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神に頼まれたので世界変革をすることにした  作者: 黒井隼人
農業国家シャンフォレ

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第95話


それぞれの情報収集によって畑荒らしの一件の背後にいるのがローゼット商会だということが判明した翌朝。

リディの家に護衛がてら泊まっていた玲達が戻ってきたので一通り情報共有しておく。


「そう~…じゃあ黒幕はローゼット商会で確定かしらね~?」

「まあ、ここまで証拠があって違うってことはないと思うがな」


リディ一家の取引を奪い取ろうとしている事。闇ギルドを使って畑荒らしや誘拐、襲撃を画策している事。そして最近のローゼット商会の評判が落ち、水害によって被害を受けた畑のいくつかを買い取っている事。

これだけそろっていて黒幕じゃなかったらむしろ誰がそうなんだとなってしまう。


「それで今日はどう動くのかしら~?」

「そうだな…ある程度証拠固めは完了しているから…俺と瑠衣は王城に行って第2王子に証拠を渡してくる。玲達は…どうするか」


正直これからやることは特にない。ローゼット商会を追い詰めるのは王家というか国がやるべきことであり、外野である俺達がでしゃばるわけにはいかない。

今後できそうなのはリディ周辺で被害がないかだが、現時点で予測されている件に関してはすでに他の冒険者などによって護衛がされており、わざわざ追加で行く必要もないかもしれない。


「そうね~。まあ、変わらず私たちは畑荒らしや誘拐に備えておくわ~。いるから大丈夫だとは思うけど、何してくるかわからないものね~」

「そうか、わかった。じゃあ真白達は…」

「私たちは食堂のほうに行ってみます。冒険者が護衛に回っているようですが、万が一もありますし、怪我人が出ないとも限りませんので」

『治療なら私ができるから任せてー』

「じゃあそっちは任せた。まあ、国としてもある程度証拠の査定に時間かかるから最低でも2・3日くらいはかかるだろうが、その間頼むな」


俺の言葉にそれぞれが頷く。

とりあえず今日から数日は変化はないだろう。あとは国が動くまで様子を見るというのが主になる。

とりあえずの予定を決めたので、玲達は先に宿を出てそれぞれの目的地へと向かう。


「私たちはいつ行くの?」

「昼前だな。あまり早く行っても受付されないだろうし、そもそも王族にそう簡単に会えるわけもない」

「それもそうだね。でも、それならどうするの?」


国王や王太子になるであろう第1王子に会うにはそれ相応の手続きが必要になる。

まあ、こっちの目的は第2王子なので、そこまで厳重でも無いだろうが、それでも手続きが必要なのは変わりがない。

しかしそれは身元がしっかりしている貴族やこの国の住人であることが前提であり、そういったものがない旅人だとそのハードルがさらに上がってしまう。だからおそらくまっとうな方法では手続きすら拒否されかねない。


「ま、そのために一度接触したかったんだがな」


そういってテーブルで手紙を書きだす。中は検閲されるだろうが、それでも問題ない内容にして、第2王子へと渡してほしいと門番に頼めば届くだろう。


「問題はどこで会うかだなぁ…」


宿に呼び込むわけにはいかないだろうし、かといって王城で会うことも厳しい。

情報を渡すだけで後は任せるわけだから、場所を気にする必要もないだろうが…。


「前話したあの裏通りとか?」

「そこしかないわな」


屋外という問題点はあるが、周囲の気配を探りやすく、人通りが少なく内緒話するにはちょうどいい。

そして俺と第2王子の二人が知っている場所であるから、護衛連れならば普通に問題なく行けるだろう。まあ、向こうがこちらにどう対処してくるかがわからないが。


「んじゃ、それを踏まえて手紙書いておくかー」


内容を決めたのでささっと手紙を書き始めた。



王城 第2王子アルカの執務室。


前日、ローゼット商会の周囲を嗅ぎまわっていた旅人、ケイと名乗る男たちと接触し、一応は敵ではないと判断したのでそれらについて父である国王と兄である第1王子に報告をした。

とりあえず現時点では敵ではないと判断できたのでよしとし、向こうが協力してくれる分には助かるところもあるので、基本はそのまま放置。必要とあれば接触するという形で落ち着いた。不穏な気配を感じたら影などを使って監視する予定だが、下手にそれをして勘づかれるのも厄介だし、それで敵対なんてことになったらなおの事厄介なので、基本的にはケイたちが動くのを待ちつつ、こちらはこちらで計画を進めるという形に落ち着いた。

