case2俺と神社と不思議な出逢い(事件編)
「美波ちゃん、何があったか話してくれるね?」
「はい。」
「先ずは君を襲ったあの男について教えてもらえるかな?」
俺は彼女に迫っていたあの男について訪ねる事にした
俺の勘だけどなにかが引っ掛かるのだ
「彼はこの町の地主の息子です
名前は犬上銀次といいます
私と彼は同じ高校に通っているのですが、交際を断っても断っても聞き入れて貰えなくて
それに・・・この町では犬上家の人間には皆逆らえないんです」
ビンゴっ!
犬上・・・・偶然にも犬上家の人間だったとは
「逆らえない?それはなにか理由があるのかな?」
「それは・・・・」
美波ちゃんは何か躊躇っているらしい
町の人間の様子からもわかったがどうも何かあるようだな
「大丈夫。俺は何があっても美波ちゃんの事を信じるよ
俺が声を掛けたときに美波ちゃんが俺を信じてくれたみたいにね」
そう言うと美波ちゃんは一瞬、安心した様な表情になりゆっくりと話を始めた
「実は少し前にこの町で犬上家に逆らった家の人間が死んだんです
それも・・・その揉めた翌日にです
この町の警察の人も犬上家と繋がっているらしく、事故死ということになっています
だけど・・・私見たんです!野次馬の隙間から見えた死体は首から上がありませんでした
そんな変な死に方をしていたのに事故死って・・・それで私怖くて
おかしいですよね!そんな死に方・・普通じゃないわ」
首から上のない死体ね・・・俺は大神を見ると
「ちょっと聞いてもいいかな?
その被害者だけどこの中に居るかな?」
ジャケットから数枚の写真をテーブルに並べて確認をすると、彼女は震える指で一枚の写真を指差した
「この人です
実は犬上家の要望を受け入れなかった神社の神主さんです」
神社の神主・・・
「なんというか・・罰当たりな事をするもんだ
それにしても、君の言う通り・・おかしな状況だ」
「そう・・ですね
私、そこの神社で巫女のアルバイトをしていたんです
その時にアイツに目をつけられた見たいで神社にやって来てしつこく迫って来たんです
それを止めてくれていて・・すごくいい人だったのに・・・
私・・・・私のせいで・・・・・・春彦さん・・・死んじゃったの!」
うわぁぁぁ・・・とその場で泣き崩れてしまった
神社で巫女のアルバイトをしていたという彼女は何故か自分のせいだと告白したのだ
俺は彼女の頭の上にそっと手をおいて優しく撫でた
「君のせいじゃないよ。俺はそう思うな
だからそんな風に泣いちゃ駄目だ」
「どうして・・・?私のせいじゃないってわかるの?」
「わかるさ。たぶんだけど君は自分の身を危険から守っただけだし、春彦さんも自分の信じた事をしただけだ
その結果が不幸な事があ起きてしまったという事だと俺は思う」
「でもっ!でもっ!」
「あのね、美波ちゃん。森の言う通りたぶん君は何も悪くない」
「どうして・・どうして・・わかるの?」
「それはね。俺もコイツもこの事件を調べているからさ
何で彼があんな死に方をしたのか大体の理由も分かってる
ただし、その理由は訳あって話すことは出来ないんだけどね」
「理由・・わかるんですか!
