表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
魔物憑き

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/145

第97話


自然の恵みが多く、広い森林を所持している農業国家シャンフォレ。

それゆえに隣国へと行くにも森の中を通らないといけない。まあ、主な道はきちんと整備されているので商隊などはその道を通って国家間を行き来している。

しかし、たとえ道自体は整備されているとしても、それはあくまで通りやすくしている程度。周囲にある森の中にまで下手に手を加えるわけにはいかないので、ある程度の広さを確保する程度となっている。

それゆえに、道の周辺には深い森が広がっており、夜になると周囲の暗さも相まって身を隠すにはもってこいの場所となっている。だからこそ…。


「これでおしまいっと」


山賊などのならず者も多く潜んでいたりする。


「今回はそこそこいたねー」

「そうね~、でもボスらしき人物はいないわね~」


後方支援をしていた瑠衣と玲がつぶやく。

近くにいるシエルは周囲を警戒していたが、伏兵などはいないようだ。特にけが人も出なかったのでノエルは真白とセレスと共に待機している。


「こいつらのアジトが別にあるのか?」

「そう考えられるが…問題は場所がわからんってことだな…」


和也の言葉に答える。

襲われた以上、ここから遠い場所にアジトがあるとは思えないが、かといってそれを探るには広すぎる。


「シエルちゃん、アジトの場所わかりそう?」

「ん~…いくつかそれっぽいところはあるけど…さすがにどれかはわからないかなぁ…」


シエルの周囲の認識能力はかなり高くなっており、下手すると俺すら超えるかもしれない。

そんなシエルがわからないのならば、俺が探っても意味ないだろう。


「まあ、わざわざアジトまで潰す必要もないだろう。とりあえずふんじばってそこらへんに転がしておくか。運が良ければ生きている間に誰かが通り過ぎるだろう」


魔物も出てきたりするので最悪死ぬ可能性はあるが、まあ、こいつらだって行商人を襲って殺したりしてるんだ。それを考えれば妥当な処遇だろう。


「…あれ?」

「どうした?」


シエルが何かに気が付いたようで目を閉じて集中している。


「………ここから少し離れた位置に村かな?あるみたいだね」

「そうなの?」

「うん、街道から離れた位置だからたぶん普通に通るだけじゃ気づかないと思う」

「へぇ…それがどうかしたのか?」

「その村から少し離れた位置に一人でいる気配があるんだよね。気配の感じからして子供かな?山菜採りでもしてるのかもしれない」

「子供一人で山菜採りって危なくないか?山賊だっているだろ」

「うん、実際その子から少し離れた位置に山賊の集落っぽいのがあるんだよね」

「…やばくね?」

「見つかるのも時間の問題かもね。シエルちゃん、案内できる?」

「うん、任せて!」


シエルを抱きかかえ、瑠衣が駆け出す。その案内に従って森の中を進んでいくと俺にもシエルが言っていた気配が補足できた。


「いた。よくこんな距離補足できたな」


俺自身鍛錬はしているので、現時点ではそれなりの広さの街ならば全部を探知できるレベルにはなっている。しかしそれは大雑把な数程度でそれが子供か大人かどうかなど細かなところは離れれば離れるほど精度が落ちていく。

しかし、シエルは俺より広い感知範囲でそういった細かなところまで把握できるみたいで、その実力はとてつもなく高いだろう。もともとそれだけの潜在能力を持っていたのか、それとも虚空たちのところにいた時に何かしらコツをつかんだのか。まあ、こっちとしてはありがたいので気にはしないでおこう。

それよりもさっき補足した子供のほうだ。気配的に山菜採りしているからか、ふらふらしているが、その先にもう一つ別の気配を感じる。おそらくこっちがシエルが補足していた山賊の根城だろう。このままでは見つかるのも時間の問題だ。


「先に行くぞ」

「うん」


この中で一番移動力が早いのは俺だ。ジャンプして背の高い木の枝に飛び乗り、枝のしなりを活かして勢いよく飛び上がり、風のブーストで一気に飛んでいく。

それと同時に気配にも動きがあった。おそらく子供に気づいたんだろう、根城近くで動く気配が増えた。

子供も山賊に気が付いたのか、逃げるように動きが速くなるが、やはりそこは大人と子供。移動速度に差があるから徐々に追いつかれそうになっている。間に合うかどうかギリギリのラインだ。

とりあえずできる限り急ぎつつ、山賊の数を把握する。現時点で動いている気配は4人。それぞれが子供を囲んで捕まえようと動いている。

一番先頭の山賊が一定の距離を保った状態で子供を追い回す。

その間に他の山賊が身をひそめながら周囲を取り囲むように移動している。まるで追い込み漁みたいだが、子供を捕まえるのにそれが一番楽だったんだろう。

気配自体は感じられているが、まだ距離がある。たどり着くまでにもう十数秒ほどかかるだろう。間に合うかどうか怪しいところだ。

そんなことを考えつつも全速力で駆けつけている間に、子供のほうが木の根に足を取られたのか、転んでしまう。それを好機と見たか、山賊たちが包囲網を狭めて子供を取り囲んだ。


