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勇者より軍隊の方が使えることに気づいてしまった件  作者: 亜和鵶吾明
第1章:平和的交渉
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平和的交渉5

「西園寺君は脚力もスタミナも桁外れで、その気になれば100m走くらいの速度でフルマラソンを完走できるって言ってた。たぶん、誇張でもなんでもないと思う。でも、戦争の時は普通の速さで移動していた。僕達の移動速度に合わせてくれてたんだ」

「それが今とどう繋がる?」


 俺は焦れてきた。斉藤が正確に問題を捉え、ちゃんと解答に辿り着いていることを察してはいるが、如何せん無駄な思考が多い。質問に対する答は3秒程度でまとめてほしい。無論、自分ではできないが。


「僕達が狙っているのは、西園寺君達がいた場所から一番遠いところだ。ここに最速で到達するために最適なメンバー構成は、西園寺玲央単体だと思う。戦力的にも勇者が1人いるだけで事足りる。部隊を割いて全部の村を守るっていうところまでは考えつかなかったけど、それと合わせて考えると――」


 斉藤は大きく息を吸って吐いた。思考に夢中になって呼吸を忘れていたようだ。わかる、わかるぞその感覚。


「――僕らの目的の村に西園寺君が単体で、それ以外の2つの村に残りの人員を分けて向かわせると思う」

「素晴らしい。100点満点をあげよう」

「おいコラ、半分は俺が出した答えなんだから俺も100点だろ」

「いや俺も同じ答え出しただろ。他人の手柄を盗るなんてドロボー!」


 加藤が杉下にチョップをかましたのを皮切りに、2人は取っ組み合いを始めた。その内関節技の掛け合いになり、今では部隊の行軍から数十mほど遅れている。まあ、奴等なら放っておいても大丈夫だろう。


「というわけで、勇者が単体で追ってくると予想している。タイムリミットは推定で3時間。それまでに村から食料を得ることが今回の最低限の作戦目標だ。ここまでは理解したか?」


 振り返ると、全員が力強く頷いた。いつの間にか追いついていた加藤と杉下も、髪や服についた枯葉や泥を払い落としながら片手を挙げた。


「よろしい。詳細は追々伝えるが、まずは最重要項目である作戦名を伝えよう」

「出た、中二病乙」

「誰か杉下を簀巻きにして村まで引きずりたまえ」

「は? 何でお前がそんな偉そうに……ってかマジで縛るなお前等! 順応早すぎるだろおいコラ離せ離して離して下さい何でもしますからあぁぁぁぁ!」


 杉下は瞬く間に蓑虫のような状態になり、払ったばかりの枯葉や泥に再度塗れることとなった。部下が優秀で非常に助かる。


 俺は誰かの悪ノリで本当に簀巻きの状態で引きずられることになった杉下を横目で捉えて小さく笑いを噴き出し、その愉快さに触発されてノリノリで作戦名を宣言した。


「作戦名、オペレーション『ドア・イン・ザ・ボディ』! 状況を開始する!」

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