なら・・・教えてくださいっ!」
「ごめん。それは出来ないんだよ」
「どうしてッ!」
俺が理由を教えられないと言う俺をキッと美波ちゃんは睨んでいる
信じろと言う癖に理由が話せないという俺らを美波ちゃんは睨んできたのだ
そうだよな・・普通は身近な人間の死の理由を知りたいと思うだろう
だけど
「それは君を守る為だよ」
「私を守る為?」
「そう。理由を知ってしまったら美波ちゃんもこの町の人もきっと良くない方向に行きかねない
それがわかっているからこそ言えないんだ」
「ずるいっ・・・そんな言い方っ!」
「そうだね。大人はずるい生き物なんだよッと」
俺はわざと彼女の頭をがしがしと撫でると彼女は頬を膨らませて
「もうっ!髪型崩れちゃうじゃないですかっ!森さんのバカっ」
「意外と森さんってたらしと言うか・・・優しいよね~」
「おい!タラシとか意外ととか余計だっ」
「ぷっ・・・あははははっ。おっかしー・・
森さん子供見たいですね」
「やっと笑顔になったね。」
そう言うと彼女は瞳をぱちぱちさせて
「そうですね。なんか色々吹っ飛んじゃいました」
「そうか。それはよかった
じゃあ話を戻しても大丈夫だな?」
「はい。大丈夫です」
「春彦さんの事情についてはわかった
それに彼が神社の神主だっていう事は知らなかったからすごく助かったよ
それでね、春彦さんは何処の神社の神主なんだい?」
「そう。それは確かに重要な情報だね」
そう・・重要な情報だ
「少し待ってて貰えますか?」というと
彼女は春彦さんの神社のパンフレットを持ってきてくれた
パンフレットを見るとどうやら”稲荷神社”のようだ
「稲荷神社ですね」
「はい。この町では有名な稲荷神社でしたが、春彦さんが亡くなった後は参拝客の客層も変わりました
それに身内だという怪しい男が後をついでからは不穏な空気が漂っているような気がして・・・
バイトもやめました」
不穏な空気が漂いはじめているという事は最早一刻も早く事件を解決する方向にしないといけないようだな
それからもこの町で行われている犬上家による事件の数々を聞くことが出来た
どれも話を聞く限りあまり良い地主では無いようだった
彼女から必要な情報を聞き終えた俺達は今晩泊まる宿へと向かうことにした
玄関で後に後ろから声をかけられた
「お前さん達は外から来たんじゃろ?
悪いことはいわねぇ。早くこの町から出た方がええ
狗神さに呪われてしもうたこの土地はもう終わりじゃ
それに春彦さのとこのおきつねさまもお怒りじゃ」
「どうしてそう思うのですか?」
「ワシは年は食っても巫女にはかわりねぇ
不穏な空気は分かる」
「そうですか。
心配してくださってありがとうございます」
「ですが、ご心配なく。
俺達はこういうことに関しては専門家ですので」
「そうか・・・気を付けるのじゃよ
それとこれを持って行きなされ」
そういって一本のお酒と紅白の組紐に小さな黄色い鈴がついたお守りを渡された
今はまだこれが何を意味するのかは分からないが何か意味のあるものなのだろう
大事にしないとな
「ありがとうな婆ちゃん
それとこんなものしかないけど」
俺はお礼にいつも持ち歩いているチョコレートを渡した
「あらあら美味しそうなチョコレートね。ありがとね」
「「お邪魔しました」」
俺と大神は美波さんの家を後にした
宿泊先へと向かう車の中で本日2度目の会議を始めた
「まさか、神主が殺されているなんてね
これこそ予想外。よりにもよって稲荷神社の神主とは・・」
「確かに予想外だ。
それと大神、今から俺が言うことで間違っているところがあったら訂正してくれ
稲荷神社と言えば祀っているのは五穀を司るウカノミタマ様と茶枳尼天様だろ?
