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勇者より軍隊の方が使えることに気づいてしまった件  作者: 亜和鵶吾明
プロローグ:別離
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別離

「俺は今日を以て別行動をとらせてもらう」


 俺はそう言って勇者部隊からの離脱を宣言した。

 王国から逆賊として唐突に指名手配され、命辛々逃げ果せた直後のことだった。


「何を言っているんだ高木! こんな時は皆で力を合わせないと――」

「力を合わせること自体は吝かでは無いが、であればお前には全面的にこちらの意志に従うか、さもなくば離隊してもらうぞ、西園寺」


 「なっ……!」っと言葉を詰まらせたこの男は西園寺玲央。元の世界にいた頃はハンサムで成績優秀、スポーツ万能で実家は金持ち……そして勿論女子の憧れの的という絵に描いたような主人公キャラだった。


 俺達は元蛍雪高校の2年生。今も向こうにいれば高校を卒業にしている頃だろうか。

 ある日、授業中に突然地震が来たと思ったら、次の瞬間には見知らぬ広間にいた。そこには見慣れない服装の者達もそれなりにいたが、それより見知った服装の、見知った者達の方が多かったように思う。その数、120余名。俺の所属する学年の全員が丸ごとこの広間に詰め込まれていた。


 「夢か? 頭でも打って気絶したのか?」なんて考えている内に、王様の側近っぽい人が勇者がどうの、魔王がどうのとどこかのRPGの筋書きみたいな話を語り始めた。彼が一通りの説明を追えると、まだ目を白黒させたままの俺達は兵士達に連れられて寮のような場所へ押し込められた。この際、男女を別室にする等の配慮は国側からは一切無かった。


 その翌日、神殿で行なった神託の儀で俺達に授けられたらしい加護を特定した。お察しの通り、この時に西園寺が勇者であることが明らかになった。他にも戦闘面、補助面で価値が高いとされている加護を与えられた者はいたが、その数は西園寺を含めても約120名中13名。勿論、俺はその中には入っていなかった。


 それから数ヶ月の訓練の後、俺達は「勇者部隊」として魔王討伐に送り出された。話せば長くなるので割愛するが、俺達は最後には魔王を討伐した。生存者は64名。あの熾烈かつ苛烈な強行軍の後でおよそ半数が生存していたのは奇跡であるように思える。


 王都へ凱旋した俺達は、一度は歓待を受け、豪華な食事でもてなされた。その時に王の口から出た言葉の中には、報奨金と爵位の授与を仄めかすものもあった。


 そして、それから7日が過ぎた今、何故か俺たちは沈黙の森と呼ばれる地に落ち延びている。

 国から指名手配を受け、追われる身となったのだ。


 何故こんなことにって?

 全部、全部この馬鹿勇者のせいだ!

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