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神業(マリオネット)  作者: 床間信生
☆第1章☆貿易都市(ルート)
88/206

1ー83★老婆


『どの辺が変だったんだい?分かる範囲で教えてくれないか』


トラボンがトーレに訪ねる。


『はい、先ず私が湖の近くで見つけた者を老婆と言った理由は二点あります。髪の毛が真っ白だったのと顔には遠くからでも分かるような深いシワが刻んであった事です。ただ、その割りには行動が若々しいと言うか…老人っぽくないような感じでした…』

『声とかは聞いたかい?』

『歩きながら何か独り言を喋ってはいたのですが、声を確認できるほど距離は近くなかったので…』

『湖で見かけて、どこまでついていったんだい?』

『湖からリエン山の方へ向かい林に入って真っ直ぐ行くと左側に崖ありまして、その辺りまでです』

『あの辺か…でも…あの辺って、何もない気がするんだけど…』

『私もそう思ってました。ですが崖を山沿いに沿って歩いて行くと洞窟のようなものがあって、老婆がその中に入っていったんです』

『洞窟?あんな場所に洞窟なんてあったんだ…』

『はい、私も初めて見ました』


(考えすぎなのか…何か嫌な予感がする…)


『その洞窟については、何か分かるかい?』

『一応、老婆が洞窟の中に入るのを見て、私も周囲を警戒しながら洞窟の方へ移動しました。ですが洞窟の入り口まで来ると、とんでもない悪臭が中からしてきたんです。とても耐えられるものじゃなかったので中に入るのは諦めて戻ることにしました』

『老婆が洞窟に入ったのは間違いないんだね?』

『はい、中に入ったのは確かに見ました!』

『その時いたのはトーレ一人だけ?』


ふと疑問に思いトーレに聞いてみたのだが…

彼女が若干鋭い目線を俺の方に向けてきた。

俺には全く身に覚えがない。

なぜなのかと少し考えると…

もしかして…トラボンとの会話を邪魔されたから怒っているのか?

そうは言っても会話には俺も参加しているのだが…

むしろトラボンとの会話は彼女が加わる前から俺はしている気がする。


『普段、都市の外に出る時はルーと一緒ですよ』


ニコッと笑ってトーレが答えてくれた。

どうやら怒ってなどいないようで、心の中で安堵する。


『そのルーって言う人は今呼べる?』

『えっ…、アイツを呼ぶんですか?』


トーレが困惑と言うか、徐に嫌な顔をしている。


『トーレ、ナカノ様をからかってはいけないよ!』

『すません…つい…』


トラボンの言葉に対してトーレが悪のりとでも言うように、目を瞑りながら頭を下げてきた。


『いや~、ナカノ様。トーレは、私の別邸の方で調教師(テイマー)としても仕事をしていまして、ルーと言うのは護衛兼足がわりに利用している一匹なので、都市の中に連れてくることはできないんです』

『へー、調教師(テイマー)ですか~。初めて聞きました。凄いんですね』

『戦闘型の調教(テイム)は非常に苦手なので…大したこと無いです。でも、それが何かあるんですか?』

『いや、単純に複数の目撃情報の方が何か分かるかもみたいに思ったから…』

『すいません。一人で…』

『いやいやいや!別に謝らなくていいから!後、もう少し聞きたいことあるんだけどいい?』

『はい、いいですよ』

『さっき、マークの入った袋が…とか言ってたよね?どこの商人かは分からないの?』

『あー、それですか。パッと見た感じロスロー商会のマークに似ていたんですけど…よく見ると違いました。』

『どんな風に違うか分かる?と言うか、むしろ羊皮紙にそのマークとか書ける?』

『羊皮紙にですか?いいですけど…その時の記憶なので、だいたいですよ?』


トーレがトラボンの方を見ている。

自分はどうすればいいのか返事を聞きたいようだ。


『トーレ、いいよ。席を立ってマークを書いてきてくれないか』

『分かりました。一度失礼します』



トーレが席を離れ、部屋には俺とトラボンの二人になった。


『ナカノ様、先程の老婆に何か思い当たることでも?』

『いや、別に確証とかはないですよ。ただ早めに調べた方がいいのかなとは何となく思うんですよ』

『何となく思うんですか…』

『それにトーレの話を聞く限りだと、袋のマークくらいしか手がかり無さそうですし…』

『袋のマークの方は、どうやって調べるつもりですか?』

『どうやってと言うか…、フェンに持っていって直接聞いてこようかと…どのみちフェンにはノルドの事で一度話をしに行かないといけないですからね』

『もしも詳細が分かったら、こちらの方にも教えてくれると言う事で宜しいでしょうか?』

『良いですよ。ただ…教えはしますけど、実際に動くかどうかは保証できないですよ。なにせ、こちらは素人三人パーティですから…』

『なるほど…では頼む時には、こちらでもそれ相応のナニカを用意しておきましょう』

『えっ…?』


俺の方としては、トラボンに「危ない橋は渡りたくない」と言うアピールをしたつもりだった。

だが、今のトラボンの言葉を聞く限り俺たちを動かすつもりがあるように感じる…。

まー、確かに自分の別邸の近くで物騒な問題が発生したかもしれないと聞いたら、先ずは問題の排除を優先するのは普通なのかもしれない。

ただ、その排除方法に俺は加わりたくはないのだが…


『先程のアスタロトでしたっけ?話してもらった相手ですが、老婆と関係あると思いますか?』

『ん~、どうでしょうか…一応、イーグルのみんなにも話しはしてみますけど…本当に老婆だとしたら本人ではないっぽいですけど…』

『そうなんですか?』

『俺の考えではないんですけどね』


ソフィアはアスタロトをガキと言っていた。

それに俺個人としては、今後アスタロトとは関係の無い人生を送りたいと思っている。

なので、その老婆とアスタロトの方で何かの関係が無いようにと心の中で必死に念じながら、俺はトーレがマークを書いて戻ってくるのを待っていた。

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