80話 異世界にて7
小柄な男に何故か気に入られて。
「話していくうちにあなた達が悪い人に感じなくなっただけです。見た目が行商っぽいですし、多分ラビィの作る細工が目当てなんですよね?」
「そうじゃないかもしれないですよ?ラビィさんを拐いに来た可能性だってありますよね?」
「うーん・・・・・・勘ですかね。自分が倒れてもラビィを守ってくれる人が居ますし、誘拐する気なら外で襲った方が早いですし、わざわざ賑やかになってくるこの時間帯に店には来ないでしょ?」
それを聞くと男は手を叩き笑いだす。
「いいですね。うんいいですね。旦那さん。私は旦那さんのことが気に入りました。」
懐から銅のプレートを手渡してくるので受け取り見てみる。細かい細工と名前が刻まれている。
「申し遅れました。私の名前はシャルル・ゴールド。行商を生業としています。旦那と戦ったのは元傭兵のリサと言います。今後ともよろしくお願いします。そのプレートがあれば私のギルドの証になりますので通行書だったり商品の購入が出来ますのでよかったら使ってください」
お金を払おうとしたがラビィとの繋がりを潰さないでくれたお礼と言ってお金は受け取らなかった。商人のプライドというものらしい。何でもラビィの作る細工品はかなりの高値で市場に出回るらしい。その上本人はあまりお金に興味はなく気が乗らないと細工をしないので更に価格が上がるようだ。
「ラビィ、凄いんだな」
頭を撫でると小さい体を揺らしながら嬉しそうに甘えてくる。
「ガリィも凄い。だから撫でろ」
怒らせると機嫌を直すのが大変なので頭を同じように撫でる。二人を撫で終えてプレートを見ているとラビィがプレートを見せてほしいと言われたので手渡す。プレートをじっくり見た後に加工していいか?と尋ねてくる。貰い物なので断ろうとしたがシャルルさんが『是非是非』とちゃっかり自分のプレートも渡す。
さてはこれが狙いでもあったのだろうか。ラビィがお店の隅にある作業スペースで作業を開始する。一度作業に入ると何を言っても反応が無くなる。まるで計さんを見ているようだ。
「旦那どうですか、私と一緒に行商の旅をしてみませんか?」
「お言葉は嬉しいけど俺にその気はないよ。お店を経営することでいっぱいいっぱいだよ」
頭を掻きながら答えるとそうですかと残念そうに答える。
「できた」
ラビィが耳を揺らしながらプレートを俺とシャルルさんに渡す。先程貰ったものとは思えないほど綺麗な細工と研磨がされて別物のように感じた。シャルルさんは本当に嬉しそうにそれを見つめて大切そうに懐にしまう。時計を見ると葉君がもう家に居てもいい時間だと分かる。ガリィ達に挨拶して山田さんに声をかけて現実の世界に戻る為に森へと向かう。
葉君とお店のことをしっかりと話さないといけない。避けて通ることはできるがそれではお互いの為にならないだろうし葉君は絶対に無理をする。それだけは避けないといけない。重い気持ちに足取りも重くなった。
ゆっくりのんびり更新します。




