case2俺と犬神と狗神と(事件編)
皆さんどうも森です
俺が零係に配属されてから早数ヵ月が経ちました
早いって?そうですね・・・・本っっ当に色々ありましたよ
先ずは衝撃的だった初日だよ。初日。
思い出しても規格外というか想像していたよりも面白かったよなぁ、アレは
そうあれは約四ヶ月前の事、この課に関わってしまった俺は自分の世界が狭かったという事実に気がついた
そうして俺はこの零係へと自ら希望して移動した
が・・・
「やぁ!良く来たね!森くんに田中くん!」
やけに白々しく声を掛けてきたこの男はこの課を纏めてい御門清明
なんでも陰陽師らしい
らしいというのは俺がまだこの人の陰陽師らしい所を見たことがないからだ
そして笑顔が大変胡散臭い・・
それはさておきやけにテンションが高いな~この人は
「良く来たね・・じゃねぇよ。この零係への移動を進めたのはあんただろうがッ!」
俺は腹いせに清明の額にデコピンをかましてやる
「痛っ。もう・・・酷いな~森さんは
それではそんな森さんに我が零係についてお兄さんが詳しく説明してあげよう!」
じゃじゃ~ん!と子供っぽいリアクションをしながら何やら書類を取り出すとドヤ顔で書類を俺の前に差し出した
そんなドヤ顔されてもなぁ・・・
「え~っとね、先ずはこの零係の仕事内容については概ね昨日体験した通りのなんだけどね
それ以外にも過疎かが進んでいる地域での神事に関する手伝いや要所要所での大きな神事へのお手伝いも含まれているんだよ
大きな事件や明らかな変死死体が出なければ普段は雑事をこなしながらここの部屋で過ごす事が多いかな
でね、この課は呪いや妖怪に遭遇するリスクが大きいだろ?
と・・言うことでじゃじゃ~ん☆
我が零係には沢山の特権があるんだよ!」
そういって清明が指差した場所を素直に読むことにした
なになに・・・・・・・
”零係の愛情たっぷり手厚い特別サービスっ☆”
なんだ・・・このふざけたタイトル
ああ・・このふざけたタイトルを付けたのはアンタかッ!しかも確信犯・・
で?内容はまともなのか不安が残るが少し読んでみるか
あまり期待はしてないけどな
ではではサービス内容そのいちっ☆
零係は神事への参加で出張が多いため出張費に関しては別途支給及び宿泊先に関しても優遇されるよっ☆
因みに僕の実家がいくつも懇意にしている宿があるのでそこの場合の宿泊費用は免除なのだっ!
サービスそのにっ☆
危険が伴うため、常に色々なお守りやお札等の身を守る為のものがすべて無料支給されるよっ☆
それとおまけとして毎年お正月には家族や友人の分のお守りも貰えるよっ!お得だね!
そして今までのサービスは前菜でお弁当の中でも焼売とかちょっとしたおかず見たいなものだね~
メインのお肉的なものがあるのだよ。ふっふっふっ。
ではではメインにいってみよー!
サービスのメイン・・・それは
それは?なんだ?
それは!
じゃじゃーんっ☆妖怪や神社の巫女さんとのお見合いでっす!!
あっ。これはね~うちにとっても相手にとってもWinWinな関係になるんで心配ないよっ♪
いい子紹介しますっ☆
は?え・・・・・・えええええええ!
お見合いって・・・ずいぶん古風な・・・
まぁ・・・巫女さん
巫女さんとか・・・獣耳女子・・・うん、わ・・・悪くないな
はっ!?俺は今何を想像した!
そんな俺をにやにやした笑みを浮かべて見つめてくるコイツ
なんか、無償に腹立つな
「なぁ・・・上の二つはわかるんだけど、このお見合いって・・・」
「それもね、サービスだよ。
それにこれは相手の妖怪や巫女さんにとっても良いことなんだよ」
「どうしてだ?」
俺が聞きたいのは、何故お見合いが相手にとっても良いことなのかということだ
「それについてだけど、考えてもごらんよ
妖怪の子達については分かりやすいよ
この現世で生きていく為の手段として人間との婚姻、つまり契約することは特別なことだし
それに人間側は妖怪と同じ時間を生きられるようになり長生きできる
巫女さん達の方も妖怪や幽霊等色々と曰く付きの相手と関わる以上普通の男性との恋愛は望みが薄い
かといって同じ神職の男性とだと実家問題が立ちはだかるからね~」
実家問題?つまりは跡継ぎ的な事か?
