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神業(マリオネット)  作者: 床間信生
☆第1章☆貿易都市(ルート)
56/206

1ー51★擬態

各自行動を開始すると同時に、ヘンリーとラゴスの二人は目標となる木に対して右側に半楕円を描くような軌跡で走り出す。

囮となるようにわざと自分達が見つかりやすいようにしているのだろう。

対して俺たちは現在位置から木とのラインを垂直にとったときに左やや後方の辺りに大きな岩があるのを発見した。

距離にするとおよそ280位に思える。

魔法での遠隔攻撃を行う場合、距離が遠いのか近いのか分からないが先ずは目指すことにした。

本来であれば、移動中は余計なことは考えない方が正しいと思う。

普段の討伐であれば、余計なことは考えずに一心不乱にモンスターに一撃を加えるような戦い方を心掛けている。

だが、今回はいつものようにソフィアからの情報ではなく、アンテロからの情報だ。

何処までの信憑性なのかも分からないので、全員が周囲を確かめるように進んでいる。

本来なら俺も同じように周囲を警戒して進めばよかったのだが、俺は周囲の警戒以上にアンテロのことが心配になっていた。


俺は以前に一度だけアンテロのカードを見たことがある。

その時に気になったのが、アンテロのボーナススキルである臆病者の知恵(ラビットアビリティ)の効果だ。

あの時は意味も実感も沸いていなかった為、単純に兎っぽい能力とだけ思っていたはずだし言っていると思う。

だとするとアンテロのスキルだけに、かなり信憑性は高いはずだ。

もしかすると今後、エルメダと俺、アンテロの三人でパーティを組んでいくのも可能なのかもしれない。

だとすると、あの時のアンテロの表情や行動などはただ事ならない雰囲気が感じられる。


(もしかすると、とんでもないモンスターがいるのでは…)


俺は緊張と焦りを感じながらもなるべく表には出さないように行動することにした。

大きな岩間までたどり着き、モンスターがいると思われる木を後方から見てみる。

木の正面からはヘンリーとラゴスは武器を構えながら視線を上下左右に動かし周囲を警戒していた。

俺もどの辺りにモンスターがいるのか気になるので、周囲を見てみるのだが全くそれらしい影が見つけられない。

変だなとは思いつつ俺は一瞬だが気が緩んでしまい自分の足元に小動物らしき影があるのを見落としていた。

何気なく踏み出した右足で、小動物を蹴ってしまったのだ。

小動物の方も何が起きたのかビックリしたのだろう。


プギアァァーーーー


およそ小動物とは思えないような、けたたましい叫びというか鳴き声が辺り一体にこだましたのである。

ヘンリーとラゴスだけではなく、俺の前にいるエルメダまでもが俺を一斉に見た。

俺はこの緊迫した状況下で何をやっているのだ…

全くもって穴があったら入りたいと言うほどの恥ずかしさを感じ思わず下を向いてしまったのだが…

俺の後方にいたソフィアだけが違う行動をとったのである。


『そこの右端の木!動いたぁぁぁ!!!!!』


小動物に負けないくらいの大きな声で叫び1本の木を指差している。

木はヘンリーとラゴスがいる位置を正面とすると、そこから三角形を描くように3本確認できた。

ソフィアが指差した右端の木と言うのは俺たちとは正反対の位置にいるヘンリーとラゴスの方からは左後ろの位置にある木のはずだ。

俺も慌ててソフィアの叫んだ木を探そうと上を見てみた。

その木は全長8m以上はあるように思え、上から3m近いラインまでが緑の葉でギッシリ覆われている。 

俺は木が動いたということは葉が繁って中が見えないところに誰かが隠れていると思った。

何があっても絶対に見過ごさない覚悟で木の上段から視線を外さないでいると…


『ナカノさん!危ない!』


エルメダが大声をあげイキナリ俺に抱きつくような、タックルのような一撃を加えてきた。

突然の出来事だっただけに俺はどうすることも出来ずにエルメダの一撃を浴びて体勢を思いっきり崩す。

そして体勢と一緒に視線も崩れ、その崩れた視線の先には木の棒?

いや…木製の細いドリルのようなものが地面から延びてきたのだ。

恐らく…あれは木の根っこなのだろう…

と言うことはソフィアの木が動いたという言葉。

あれは木そのものが動いたということなのだろう!

誰かが木に隠れていたのではない。

木そのものがモンスターなのだ。


『ヤバイ!悪魔の樹(デビルツリー)だ!』


ヘンリーが俺とエルメダ、ソフィアのいる方に向かって叫んだ。


(もしかして…これ…擬態というやつか?)


俺とエルメダ、ソフィアは身構えながら周囲を再び見渡した。

アンテロはモンスターが4匹と言っていたからだ。

そうしたら木の葉の隙間から一羽の青い鳥が顔を出しているのが見えた。


悪魔の樹(デビルツリー)氷鳥(アイスバード)かい…全く面倒な組み合わせだね…』


俺の後ろのソフィアが、舌打ちをしながら呟いた。


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