ってことはこのままいけば怒りを買ってこの土地での作物は育たなくなるだろうな
他にも色々な弊害や被害が出ることは間違いない」
「そうだね。それだけじゃないよ
茶枳尼天は信仰するのが難しい女神様だし
彼女を一度信仰すると死ぬまでその信仰を行わないと災いが訪れると言われている
他にも諸説あるがとある一説では彼女は死者を管理している女神だとも言われている
そんな女神様達の恨みを買うということがどれだけ恐ろしい事か理解できないのだろうね」
間違いなくその事は頭の中には無いだろうな
欲に忠実で自分の都合の良い現実のみしか受け入れられない体質なのだろうし
「それはそうだろう。
警察官としても人としても酷いことだとは思うが俺は犬上家の人間がどうなろうと構わないと思ってしまう
そういう気持ちが無いと言えば嘘になるな」
「君はそう言うところが素直だよね
俺の前では何を言っても気にしないよ
君が今言ったことは純粋な気持ちだと思う」
こういう気持ちを吐露するのは本来であれば誉められたことではないだろうな
それでも俺は彼女の嘆きを悲しみを目にしてしまった
弱音は吐いた
後はもう俺は俺の持てる力で、出来る範囲の事をすることだ
この町の中にある御門家が信頼している宿へとチェックインを済ませると明日の準備を始めた
先ずは明日俺は別の用事のある大神とは別に例の稲荷神社へと行くことにした
それにあたって俺は俺なりにやる事があるのだ
そして明日のそれぞれの予定を確認して俺は眠りについた
翌朝俺は神社に出掛けるべく準備を始める
支度を終えた俺の姿をみた大神は”ちょっ・・予想外なんだけど”と笑った
俺は”似合うだろ?”と言って部屋を後にした
宿を出るとタクシーに乗って神社へと向かった
「お客さん、みない顔だね?」
「わかります?実は昨日来たばかりなんですよ。」
「稲荷神社に何しに行くんですか?」
「稲荷神社に行くのは珍しいんですか?」
「ええ。昔は良い神社だったんですけどねぇ・・・
ここだけの話、そこの神主さんがなくなってからはご利益もイマイチなんですよ」
「そうなんですか・・・ちょっと残念ですね
実は俺ね、友人が結婚するんでご利益のあるお守り買いに来たんですよ」
「それは・・・残念でしたね。どうします?場所変えますか?」
俺は少しうつむいて考える振りをしてから
「いいえ。取り合えず行ってみます」
「そうですか。ではこのまま向かいますね」
「そうそう。この町で美味しい食べ物とかお土産に良いものとかありませんか?」
「ああ・・それだったら・・」
それからは口の軽くなった運転手から色々な話を聞いた
もちろん”犬上家”の噂も聞いた
「ここまで色々ありがとうございました。あの、名刺頂いてもいいですか?
帰りのタクシー捕まらなかったら頼もうかと思って」
「あははは。気に入ってもらえたら嬉しいよ。ほれ、どうぞ」
俺は名刺を受け取り、料金を支払うと神社へと足を運んだ
神社の石段は真ん中はあ神様の通り道だから俺は右端を歩いて階段を上る
朱い鳥居を潜ると大きな神社とその前にには美しい稲荷像が2体並んでいる
俺は石段んぼ時と同じく真ん中を避けて手水舎で手を清めて拝殿へと向かった
拝殿前の美しい稲荷像に俺はひどく惹かれていた
「綺麗だな・・・」
”ふふふふ。ありがとう”
何処からか女性の声が聞こえて来た
「いえいえ、とても美しい綺麗な毛並みです。
銀色かぁ・・・・白じゃないんだな」
”お主・・・もしや、わらわの声も姿も見えておるのか?”
「ん?えっと・・・はい?」
”そうか!!お主、わらわが見えるのならば一緒に来て貰いたい所があるのじゃ!”
くいくいと俺のズボンの裾をくわえて”こっちじゃ!きてたも!”という稲荷様
俺はむやみやたらに妖の類いに着いていってはいけないと言われていたが、どこか清らかな空気を纏っている彼女が悪いものに思えず着いていくことにした
目の前の稲荷像に変化がないのだが確かに俺の側には稲荷がいるという不思議な感覚だ
「着いていきます。俺は貴女が悪い人じゃないと思いますんで」
”そうか!感謝する!こっちじゃ”
俺と彼女が歩いているとこの神社の人間であろう男が声を掛けて来た
「おや?お客様ですか。みない顔ですね・・」
不躾な視線で頭から爪先までを値踏みするように見ると”・・・・金の無さそうな客だ”と呟いた
おい。失礼なやつだな!と内心思いながらも
「ここのお守りがご利益があると聞いて観光で来たんです
特に縁結びに聞くと聞いていたので今度結婚する友人に送ろうかと思いまして」
「そうですか!それはいいですね!是非(効果があればいい宣伝になりそうだ)」
「後でお守りを買いに伺いますね!
