70話 予感(葉side)
少しずつ変わっていく気持ち。
『冷めた塩パン 口に入れて・・・・・・』
部屋に目覚ましの音楽が鳴り響く。最近ハマっているアニメシンガーの曲を目覚まし変わりに流している。ゆっくりと意識が覚醒はしていくが外の気温が下がってきたせいで布団の温かさから離れるのがなかなか苦しい。
3回目の布団から出るという意識に体を布団から出してパジャマ姿のまま下に降りていく。
ふふっ・・・・・・
顔を洗いながら鏡ににやけた表情が映る。どうやら自然と笑顔が出てしまうようだ。仕方ないよね、だって今日は良いことがあるし。朝ごはんを作りながら大兄が帰ってくるのをのんびり待っていると玄関の開く音がする。タオルを持って玄関に向かうと日課のランニングから戻った大兄が靴を脱いでいた。
「おはよう大兄」
「おはよう葉君」
大兄は汗臭いからと言ってタオルだけ受け取るとそのままお風呂場に向かう。玄関に残った大兄の汗の匂いを無意識に嗅いでぽーっとして壁にもたれる。
はぁ・・・・・・
ダメダメだ・・・・・・
何だかおかしい・・・・・・
週末の買い物で鈴さんの大兄に対する反応を見て何だか胸がざわついた。
大兄を見る目
大兄と話す時の表情
大兄に触られた時の反応
あれは僕が口に出しては言えない気持ちと多分一緒だと思う・・・・・・
鈴さんは大兄のことが大好きだ。
鈴さんは問題ない。付き合っている人が居るかは分からないけど結婚している分けではない。だけど、僕は違う。奏さんという相手が居るのにこんな気持ちになってしまっている。奏さんも大兄も自分にとっては大事な人だ。二人が居なかったら今の自分は居なかったかもしれない。着替えとタオルを置くためにお風呂場に向かう。
「大兄、着替えとタオル置いておくね」
「ありがとう葉君」
シャワーの音に紛れ大兄の声が聞こえる。洗濯物かごに大兄の衣類と先程、汗を拭いていたタオルが入れてあるのが見える。
くっ・・・・・・
脱衣場に唾を飲み込む音が響く。だめだこれは・・・・・・やってはだめなやつだ。首を振りながら洗濯かごに入った衣服を洗濯機の中に入れてスイッチを押す。
洗濯機が動くのを確認してリビングに戻って壁にもたれ息を整える。だめだ、今とってもダメなことをしようとした。自分の頬を叩いて机に料理を並べて椅子に座り大兄が来るのを待つ。テレビ番組の映像も音も全く情報として入って込なかった。
ゆっくりのんびり更新します。