「そうそう。それはあるよね~
どっちの実家継ぐんだ問題(笑)
特にさ巫女さんの中には跡継ぎとして実家を次ぐ子もいるわけ
だけど男の方がもし婿養子に入るのやだっていった場合はもう事件だよ。事件
最悪の場合実家同士も戦争状態。」
え?マジで!?
「靖明の言ってることは本当だよ~
なまじ巫女ってのは神様の声を聞ける貴重な人間な訳
だからこそ相手の家に嫁ぐっていう選択肢は消去法で最初から無い
その家独特の風習や神具は機密性の高いものであり、秘術に当たるものだ
それを持って嫁いで来いって言われたらねぇ~」
何となくわかってきた
流れとしてはおおよそこうだろう
何となく近くにあった紙に思い付いた事を書き込んでみた
①最初から相手の男が婿養子になること前提のお見合いをする女性に大抵の男は嫌がる
②そして男は妙なプライドのある生き物で婿養子を拒否して嫁いでこいと言う
俗にいう亭主関白もしくは嫁は嫁いでくるものという古い考えだな
③それはつまり実家で培った様々な知識という財産と神具という宝を持ってこちらに来いという事
という事は同時に実家の存続の危機が訪れる
④実家その提案に激怒
⑤破談
うん。こうだろうな
ああ!それでか・・・
つまり俺のような”妖怪や幽霊に抵抗が無く、そして柵がない男”
飛んで火に入る夏の虫ってことじゃねぇか!
「おお~!流石森くんだね!うんうん。察しがいいじゃないかい」
「うん。あれかな?刑事の勘?」
刑事の勘って・・・本来こんなことに使うわけねぇだろう
俺がそういう意味を込めてじー・・・と見つめてやるとテヘッっ☆と笑う清明
よし・・・後でなにかしよう
この兄弟はお茶目を通り越して悪ふざけじゃなかろうか
「理由はおおよそわかりましたが最後のサービス受けたらですが
これ、飛んで火に入る夏の虫じゃないですかね~」と遠回しに言ってみる
二人とも「そ・・そんな事はないよ?」「そ・・そうだね~」と視線が泳いでいる
何があったのかは想像したくないな~相当な目にあったんだろうか・・くわばらくわばら
で・・・そんな場所に俺をサービスと称して連れて行こうとしているわけだけが
まぁ、最初から悪いものだと決めつけてしまうのも良くないだろうし・・一度くらいは・・ね?
心の弱い人間だと思うなら思えばいいさ!
警察という仕事柄出会いも無いんだよ!
合コンに行けば女子どもも口では”刑事さんなんですか!?格好いいですね!”といいながらもいざ付き合おうとするとだ答えはNOだ
安定した収入は魅力的だが将来を見据えると明らかに不人気な職業だろうなと諦めてたからな
と、ある意味で衝撃的な出来事があったのだ
その説明を聞いたその後からは早速お仕事開始です
先ずは簡単な仕事からと言うことで神社の見回りや聞き込みから現世で普通に働いている妖怪からの近状の確認など
様々な雑用に始まり
山奥の天狗に会いに行ったり、川で河童のしかも女性の河童に届け物をしたりと色々な事はあった
俺も小暮同様にこの仕事にも馴れてきたぞ
まぁ色々な事を経験て現在に至るって感じだな
「何ぼーっとしてんのかな?」
「ああ・・すまん。色々と今までの事ちょっと思い出してただけだ」
「そっか。そんな所悪いけどこれから大神くんと一緒に仕事に行って貰うよ」
「俺をご指名ですか?」
「そうそう。今回は君が適任だね。
それと森くんも一緒に行って欲しいんだ
もし人員が必要になったら連絡くれれば白金を派遣するよ
で内容は現場に向かいながら大神くんに聞くといいよ」
と言う訳で俺はと大神は仕事に向かうことになった
とりあえず用意してある零係用の車に二人で乗り込んだ
俺が助手席に乗り運転は大神がするらしい
車を走らせると早速大神が仕事の話を始めた
「資料はこれ、目を通しながら話を聞いて貰いたい
今回の仕事はとある裕福な家の周辺で起きた変死事件だ
でね、何で俺が適任なのかというとだ
それはね、今回の変死した遺体の様子と何故か裕福な家のみが無事というこの二点が関係しているんだ」
確かに資料を読む限り大神の言っている内容の通りではあるな
しかし、このご遺体酷いな・・・全ての死体が首から上が存在していない
そして写真を良く見ると何か動物に噛み千切られたかのような傷跡が目についた
「なぁ・・・この死体だけど、獣にでも教われたのか?」と俺がいった瞬間ひどく驚いたようだ
「君はやっぱり勘が鋭いというか目の付け所が違うね
そう!俺が言いたかった変死した死体の注目して欲しかった所はまさにそこだよ
それはね、まさしく獣に頭を食われてしまった死体だよ」
俺はそれを聞いてごくりと唾を飲み込んだ
獣に襲われた?じゃあこれは本当に食われた時についたであろう”牙の痕”ってことか
と言うことは肉食系の獣か?そして資料の条件に当てはまるとしたら・・・
「まてよ・・裕福な家と獣・・・・”狗神”か!」
「そうそう!よくわかったね!もしかして勉強してくれてるの?