俺はもう少し美しい風景を楽しんで行きたいので」
俺は首から下げたカメラを片手で持ち上げて微笑んだ
「そうですか?実は縁結びに良いものがあるのですがどうでしょうか?」
俺の足元では全身の毛を逆立てて威嚇をしている彼女の気配がする
「いえ。俺は大丈夫です。
それほど効果があるものでしたら他の必要な方にお譲りください」
「そうですか・・・(チッ・・・久しぶりの鴨なのによ)」
「では失礼します」
俺はこの嫌な気配を纏った男から離れるべく不自然にならない程度の速度でその場を去った
”あの男!客人に対してなんと無礼な!”
「大丈夫。俺はああいう気を向けられるのは馴れている
だから気にしなくても大丈夫です
それよりも俺に用事なのだろう?用事をすませに行こう」
”ではこちらに”
そういって彼女が進んだ先・・・・それは
「ご本殿・・・・」
”ほう?ここがなんなのか主は理解しておるようじゃの”
「勿論です。ここはご神体がいらっしゃる神聖な場所のはず・・・・」
何と言うかねっとりとした体に纏わり付くような嫌な気が充満しているのだ
俺はそういえば・・・・と持っている鞄の中から御門さんから貰った邪気を払うという”大幣”を出した
とりあえず御門さん達は・・こうだったかな?
俺に霊力というものがあるか不明だが、持たされたものなのでそれなりに効力があるだろう
確か「祓いたまえ、浄めたまえ」と唱えながらそれを振るうと邪気が祓われて行く
あ・・出来た?
”おお!!主は陰陽師か何かか?”
「違いますよ。
知り合いの陰陽師が持たせてくれたんです」
”なんと!よき友人をもっておるのう
これでわらわもあのお方の所に行けるというものじゃ!”
彼女の体が淡く光ると一人の巫女姿の女性が現れた
”こちらじゃ・・”
そういって俺は本殿の中に招き入れられた
そこには見事な”茶枳尼天様”と”ウカノミタマ様”が描かれた大きな掛け軸があった
見事な細工と美しい筆使いに俺は感嘆を漏らした
「凄いですね・・・・」
本当に凄い・・・神様への信仰心が高いと素人の俺でも分かるくらいだ
関心している場合じゃないな
”困ったのう。これでは主様と話もできぬ”
「何が必要なんですか?俺で役に立てる事があればお手伝いしますよ?」
”ふむ・・実はのう・・ある神聖な酒と鈴が必要なのじゃが・・・”
鈴と酒・・・・まさか・・・まさかな・・・
でも偶然にしては出来すぎじゃないか?
「あの・・・ここに来る前に一人のお婆さんに鈴とお酒を頂いたんです
これで代わりになりませんか?」
俺が鞄から取り出すと彼女の顔色が変わった
”なんと!そそそそそれはよい気を纏っておる!十分じゃ!
後は・・・神楽鈴があればの・・・”
「俺持ってますよ。神楽鈴」
”主は本当に素晴らしい!これで完璧じゃ!”
俺は彼女の指示で御神酒と小さな二つの鈴を捧げて神楽鈴を彼女に手渡す
すると何処からか笛や太鼓の音が鳴り響いて来て彼女が舞を舞い始める
そんな幻想的な舞を見つめていると”シャン・・・シャン・・・”と鈴の音が鳴り響くと掛け軸から淡い光が
”主様、お久しぶりでございます”
”久しいのう・・・フム・・・この社の回りも随分穢れたものよのう”
”左様・・・ほんに嫌な気よのう・・”
俺は正座をして頭を床につけて頭を下げたまま声をかけられるまでその場で待つ
”のう・・そこな人の子はなんじゃ?”
