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勇者より軍隊の方が使えることに気づいてしまった件  作者: 亜和鵶吾明
第1章:平和的交渉
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平和的交渉7

「怪しい者ですが、命が惜しければ村長さんを呼んで頂けますか?」


 目的の村に着いた俺は、手近にいた村人にそのように声をかけた。薄汚れた服に武器を携えた俺達を見て山賊だとでも思ったのだろう。その村人は「ひっ!」と短い悲鳴を上げて一目散に逃げていった。


「逃げられてるけどいいのか?」

「いい。俺達が来たことが伝われば、遅かれ早かれ意志決定権を持った奴が出てくるだろう」

「略奪するなら最初から力尽くでやればいいじゃねえか」

「暴力の単体での行使は非効率だ。皆殺しはあくまで最終手段だな」


 俺達は遠巻きに向けられる警戒の眼差しを感じながら、無遠慮に村の奥へと歩を進めていく。そして、おそらく村の中央であろう、という開けた広場のような場所で足を止め、村の全体に響かせるつもりで声を張り上げた。


「聞け! 我々は魔王討伐戦にて勇者と肩を並べて戦った傭兵隊である! こちらに交戦の意志は無い! 幾らかの食料をお譲り頂ければすぐに退散する! 勿論、対価を支払う用意もある! 村長殿はどちらにおられるか!」


 村人が遠くでざわざわと顔を見合わせているのが見える。暫くすると、人混みをかき分けて中年の大男が現れた。髪は7割程度が白くなっているが、筋骨隆々で足腰もしっかりと立っている。彼は側にいた者に二言三言耳打ちすると、ただ1人でこちらに向かってきた。


「歓迎します、傭兵の皆さん。私はジャンという者で、村長なんて肩書きではないが、この村の代表のような立場にある。食料がご入り用とのことだが、いかほど必要なのだろうか?」

「交渉に応じて頂き感謝する。私のことは高木と呼んで頂ければ結構」


 俺がジャンに向かって右手を差し出すと、一瞬の警戒の後で彼は握手に応じた。


「立ち話もなんです。よろしければ場所を移して話がしたいが如何か?」

「それは――」

「お互いに聞かれたくない話もあるでしょう? あの戦争を運良く――そう、運良く生き抜いたんです。つまらないことで自分や家族を危険に晒したくはないはずだ」


 俺の提案を受けたジャンは、じっと俺の目を見つめた。その瞳孔が急に拡張されたのを俺は見て取った。握った右手の手首に当てておいた指先は、彼の心臓が危険を察知して鼓動を早めたことを報せてくれた。


 ――当たりだ。

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