「こりゃ間に合わんぞ…!」


捕まえられた後でも助けることはできる。だが、下手したら子供を人質にされ、厄介なことになりかねないから、それよりも早く手助けしたかったが、あと数秒かかる。


「ケイ、これ」


そう言って背中にしがみついているクーが差し出してきたのはクルミだった。


「これ投げれば届く?」

「なるほど、ナイスだ」


普通に投げただけだと威力はないだろう。だが、風でブーストかければクルミであっても弾丸レベルで勢いがつくだろう。

とりあえず立ち位置等で射線が通っている場所へと即座に移動し、着地と同時にクルミを握りしめ、一気に腕を振りぬく。手から離れたクルミが風のブーストにてすさまじい速度となって飛んでいく。一直線に飛んでいくクルミが寸分違わずに山賊の頭をぶち抜いた。


「やっべ威力高すぎた」

「…仕方ない」


思いっきり子供のトラウマにならないかと心配だが、それを気にしている暇もない。唐突な攻撃を受け、他の山賊が驚く。その間に距離を詰めていく。突然の出来事に山賊はうろたえ、子供はポカンとしている。


「よし、間に合った…!」


勢いそのまま山賊一人を蹴り飛ばし、子供の近くへと降り立つ。


「なっ!?なんだテメェは!」

「通りすがりの旅人…だ!」


即座に二本の刀を抜き、抜刀と同時に斬れないように軽い調整をした風の刃を残った二人に放ち、吹き飛ばして手近な木へと激突させて気絶させる。

とりあえず周辺を確認するが、追加の山賊はこちらには来ていないようだ。


「うし、大丈夫そうだな。怪我はないか?」


ポカンとしている子供…13歳ほどの少女へと手を差し伸べる。


「え…あ、はい大丈夫です。えっと…」

「俺は通りすがりの旅人でケイだ。こっちはクー。仲間と旅していたんだが、旅の仲間があの山賊と君のことに気が付いてね、ちょっと危なそうだったから駆けつけたってところさ」

「あ、そうなんですね。ありがとうございます助けてくれて…」


まだ状況が把握しきれていないのか、少し少女は茫然とした様子だった。

とりあえずクーに任せつつ、彼女が落ち着くまで山賊を縛り上げておく。この後どうするかは瑠衣達と合流して要相談ってところだな。クルミ当てた山賊に関しては適当にそこらへんに転がしとく。

そんなことをしていると茂みが動いた。少女はびくりとおびえるように体を震わすが、クーは特に警戒していない。俺も気配で感じてたが来たのは…。


「あ、いたいた」


ノエルを連れた瑠衣だ。


「あれ?瑠衣とノエルだけか?」

「玲達は山賊のアジト潰してくるってー」

「ああ、そうなのか。どうするか。捕獲だけしておいてまた適当に放置しておくか?」

「村が近くにあるならそこに引き渡せばそこから憲兵とかに引き渡せないかな?」

「あー、それしたほうがいいかもな…仲間いたら逃がされて報復の可能性もあるからな…」

「それよりその子が助けた子だよね?」

「ん?ああ、そうだ」


少し警戒している少女をおびえさせないように瑠衣はしゃがんで視線を合わせる。


「こんにちわ、もう大丈夫だからね」


にっこり笑って少女へと声をかける。


「あ、膝すりむいちゃってるね…ノエルちゃん、お願いできる?」

「はい、治しますね」


ノエルの手から光があふれだすと少女の膝にできている擦り傷を即座に癒した。


「…足首も少し痛めているようなのでそっちも治療しますね」


おそらく木の根に足を取られた時にひねったのだろう、足も捻挫していたようなので、ノエルが治療していた。


「すげぇな、そこまでわかるのか」

「ええ、なかなかやることはありませんでしたが、いつでもできるようにしていましたので」


俺達は神爺さんと虚空たちがいた神徒の遺跡で鍛えたおかげでかなりの実力を持っている。

一度苦戦はしたがそれもかつての勇者であるセシルくらいで、他はほとんど苦戦もせずに倒すことはできた。

そしてセシルに関してもお互いに実力が高いがゆえに一度でも攻撃を食らえばそれがそのまま致命傷につながりかねなかった。故にノエルの出番が来るほどの怪我を負うことはほとんどなかった。


「それでもどれだけの傷が治せるかはわかりませんので、できる限り怪我はしないでくださいね」

「ああ、わかってる。それでどうする?和也達のところに行ったほうがいいのか?」

「ううん、向こうにはシエルちゃんがいるし、終わったらこっちに来るって言ってたからここで待ってよ」

「あいよー。んじゃあ和也達が戻ってきたらこの子を村まで送るか。案内してもらっていいかい?」

「あ、はい。大丈夫です」

「うい、んじゃあそれまで休憩だな。まあ、そこまで時間かからないしのんびり待ってよう」

「そだね。お菓子食べて待ってよっか」


そう言って瑠衣はお菓子などを出し始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