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神業(マリオネット)  作者: 床間信生
☆第1章☆貿易都市(ルート)
76/206

1ー71★失言

『いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?』


保安局からの事情聴取の翌日、俺は一人でトラボンの館に来ている。

館の前まで歩いて行くとゲノムと名乗るドワーフが入り口で対応してくれた。

本当はイーグルの面々の様子なども気になるところなので何か一言くらいとは思ったのだが…

当然ながらアンテロの話では俺が一番深刻な状況といった感じのようだった。

もちろん、それは俺も自覚している。

それに、どうやらソフィアが今回の件で動くらしく全員揃わないらしい。

俺の方としても話すなら、全員揃ったときの方がいいかなと思いトラボンの方へ行くことにした。


『はい、えーっと…今日は、トラボンさんにお話をしたいことがありまして』

『お話というのは、どういったことでしょうか?』


ここで、俺は一瞬考えてしまった。

従属のトゥリング、この言葉を出して話してもいいのか分からなかったからだ。

恐らく奴隷商の従業員ということで、知っているとは思う。

だが、変な誤解を招いたりしたくはない。


『すいません、俺…前にアンテロと来たの覚えてます?』

『はい、アンテロ様とですね。ナカノ様のことは覚えております。あの時はトーレが大変失礼をしてしまい申し訳ありませんでした』


ゲノムは俺のことを名前込みで覚えているようで、深々とお辞儀をしながら対応してくれた。

とは言っても、俺の方としてもトーレの事は記憶に残ることだっただけに、彼が覚えているのも納得できる。


『あっ…別に謝ってもらおうと思って今さら抗議に来たわけではないので、気にしないでください。でも今回、話したいことというのが、そのときに聞いたことと関係があることなのですけど…もしトラボンさんが居ないのであれば日を改めますが…』

『いえ、旦那様はいらっしゃいます。用件の方をお伝えしておきますので、どうぞ中の方でお待ちください』


俺は入り口から中に入り右側にある小部屋の方へ通された。




待つこと約十分少々といったところで、入り口とは別の側にある扉から音が聞こえる。


コンコン


扉開けた方がいいのかなと迷っていると勝手に開いた。

そして中からトラボンが顔を出す。


『どうもお待たせしてすいません』

『いえ、こちらこそ突然お伺いしてすいません』

『確か、ナカノ様と言えば…一昨日でしたか?何やら被害を受けたとか耳に入ってきたのですが…お体は大丈夫ですか?』

『あー、トラボンさんもご存じでしたか…一応、ポーションや魔法で治る程度の傷だったので大丈夫でした。それで話の本題に入りたいのですが…』

『失礼しました。そうですね。と言いますか、内容の方をゲノムから聞いた限りでは、内密にしたい内容もあるのですか?』

『あー、はい。できれば…』


そう俺が言って軽く頭を下げると、トラボンは右手を自分の右肩まで挙げると、そのまま指をパチンと弾いた。

一瞬トラボンの周りに青透明なドームが現れたと思ったら、次の瞬間みるみる内に大きくなり部屋の中を覆う。


『これで、この部屋の中でする会話については秘密が保たれます』

『えっ…!!これって…魔法?トラボンさんって魔法使えるんですか?』

『いやー、これは魔法ではなくスキルですよ。専門は奴隷商人とは言われていても実質的には普通の商人と代わりありません。商人は商売上のことで秘密厳守の契約を結ぶこともありますから』


トラボンは余裕のある表情で答えてくれる。

このスキルのことは結構気になっていたのだが、今日はそんなことを聞きに来たわけではない。

商人のスキルということであれば、フェンにでも聞くとしよう。


『なるほど。では本題というのはですね、アンテロに従属のトゥリングって言うのを教えたのはトラボンさんで間違いないですか?』

『はい、間違いないですよ』

『その従属のトゥリングって言うのを、俺にも詳しく教えてくれませんか?』

『えっ…どうしてですか?』


トラボンが若干驚いたという表情で俺に聞いてきた。


『えーっと、先程、被害は大丈夫かと聞いてきましたよね。その被害を受けたときに犯人が指輪って言っていたんです』

『指輪?』

『はい、それで被害が落ち着いて、みんなと色々と話していたんですが、どうやら指輪と言っていた人はトゥリングと指輪の区別をつかなかったのではないかという考えが出まして…』

『指輪と言っていた人?』


トラボンが眉間にシワを寄せて俺の方をじっと見ている。


(あっ…失言だ!!)


ここに来るまでの間、知っている人から被害のことは色々と聞かれた。

それは色々な人を巻き込んで消火活動ということになったのだから、仕方がないことだと思う。

だが人を巻き込んだのは消火活動でアスタロトとの戦闘ではない。

人が絡んでいるということは事情聴取でも言わなかった。

今回の被害はモンスターとの戦闘ということになっている。


『あっ…つい…すいません、この事は秘密でお願いします』

『はい、大丈夫ですよ。というか、そういうのも含めてスキルが役に立ちました。良かったです』

『ほんとですね』


『『アハハハ~』』


俺とトラボンは笑い声は揃った。

だが俺の笑い声はトラボンに比べて渇いて聞こえるのは気のせいだろうか…

とりあえず上手く誤魔化し通せる自信がないのと、トゥリングについての情報は余さず知っておきたい。

俺の独断になってしまうが、トラボンにアスタロトのことも隠さずに喋ることにした。


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