57話 商店街にてその7
電車を降りると当たり前のように階段があった。
電車の中で葉君の機嫌は直せずその理由も教えてもらえず、鈴君には自分の気持ちも知らないでからかわれ、葉君が怒っている理由を知っているらしいがそれも教えてくれなかった。常々情けない自分が嫌になる。ただ情けない話だが一番気になっているのは鈴君のスカートの中身だった。言い訳させてもらえるといやらしい意味で気にしているわけではない。断じて違う。
とりあえず商店街についたら下着屋さんに行って下着を買うことにしよう。しかし、男性用か女性用の下着のどちらを買えばいいのだろうか?普段使うことも考えたら男性用の下着を買うのが正しいはずだが、鈴君の今の格好はどう見ても女性だ。そんな鈴君に男性用の下着を買ってあげるのはかなりおかしい・・・・・・しかし女性用の下着を買ったとして今後使うことなんてあるだろうか?
そんな考えをしているうちに電車は目的の商店街付近の駅へと到着する。電車から降りて出口へと続く通路を見る。そうだ当然のように階段がある。先程あれだけ神経を使った階段だ。
何か良い方法は・・・・・・
思いついた!!!!!!
「大兄、どうしたの行くよ? 」
「ふふっ、そうっすよ、いくっすよ♪」
鈴君に近づいてしゃがんでお姫様抱っこで抱き上げる。
「鈴君、後で骨を折られても殺されても文句は言わない、だから我慢して」
「ふぇ!!!!!!」
抱き上げた鈴君は羽のように軽かった。ちゃんと食べているか心配なほどだ。素早く登り鈴君を降ろして階段を降りる。そこには完全に瞳に光が無くなった葉君がふらふらと立ちながらこちらを見つめていた。包丁を持っていたら間違いなく刺されている。そんな殺意を感じた。
「ねぇ・・・・・・大兄・・・・・・説明してくれるよね? 」
「ごめん、俺からは何にも言えないんだ。だから俺に出来ることはお互いに同じことをするってことだけだ。鈴君にもいったけど、後で殺されても文句を言わないから我慢してくれ」
そう言って葉君を持ち上げると鈴君同様に羽のように軽かった。
「大兄のそういうところ本当にずるい、それに何この胸板、ダイヤモンド?」
ぼそぼそと呟く葉君に何を言っているか聞いても教えてくれなかった。階段を上り終えて改札口を抜けて地上に続く階段をまた二人ともお姫様抱っこで運んだのは言うまでもない。
ゆっくりのんびり更新します。