そんなこんなで今後の動きを考えていると、扉がノックされる。

返事をするとアルカの側近が手紙を手に室内に入ってきた。


「殿下、文官から少し前に殿下当てに手紙が届いたと」

「手紙?」

「ええ、殿下がおっしゃっていた『ケイ』という人物からですね」

「!内容は?」

「簡素な物でした」


そういって差し出してきた手紙は短い文が書かれていた。


『以前話していた情報が一通り集まりました。以前お会いした場所でお待ちしております。ケイ』


「なるほど…護衛に連絡を、すぐに向かう」

「よろしいので?碌な情報書かれていませんが…」

「ああ、問題ない。もともと会ったのは昨日、偶然探っている彼らを見つけたからだからな。こちらを狙っている輩が何か動く隙も無いだろう」


たとえ敵対関係の貴族などが動いていたとしても、昨日の今日で動けるということはないだろう。それに具体的な場所なども一切記入していない。これは会話内容がわかっていないとできないことだ。あの場で話を聞いていたのは彼が連れていた人達と護衛のみ。それを考慮すればこの短い文でも相手が言いたいことはある程度予測はできる。


「さて、情報を手に入れたとは言うが、どこまで手に入っているのか…一応父上と兄上に話を通しておいてくれ。帰ってきたらその情報を共有して精査しておきたいから」

「わかりました」


ペコリと頭を下げる側近、それを見つつアルカは外出の準備を始めた。



護衛と共に王城を出て以前通った道を歩く。一応簡素な変装はしているので貴族だということはわかるだろうが、王族とまではわからないはずだ。


「昨日の道は覚えているか?」

「はい。少し入り組んだ道を通りましたが、それでも向こうはこちらを撒く気はなかったようなので、覚えられています」

「そうか、じゃあ案内を頼む」

「かしこまりました」


護衛の案内で裏通りを歩く。以前ここを通った時は前を歩くケイたちに気づかれないように、そして見失わないようにしていたのだが、相手は最初から気づいていたようだ。そしてまんまと誘われ、そして接触した。一応協力してくれるという話ではあったが、まさか翌日に情報を提供してくれるとは思わなかった。


「ここです」


護衛が足を止め、目的地にたどり着いた。しかし、周囲を見ても目的の人物の姿が見えない。


「…いないですね」


裏通り故、建物の陰になって薄暗くなっている周囲。かといってまだ昼に近いのであくまで大通りよりかは薄暗いというだけで視界が悪いというわけではない。それでも目的の人物どころか、人っ子一人姿が見当たらない。

一瞬罠であったのか?という疑問が沸いてきたが…。


「思ったより早かったな」


そんな声と共に頭上から人影が降ってきた。咄嗟に護衛がアルカをかばうように前へと立つが、その人影はそんな護衛を気にせず、抱えている人を静かに下した。


「もうちょっと時間がかかると思ってたから日向ぼっこしてたんだがな」


あくび交じりにそう呟くのは目的の人物であるケイ。彼は昨日も共にいた女性と背中に背負っている獣耳の少女と共に姿を現した。



王城の門番に手紙を渡したのち、何かするにもいつ来るかわからないのでさっさと合流場所へと向かう。情報をまとめた物はそれらを手に入れた情報と共にまとめており、軽い説明と共に渡せばあとは向こう次第だ。


