄付金を着服することもなく、常に孤児院運営にのみ使われていました。そのうえあなた自身がこの一件に関わっていないことは判明していますので、あなた自身もこの孤児院も咎められることはございません」

「ほ…本当ですか?」


隊長さんの言葉に神父が安堵したような表情を浮かべていた。


「ただ、やはりここの後援者である貴族が犯罪によって捕まってしまったのは事実。なので咎められることはなくとも、この孤児院に対する風当たりが強くなるのは防ぐことはできないでしょう」

「…そう…ですよね…」

「と、いうわけでココからが俺のお話です」

「はい?」

「実は自分少々大それた目標がございまして、その目標のために人員が必要なんですよ」


そう言う前置きと共に俺はこの世界に来た目的を話し始める。

とある人からの依頼により人と魔族の争いを止めたい事。そしてそのために国を作りたいということ。その国を作るための人材を欲しており、この孤児院の子達を引き取りたいとのことを正直に話す。


「…そんな事…いくら何でも…」


そう言って俺の言葉を聞いた神父さんは戸惑い気に隊長さんのほうを見る。隊長さんも呆れたような表情で俺のほうを見ていた。


「本気…なんですか?」

「ええ」

「正直私達にそんな大それたことの手伝いができるとは思えませんが…」

「ああ、お気になさらず。こちらとしてはいわば育つ人材が欲しいのです。国を作るにしてもそれなりに時間が必要です。その間に学べる場所を提供しますので、そこで可能な限り学んでほしいのです」

「学べる場所ですか?」

「ええ。本来はそれもここで言うべきなのでしょうが…申し訳ありませんが場所を提供してくれている人からその場所に関しては一切の口外を認められていないので」


そう言うと悩むように神父さんは唸り始める。


「今すぐ決めてくださいとは言えません。ただ、こちらとしては受け入れることができます。そしてこちらには他の国からですが、孤児院の子供を引き取っています。その子達の中には自立してもいい頃合いの子供もおり、その子達に面倒を見てもらうことも有るので、そういった事もしてもらいます。どれくらい成長してくれるかはどの子であっても未知数です。そしてこちらの望み通りの成長にならない子もいるでしょう。ですが、それらすべて想定したうえでお話しています。そのことは念頭に入れて考えていただきたいです」

「……わかりました。今すぐは答えは出せませんが…真剣に考えて…あの子達と相談してみます」

「よろしくお願いします。そうですね…また五日後に来ます。その時に可能であれば結論…無理でも何かしら聞きたいことがあればその時にお伺いしてください」

「わかりました」

「では、こちらは今日はここでお暇させていただきます。また五日後、お邪魔させてもらいますね」


そう言って応接間を出て瑠衣達がいるであろう場所へと歩き出す。


「いいのか?すぐに返事を聞かなくて」

「まあ、向こうも考える時間が必要だろう。それと一つ頼みがある」

「なんだ?」

「この孤児院、少しの間見ておいてくれ」

「何かあるのか?」

「後援となる貴族が捕まったんだ。五日ほど様子を見るが、下手したらそうそう動く馬鹿がいるかもしれん。そこらへん見張っておいてほしい」

「…襲撃してくると?」

「よくて窃盗、悪けりゃ子供誘拐からの奴隷行きだ」

「…わかった。ないとは言い切れないからな、警戒しておく」

「もしあまりにも不穏だったらあのブローチで連絡をくれ。こっちも早々に動く」

「わかった」


隊長さんと小声でそう相談してから俺は瑠衣達を回収して遺跡へと戻った。




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