”この者はここまで私を助けてくれたものでございます
捧げられた鈴や御神酒もこの者が用意してくださったのでございますよ”
”ほう・・・良き酒と良き鈴じゃ。組紐が赤と白とな・・・ほんに我らにふさわしい鈴じゃ”
”それに分を弁えておる・・・気に入ったぞ。面を上げよ”
俺はその声で顔を上げて真っ直ぐに彼女達を見つめて
「お許しありがとうございます
俺は森といいます。宜しくお願い致します」
この場合はなんて挨拶すれば正解なのか、俺には分からない
神職ではない俺にはこんな機会があるはずもなく正直戸惑ってます
”なんと!主は巫女でもなければ神職でもないのか!”
”面白いのう!”
”して・・そなたは何故この者に手を貸したのじゃ?”
「それは彼女が悪いものでは無いと分かっていましたし、ここの神社にも用事があったのです」
”用事とな?それはなんじゃ?申してみよ”
「はい。
実は俺はこの町で”狗神”が起こした事件について調べています
何人もの人々が呪いによって亡くなり、この神社の神主も亡くなりました」
”なんじゃと・・・・どういうことじゃ!亡くなったじゃと!”
”わらわ達が居ぬ間に・・なんと言うことじゃ
それに狗神じゃと!我らが見逃してやっていたと言うのにのう”
”それは危害を加えぬという条件でじゃったが・・そうか・・・ついに馬鹿を仕出かしたのぅ・・”
急に彼女達の周りの空気の温度が下がってヒヤリとした
”して、そなたは何が目的じゃ?”
「俺は、えっと・・昔でいう険非違使のような役職の人間です
警察官といいます
それで事件を調べていたのですが、狗神の呪いに辿り着きました
そしてこの狗神を封印もしくは殺す事が目的です」
”ほう・・・人であるお主があれを倒すと?”
”じゃがお主はその手段を持ってはおらぬであろう・・どのように殺すのじゃ?”
「実は俺と一緒に信頼できる”大神”の人間が来ています
彼と一緒に狗神をなんとかします
俺は力は無いですが、彼を手伝う事は出来ますので」
”ははははは、なるほど!主はほんに面白い!自身に力は無くとも力あるものと縁を結ぶか!”
”それに主の魂は面白い色をしておるのぅ・・ますます気に入った!狗神を狩るのにわらわも力をかしてやろう”
”ずるいのう!わらわも手伝うのじゃ!そこの細い筒を主に授けよう!お前、こやつに渡すのじゃ”
”畏まりました”
細い筒を二つ渡された・・・なんだろう?
”キュッ♪”
「管狐・・・・・」
”ほうほう!それが何か分かるとは!”
”そうじゃ。此は管狐。わらわ達の劵属じゃ、主に授けよう。可愛がるのじゃぞ!”
えええええええ・・・俺が頂いてもいいのか?
か・・可愛いけども・・
「宜しいんですか?(可愛いなぁ・・・・)
お前は瞳が緑かぁ・・じゃあ、翡翠かな?お前は・・綺麗な黄色・・琥珀だな」
”フフフフフ!のう、こやつ可愛いところがあるではないか”
”そうじゃのう。それに以外と名付けも洒落ておるではないか”
””そうじゃのう””
あ・・・・・・やばい、気が緩んでたぁぁぁ・・・
「あ・・・あの、すみません。この子達が可愛くてつい」
”ほほほほ、可愛いとな。よいよい。それとな・・わらわ達の願いを聞いては貰えぬか?”
「・・・俺が出来る範囲内であれば」
”ふむ、それはどうしてじゃ?”
「俺は出来ない事をお約束する事は出来ません
俺は俺の出来る事を出来る範囲でお聞きします」
”ほんにええ子じゃのう。そうじゃの~では逆に何が出来るのじゃ?”