「さて…いつ来るかな?」

「さあ?さすがに王族だからそんなすぐに来るとは思えんし、軽く昼寝でもするか」


そういって瑠衣を手招きする。首をかしげてこちらに近寄ってきた瑠衣をそのままお姫様抱っこした。


「きゃあ!」


突然抱き上げられてびっくりしたようだが気にせずそのまま地面を蹴って近くの建物の屋根に乗る。


「うし、ここなら日向ぼっこにちょうどいいだろ」

「もう…いきなり抱き上げないでよ。びっくりしたじゃん」

「まあまあ」


文句を言ってくるが、別に怒っているわけじゃなさそうなのでとりあえず軽く流しておく。

屋根に座ると背中に張り付いていたクーが膝の上に乗ってきたので軽く頭を撫でてから横になる。


「寝ちゃって大丈夫?」

「問題ないよ。第2王子の気配は覚えているから」


一度しか会っていないが、それでも重要人物の気配は覚えるようにしている。

今回もあの人物が今後にとって必要になるだろうから会った時に気配を覚えるようにしていた。


「そか、じゃあ私も横になろ」


瑠衣も俺の隣で横になった。屋根の上故に周囲に日を妨げる物がないので、天気のいい今日は絶好の日向ぼっこ日和でもある。


「それにしてもどこに行ってももめ事が起きるねー」

「そりゃな。人が集まるところにはもめ事も集まる。人が少ない場所だって全く問題がないってわけじゃないんだ。大きさの違いはあれどどこでも問題は起きるもんさ」

「それに毎回首突っ込んでるのも大変だけどねー」

「そうなっちまったんだから仕方ない」


今回だってたまたま玲達が畑荒らしにあったからこの問題に関わったんだ。それがなければ俺達だってそこまで気にもせずに次の町へと向かっていただろう。

そういう流れになったから仕方ない。意図的に避けるのも一つの手ではあるだろうが、それがめぐりめぐって別の問題としてこちらに来ることだってあり得るんだ。だったら早いうちに手を打つべきでもある。ま、解決できる問題ならさっさと片付けたほうがいいのはどの世界であっても変わらんものだ。


そんな話をしつつまったりとしていたところ、目的の人物たちがこちらへと近づいてきたようだった。


「来たの?」

「ああ」


上半身を起こし、体を伸ばしたのちにクーを背負い、瑠衣をまた抱き上げる。


「思ったより早かったな」


屋根の上から飛び降り、ゆっくりと下降しながら待っているアルカたちへと声をかける。

静かに地面へと着地し、瑠衣を下ろして護衛に守られているアルカたちを見据えた。


「手紙は受け取ってもらえたかな?」

「ああ。それで情報を手に入れたという話だが?」

「ほら、これだよ」


そういってリストを差し出す。アルカは護衛と目を合わせ、護衛はこちらを警戒しつつ歩いてくる。


「別に何もしないって」


護衛としては必要な事だろうが、あまりにも警戒心が強いその姿に思わず苦笑を浮かべてしまう。

護衛は俺の手からリストを受け取ると、軽く目を通してアルカの元へと戻る。おそらく書類事態に何か妙な仕掛けがないかの確認だろう。

触れても問題なしと判断したようで、アルカへとそのリストを差し出すと、その場で確認しだす。


「とりあえず一番上から現在襲撃を受けた畑の持ち主に起こった事件、そしてその関係者である食事処の店主の取引関連について。次は闇ギルド内部で手に入れた情報。次に冒険者ギルドにて集めた水害の被害リストとそれに関する購入者リスト、及びローゼット商会の外部視点からの印象ってところだな」


一つ目のリストに関しては玲達が集めた情報をそれなりにわかりやすくまとめたものだ。

と言っても、襲撃を受けたこと、誘拐を画策されたこと、そしてリディの旦那の友人であり、取引相手である食事処に対する嫌がらせや取引先変更の進言等々。そういった物を一通りまとめたものだ。

そして次のリストは真白達が集めてくれたものであり、闇ギルドの表向きの依頼者などが記載されていない依頼書、そしてそれらがまとめられている裏側の依頼書。そして闇ギルドへと支払われた報酬金などの流れ等々。そういった部分をその書類のまままとめ、補足を別の紙に書いた感じだ。

そして最後が俺達が集めた情報。冒険者ギルドで調べた水害に関するリスト、そしてそれの後の購入した者たちのリスト、現在のローゼット商会の状況を客観的に、常連等にも話を聞いて過去とどう違うのか、いつから変わったのか。なぜ変わったのか。そういった部分をまとめたものだ。

ローゼット商会をつぶすだけなら前者二つだけでも問題ないだろう。

だが、ローゼット商会を残しつつ元凶をつぶすとなるとこれ二つだけでは足りない。だから最後の情報が必要となる。

ローゼット商会があくどい方法を取り始めたのは商会長が代替わりしてからだ。つまりそれを証明し、現時点では商会長を挿げ替え、ある程度監視下に置くことで問題ない、という判断を下せる範囲でとどめておくための情報が3つ目の情報だ。


「あとは、それを査定して、どう使うかだが…それはそっちの仕事だから大丈夫だろう?」


じっくりと資料を読み進めるアルカへと声をかける。


「………確かにこれなら…うまく扱えば現商会長の関係者だけを捕まえることができるかもしれない…」

「それならあとはそっちの仕事だ。必要な情報は手に入れただろ?」

「ああ、そうだね。ある程度の精査が必要にはなるが、これで動き方が決まるだろう」

「お役に立てそうで何より。んじゃあとは任せたぞ。俺達はこの後はしばらく様子見しつつアンタらが動くまで被害が出ないように軽く見張っとく。なるべく早めに頼んだぞ」

「ああ。任せてほしい」


そういったアルカに頷き、俺達はその場を後にした。

さて、あとは任せて俺達は見張りつつ旅立つ準備をしましょうかね。





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