いいねぇ。やっぱり森さんはいいよ。うん。」
まさかネットや図書館に通ったりして得た知識が役に立つとは思わなかったが意外とやってみるもんだな
たしか狗神といえば術を行った家の人間を裕福にするだったか?
「まさか俺もネットや図書館で見た文献や妖怪に関する話の知識が役に立つとは思ってなかった
まぁ、少しは無いよりはマシ程度には思ってたけどな」
「そっか・・・でもそういう俺達の事を知ろうっていう気持ちは大事だと俺は思う
でね、話は戻るけど・・森くんはさ狗神の呪いについては何処まで知っている?」
「たしか狗神は呪い(まじない)じゃなくてどちらかというと見た感じでは呪術に近いと俺は思ったな
確か飢餓状態の犬の首を切り落として土の中に埋めてその埋めた土の上を歩いたりしてその霊を使役するってのと
犬の頭部だけだして土の中に埋めて飢餓状態にして餌に食いついた所を首を落とし、その頭を焼いて骨にして壺に入 れて祀るとその人間の願望を叶えるってやつだろ?
という事は今回の変死に関しては後者だろうな」
「ご明察。今回の件は狗神付きの家が原因だろうね
狗神という存在は憑依している家にとっては利益や幸運を運んでくれる善なる存在だろう
だけどね、これは一種の呪いだ
その家以外にとっては害ある只の呪いに過ぎないってことだよ
それにね狗神は神ってついてはいるもののその生体は妖怪に近い
狗神に憑かれた人間は嫉妬深い性格になり、死ぬ時には体の一部に犬歯の痕が付くとも言われている
そして今回通報というかこの話を持ってきたのは裕福な家の女が思いを寄せた男の妻の実家だ」
えっと・・・話を整理してみよう
まず事の発端は裕福な家こと犬上家の次女である結子が思いを寄せていた幼馴染みの男性こと裕二さんの妻である真子さんが自宅で首から上が無くなり遺体で発見された
その光景はあまりにも異様な光景だったそうだ
そして彼女の死後まもなくして結子さんとの縁談が持ち上がったという
なんというかこの結子という女性は普段から既婚者である裕二さんへの行為を隠そうとせずに日頃から家族ぐるみで迫っていたと・・・
その縁談の席で真子さんの死について家族以外の人間が知り得ない事を知っていたそうだ
それを不振に思った裕二さんは一人妻の死について調べていくうちに俺達零係にたどり着いたということのようだ
「狗神の呪いか・・・祝福を受けている家の人間にとっては幸運を運んでくれる神様ってことか
でも、この呪いが代々続いていると家庭すると一体何匹の罪の無い犬達が命を落としたんだろうか・・
それにこの犬上家以外にとっては災いの元でもあるんだろ?」
「そうだね。それにねこの呪いの怖いところは”蠱毒”と同じ原理の呪いと言うことだよ
同じ呪いが回数を重ねていき、その度に強い呪いへと変わっていく
という事はいずれは制御できなくなり犬上家とその周辺の人間の命が危うくなる
過ぎたる力はやがて必ず身を滅ぼす事になるという事は間違いない」
ある程度は予想していたがそうだよな・・・人知を越えた力は予想のつかない事件を生む
それは俺が今までこの零係で経験してきたじゃないか
「ということは、今回の仕事はその犬上家の捜査と禁術の取り締まりという所ですね」
「どうして禁術だとおもったんだい?」
「確か蠱毒を使った呪術は中国では死刑にあたるという記述もあっくらいだから・・相当危険な事だろ?
