表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者より軍隊の方が使えることに気づいてしまった件  作者: 亜和鵶吾明
第1章:平和的交渉
18/76

平和的交渉10

 曰く、魔王軍がこの沈黙の森近辺まで進軍してくる少し前、フードを被った旅人がやってきて複数の村人と他愛ない会話をしていた。

 曰く、その会話のそれぞれは取るに足らないものだったが、それらを全て合わせて考えると、この村に於ける力関係や家族構成をほとんど正確に推測できるような内容だった。

 曰く、その翌日に石の肌を持つ羽の生えた猿のような見た目の魔物が空から現れ、村の要人やその血縁に当たる者を計11名連れ去った。

 曰く、その直後に例のフードを被った旅人が再び現れ、人質を解放する条件として、村付近に於けるデミス王国軍の動きを報告するよう命じられた。

 曰く、作物の収穫が終わった頃に再び現れたフードの男は、収穫した作物の殆どを持って行ってしまった。


 ――これが、ジャンが嗚咽混じりに語った一部始終であった。涙ながらに語るジャンに当てられたのか、その後ろで控える男達もさめざめとすすり泣いていた。


「そのフードの男は間違いなく魔王軍の手の者だ。要は、こいつらは命惜しさに国を売っていたのさ。これが知られれば、少なくとも長やそれに近い者達が、下手をすれば全員が処刑されるだろうな」

「村の事情は呑み込めたけどよ、お前はなんでこの村がこうなってるってわかったわけ?」

「徴税吏が行方不明になったことと、行商人から得たこの村が無事であるという情報を合わせて推測しただけだ。考えてもみろ、ここは最前線だったんだぞ? こんなところにある村が全く被害を受けていないのがまずおかしい。それこそ、敵と内通でもしていない限りはな」


 俺はじろりとジャンを見下ろす。ジャンは既に抵抗することを諦めたようで、床の一点を見つめて音も無く涙を流し続けていた。


「それで、食料はどれくらい残っている?」

「実は……お譲りできるほどには残っていません。かなり節約して村の全員がやっと冬を越せるかどうか」

「まあ、そんなところだろうな」

「何だって!?」


 扉を蹴破って入ってきた杉下が大声を上げた。どうやら外で盗み聞きしていたらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