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神業(マリオネット)  作者: 床間信生
☆第1章☆貿易都市(ルート)
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1ー69★召喚魔法

『後…アンテロ…指輪が何とかって話していなかった?』

『はいぃ?指輪ですか?』

『えーっと、トラボンさんの事を話したとき…』

『あー、あれはトゥリングですね。指輪って手の指につけるやつですよね?トゥリングは足ですよ』


もう一つの気になること。

それはアスタロトが言っていた指輪の事だ。

あいつは忘れたと言っていたが…

もしかすると関係があることだったのだろうか…

これは俺のトラウマとも言えるような出来事だっただけに、あまり深くは進まないつもりだったのだが…


『もしかしたら…本人が知らなかったとか?』


ヘンリーがくいついてきた。


『それは、どういうことなのでしょうか?』


アンテロが不思議そうにヘンリーを見ている。


『多分、アンテロさんの言っているのって従属のトゥリングのことですよね?僕も貿易都市(ルート)に長く住んでいるし…実物を耳にしたことはありませんけど、こんな商売だし噂くらいは聞いたことくらいはありますよ』

『はい…そうかもしれませんが…従属のという名前は知らなくても…トゥリングというのは普通にあるものですし…』


アンテロの表情が、いまいちパッとしない。

だが、ヘンリーの方は言葉を続けていく。


『でも、知らない人もいると思いますよ!ね、ナカノさん!』

『えっ…?俺…?まー、いやっ!いや!!いやぁ!!!俺はトゥリングは知ってるから!この前、アンテロと話したときにもきちんとねっ…?アンテロ!そうだよね?』


俺は生まれてこの方、ファッションとかそういうのにはあまり関心を持ってこなかった。

それだけにアクセサリー系の話に疎いのは自覚している。

その自覚は異世界に来てからも変わりはない。

とは言っても幸いにして服や帽子など身に付けるものの事情は異世界でも、あまり変化がないと言うのは分かっている。

だが、トゥリングというものがあることぐらいは知っている…

アンテロとトゥリングのついての会話は前にもあった。

なので勿論、俺は知っているのだが…

みんなの俺を見る目線が若干冷たい…

もしかしたら…知らないとか思われているのだろうか…

アンテロには早めに助け船を出してほしかったのだが、一向に出てこない。

そんな中、誰よりも白い疑いの強い目を向けていたラゴスが大声で俺に言ってきた!


『なるほどのぅ、もしトゥリングという言葉を知らなかったとしたら指輪というかもしれん』


ラゴスが心の底から納得したという感じで首を上下に振っている。

顔も満面の笑みで俺の肩を軽く揺すりながら喋ってきた。

もしかしたらヘンリーは知っていると言っていたが、ラゴスの方は従属のトゥリングというものどころかトゥリングという言葉自体を知らないのかもしれない。

多分…ヘンリーもラゴスが知らないというのは気づいていたはずだ。

だが、変に話をこじらせるのは損と考えているのかもしれない。

ラゴスという粗を露にするよりは、俺に話題を被せてしまえと言う感じが犇々と伝わってきた。


真実を知っているはずのアンテロだが、俺を見る視線が若干冷たい。

ラゴスの言葉に惑わされて、真実を見失っているのだろうか…

もしくは俺を犠牲にした方が話の本題に早く進める!とか考えているのか…

何となくなのだが後者という感じがしてならない。

もはや俺だけではどうもできないので、俺はここで話題を変えたいなと思っているとヘンリーが再び口を開く。


『ちなみにアスタロトというのは年齢はどのくらいかわかりますか?』

『全身フードと仮面を被っていたから声の感じしかわからないけど…多分…少年かなって感じはしました…』

『恐らくって言うか…あれはガキだね!』


アスタロトと対面したのは俺とソフィアの二人だけ。

どちらも仮面越しなので顔は見たことない。

分かるのはおよその背丈と声くらいのものだろう。

確信ないとは言え、二人の意見が揃った形になる。


『ん~…子供か~子供となるとな~』


今まで歯切れよく自分の考えを喋っていたヘンリーの表情が途端に曇り出した。


『どうしたんですか?何か思い当たる節があるとかですか?』


俺はヘンリーの明らかな態度の代わり具合が気になる。


『いや~、子供なんだよね…?それだとちょっとね~』

『子供だとダメなこととかあるんですか?』

『多分、さっき召喚悪魔ってアタシが言ったからだと思うよ』

『ソフィアさん、どういうことですか?』

『召喚魔法って言うのは、普通の魔法やスキルとかとは勝手が違うんだよ。例えばアンタがスキルを使って失敗したことはあるかい?』

『はい、あります』

『どうなった?』

『最初の頃、アイテム運びの仕事で無理して気分悪くなって、フラフラしたことあります…』

『それは精神が減りすぎちまったからだね。通常の魔法も似たような症状に襲われちまうことがあるんだよ。まー、身の丈以上に頑張りすぎるなってことだね』

『はい、でも召喚魔法の場合は違うんですか?』

『召喚魔法って言うのは、簡単に言うと自分の魔力を餌にして何かを呼び寄せることを言うんだよ。それには器が必要になるのさ。悪魔の樹(デビルツリー)の場合は悪魔を樹という器に閉じ込めたってことになるんだよ。器に入れとかないと制御できないからね。それで召喚魔法の場合は一口に失敗と言ってもパターンがあってね』

『失敗に種類?』

『そうさ、失敗の理由は大きく自身の魔力と器による問題に分かれるんだよ。先ず自分の魔力が少なくて召喚できなかった場合は、通常の魔法と同じ感じになる』

『あー、なるほど。それは何となく分かります』

『次に召喚の方が成功だけど器に問題ってことがあるんだよ』

『器が耐えきれないとかですか?』

『その可能性もあるね。後、召喚したモンスターによっては器を拒否とか、色々な場合が考えられるよ』

『えっ…拒否?その場合…どうなるんですか?』

『多くの場合は、召喚者本人に責任をとらされるのは間違いがないんだけどね…でもね、それで終わりになるとは限らないよね』

『どういうことですか?』

『呼び出すヤツの多くは元に戻す方法を知らないのさ』

『悪魔の世界から、こっちの世界に召喚されて悪魔はこっちの世界にそのままってことですか?さっき器の中に入れないと制御できないって言ってましたよね…?』

『おっ…アンタ、さすがだね~。良いとこに気づくじゃないの。その辺りも聞きたいかい?』

『いや、その辺りはまた今度で!でも、そんな難しい魔法ってことは、子供だと使えない場合がほとんどってことですよね?だからヘンリーさんも、子供だと…って言ってるんですよね?』


俺は全力で話を戻した。

本能が、ここから先の領域には踏み込むなと伝えてきたからだ。

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