だから日本では禁術にあたるのかなと・・・」
「そうだね。確かに蠱毒そのものは禁術にあたると言えるけれど、そこから民間へと広まった狗神の呪いは禁術ではないんだ。だからこそ危険とも言えるんだよ
中途半端な知識でこの呪いを使ったり、軽い気持ちで手を出すとどういう事になるのか想像したくないね」
禁術じゃないのかよ
民間に派生した呪術ということは・・そもそも正しいやり方や術式どうかも不明なんだろな
つまりはその一族に伝わるおとぎ話や風習のようなものに近いのかもしれない
人伝に伝わるとゆうことは何処かで内容が歪められて正しい内容が伝わっているとは到底思えない
「禁術じゃないんですね。それにしても民間に伝わる呪いかぁ
なんでしょうね・・民間呪法?とでも言ったらいいんですかね?
怖いですよね
中途半端な知識や呪いほど怖いものは無いと俺は思います
あれです!こっくりさんがいい例じゃないですか」
実は一ヶ月前に受けた仕事では高校生が気軽な気持ちでこっくりさんをおこなって呪われたという事件があったのだ
こっくりさんを面白半分で行うものも少なくないのは確かだが、その時は場所もやった人間も悪かった
たまたま色々な条件が揃ってしまい不幸な事に呪術として成功してしまったのである
その事件を目の当たりにした俺としては人が安易に中途半端な知識で行ってはいけないと改めて思わされた
「君は本当に面白いね
そうやって呪術の危険性を良く理解してくれている
俺もそういう人間との仕事は安心してできるし、すごく助かるよ」
「俺は別にそんないいやつじゃねぇよ
ただ特別な力も無いし、俺は只の人間だから身を守る為にやっているだけだ
それに力が無いだけに余計に怖さを理解できるってだけだろう」
そう、俺は弱い人間だ
だから自分の身を守る為に沢山の知識も道具も揃える事に手を抜くことは無い
用心することに越したことはないと俺は思う
こうしてその後も犬上家についての噂話や近隣住民についての情報を頭の中に入れていく
俺と大神はお互いに意見交換や予定の擦り合わせをしていると目的の町へとたどり着いたのだ
車を降りてすぐに町の異様な雰囲気を感じた
俺も大神もこの町の人間じゃないからか方々から視線がグサグサと刺さる
町の住人の視線はあきらかに”外の人間だ”と言っているのがまるわかりだ
「とりあえず、ダメもとで聞き込み行きますか?」と大神
「そうだな」と俺
とりあえず話を聞こうと思ったのだが、声を掛けようとする度に避けられているんじゃ埒が明かない
そんな時俺の視界に揉めている男女が映った
女性の手を掴み無理矢理迫っているようだ
俺は彼女の方に歩いていき声を掛けた
「すまないが彼女の手を離して貰えないだろうか?」
「おっさん、誰だよ。邪魔すんな」
「おいおい、年上の大人に随分な言い草じゃないか。
それにね、彼女はこれから俺と約束があるんだよ」
俺が目配せすると意図がわかったのか
「はぁ?そんなわけねぇ「そうよ!私、彼と用事があるの」」
「な?言っただろ?
だから彼女の手離して貰えるよね?
もしこれ以上彼女に付きまとうなら俺が警察呼ぶよ」
「チッ・・・今日の所は引いてやるよ」
男は捨てぜりふを吐いて去っていき、十分離れたのを確認すると俺は事情を聞くべく彼女に声を掛けた
「助けて頂いてありがとうございます」
「いや、これはお兄さんのお仕事だからね。」
他の通行人には見えないようにコートで隠しながら彼女だけに警察手帳を見せた
なぜ彼女だけに見せたのかというとだ
こんな往来で堂々と男が女性に無理矢理迫っているのに誰も助ける様子を見せなかったのだ
だから俺は彼女だけに見せることにした
「詳しく話を聞きたいんだけど、どこか良いところあるかな?」
彼女は少し考えた後
「じゃあ・・私の家でいいですか?」
「お邪魔してもいいのかい?」
「はい。他はちょっと・・・」
彼女の様子からするとやはりこの町で何かが起きているのだろう
俺は彼女に同僚もいる事を伝えてから大神に連絡をした
すると数分後待ち合わせの場所に大神がやって来た
助けた彼女の名前は美波ちゃんというらしい
「美波ちゃん。こいつは俺の同僚で大神っていうんだ。」
「はじめまして美波ちゃん。俺は大神日向って言うんだ。よろしくね」
「はい。森さんも大神さんもよろしくお願いします」
美波ちゃんと彼女の家に向かう道中は好きな食べ物の話や何が好きなのかとか他愛のない話をしながら向かった
彼女の実家は・・・立派な日本家屋でした
中に案内されて居間に座って落ち着くと改めて何があったか話を聞くことにした