68話 異世界にて
勉強をする為に異世界へ。
「それはお土産ですか?」
「まぁ、そんな所です。マスターにお願いされていまして」
待ち合わせしていたお店の前にやってきた山田さんが袋にいっぱいのお酒を見て質問してくる。マスターに店の経営とお酒の事を聞く条件として頼まれたものを持っていくことになっている。お店の中に入って2階に続く階段を上り異世界に続く扉を開ける。扉を開けた瞬間に外の気温とは違い暖かい空気が流れる。むしろ暑いくらいだ。上着を脱いで腰に巻き付けて村に向かい歩いていく。山田さんは相変わらずスーツ姿だが汗ひとつかかないで前を歩いている。特殊な鍛え方でもしているのだろうか。
マスターが暮らしている村が見えてくる。まだ数回しか来ていないが村の人達はとても友好的に接してくれる。村人が移動用に大きなダチョウのような獣を飼育しているのだがその獣でさえ人見知りしないのかなついてくれた。まぁ、餌を一緒に取りにいったのがよかったのだろうか。
「あっ、大だ大だ!!」
「おはよう、ガリィ」
いつものように背中に抱きついて甘えてくる。ガリィはこの村に来るときには必ず出迎えてくれる。基本的には常に背中に乗って、村の事や外に出たときは外のことを教えてくれる。言ってみたらこの世界の教科書兼先生のような感じだ。見た目は可愛らしい女の子にしか見えないが実際は自分の2倍は生きているらしい。
「プルプル♪」
獣が甘えたように擦り寄ってくる。『プルプル』と鳴くのでプルプルという安易な名前だが、憎めない見た目がその名前でも違和感を消し去る。体長は2メートル程でダチョウに似ている。足が4本生えていてどの足も筋肉がしっかりしているので自分も乗せて走ってくれる。スピードをかなり出せるのでバランスを取るのが難しいが、この世界での移動手段としての一つなので訓練していく必要があるのかもしれない。お土産として持ってきた『さきいか』をあげると、勢いよく食べ始める。どうやらお酒のおつまみが好きなようで美味しそうに食べる姿を見たくてマスターの注文とは別に買ってくる。
「なぁ大、プルプルばっかりずるいぞ。俺も食べるぞ」
「ガリィの分もあるから、喧嘩しない」
背中に乗ったままで口を開けるので口にさきいかを運ぶ。いつの間にか自然となってしまったが先生には逆らえない。マスターの待っているお店に入っていくとグラスを磨いているマスターがいた。性格には癖のある人だが、仕事をしている姿を見ていると勉強になる所はいっぱいある。頼まれていたお酒を渡し今日の勉強が始まる。
ゆっくりのんびり更新します。




