55話 商店街にて5
何故だか葉君が不機嫌で。
「大兄、どうしたの乗り遅れるよ」
葉君にせかされるが、どうにも鈴君の言っていた言葉が頭をよぎる。鈴君は鈴君で階段を登るのをついていく自分をクスクス笑いながら見ている。
心配のし過ぎかもしれないが鈴君のスカートの中を覗かれないように少し後ろを体で隠すようについていく。見方によっては俺がスカートの中を覗こうとしているように見えるかもしれないが、誰かに覗かれるよりは職質された方がいい。何か良い方法があればいいのだが。
冷や汗をかきながら階段を登り終えると間もなく電車が来る所だった。
「どうしたんっすか大さん? 何かあったんすか? 」
人の気も知らないで、小悪魔のようにクスクス笑う鈴君は残念ながら可愛いくて何も言えなかった。
到着した電車に乗り込むと葉君が何故か不機嫌そうにしていた。気のせいかもしれないが声をかける。
「あの、葉君、何だか怒ってない? 」
「全然怒ってない」
そう言って頬を少し膨らませて目を合わせてくれない。うーん、困った、何で怒っているか全く分からない。
「ごめん、葉君、悪いことをしたなら謝るよ。待ち合わせで遅くなったこと? それとも階段を登るのが遅くて電車に乗り遅れそうになったこと? 」
「むぅ、全然違う。大兄はそういう所、本当にだめ」
ふぅ・・・・・・困ったな。いつもなら理由を教えてくれるんだけど、今日はなぜか教えてくれない。過去の経験から考えるとだいたいこういう時は何かやってしまった時だ。ただ考えても分からないし聞いても教えてくれない。
「ふふっ、だめだめっすね大さん。そんなんじゃ彼女できないっすよ♪」
鈴君がにやにや笑いながらこちらの様子を見ている。どうやら鈴君は理由が分かっているようだ。鈴君の言うように彼女ができないのも仕方ないのかもしれない。
「はぁ・・・・・・」
深く溜め息をつきながら頭を掻く。
「まぁ、大さんはもっと自信を持った方がいいっすよ。実は相手から告白されてるって可能性もあるっすから」
「いや、それはないよ」
自信を持って答えると今度は鈴君と何故だか葉君も溜め息をつく。
「まぁ、それも大さんの良い所っすかね。まぁ最悪、彼女が出来なかったら僕と付き合えばいいっすよ♪」
そういう鈴君の肩に手を置いてしゃがみ目を見つめて伝える。
「ふぇ・・・・・・」
「鈴君みたいに可愛い子が言ったら勘違いする人が出てくるから冗談でも言ったらだめだよ」
そう言って立ち上がると葉君の瞳から少し光が消えているように見えた。また何かしたみたいだが分からない。鈴君なら分かるかと思って聞こうと視線を向けたがぽーっとしていた。おっさんが顔を近づけて話したのが嫌だったのだろうか、後で謝らないといけない。
そう思った時に電車は目的の駅に到着した。
ゆっくりのんびり更新します。