”そうじゃ。聞きたいのう”
俺が出来る事か・・・・
いくつか考えはあるが確実に叶えられて神様達もこの神社にとっても良いことが一番だろうな
「俺が出来る事で神社も神様も幸せになるという事でしたら
この神社の神主を神様が選んだ人間に変える事ですかね
それでしたら確実に叶えられるでしょう」
”ほう・・確実にとな?どうしてそうはっきりと言えるのじゃ?”
「それは俺が”土御門”の人間に貸しがあるからですよ」
そう、貸しがあるのだ
ある日酒の席でべろべろに酔って倒れたやつを二日も介抱してやったのだ
しかもやつの恥ずかしい写真の処分など面倒くさい証拠隠滅もしたので貸しは十分だ
”それはそれは!あははははは凄いのう!あの土御門かぇ?”
”貸しがあるのでは聞かざる得ないのぅ♪では叶えて貰おうかのう!”
”わらわ達の願いも概ねお主の言ったこととほぼ変わらぬのでのぅ”
”そういえば主は名前を呼ばぬのう?何故じゃ?”
「それは・・名を軽々しく呼んではいけないからです
俺はその土御門の男から
”真名は人も妖も神も全てにおいて楔になりうる、だから軽々しく名乗っても呼んでもいけない
名とは存在そのものを表すものだから”と教えられたからです
ですから案内してくれた彼女にも名も聞かず、呼ぶこともしませんでした」
”そうじゃ!その通りじゃ!言葉とは言霊と同じ、すべての言葉には意味があるのじゃ”
”ではそろそろ、わらわ達が現世に居るのも難しくなってきたのう。後は頼むぞ”
”全ての仕事を片付けたのち、またここを訪れよ
それとの・・管狐の為にその酒は持っていくと良い”
”お前は御神酒の作り方や管狐の使役の仕方を教えておやり”
”はい”
そういうと光が消えて目の前には只の掛け軸が2枚掛かっている
”ふふふふ、主様に気に入られたようじゃの。
その子らを可愛がってくれると嬉しいのじゃ”
それから彼女から管狐の使役するための御神酒の作り方の書いてある巻物と赤い勾玉に小さい鈴を貰った
”では私はここまでです。どうかご無事でお戻りくださいね”
俺の額に柔らかい彼女の唇が触れとにこっと笑って消えていった
は??いいいいいいいいい今ききききききききすされたぁ!?
おおお落ち着け俺。きっとあれは呪いだ。こう・・・お守り的な?
”キュ?””キュウ?”
あ・・・・可愛い。癒される・・・
「今は危ないから筒に入っててね。翡翠・琥珀」
””キュッ!””
キリッ!とした顔で筒の中にしゅるっと入ると俺はその筒をジャケットのポケットの中に入れた
目的である稲荷の神様の謁見が出来たわけだけどこれでよかったのかな?
とにかく話は宿に帰ってから大神と相談しよう
あ・・・帰りに油揚げかって行こうかな。ついでにお稲荷さんも買ってくか
神社近くのスーパー前で運良くタクシーを拾い宿についた
「おかえりーどうだった?」
「ただいま。大神
こっちは運良くだけど両神様に会えたよ」
「え!!会えたの?しかも両・・・って事は・・・」
「そりゃ、ダキニ様とウカノミタマ様両方だよ」
「マジか・・凄いね。」
そうだ・・・この子ら出してあげなくちゃね
俺はいなり寿司と油揚げ数種類をテーブルに乗せて筒の蓋を開けた
「何してんの???え???油揚げ?」
「ほ~ら、好物の油揚げだよ~」
””キュキュゥゥ~♪♪”
可愛い鳴き声と共にしゅるしゅると管から出てきて小さな口でちょっとずつかじっていく
あ!そうだ!お酒も少しあげるんだった
小さなお猪口に酒を注いで二匹の前に置くと嬉しそうに指にキスしてくる
か・・・・・可愛い・・・・・・!!
「は?ええええええええええ!?管狐ぇ!?この管狐どうしたのさ?」
「貰った」
今何て?
貰った??
「だ・・・誰に?」
「神様に」