43話 寒気
殺意を感じる葉君に正直に今日あったことを伝える。
気のせいかもしれないが葉君の瞳からいつもきらきらと感じている光が無くなり、温度の無くなった瞳でこちらを見つめてくる。
何だろうか・・・・・・悪いことをしているつもりは無いが下手なことを言えば殺されてしまうのではないだろうか、そう感じる程の殺意を葉君から感じている。葉君からこのような反応をされたことがないので息が苦しくなる。
そして直感する・・・・・・
正直に答えるべきだ。そう俺の心が伝えている。信じてくれるかは分からないが、今日あった事をありのまま伝える。
経営予定のお店を見に行ったこと。
山田さんと一緒に異世界に行ったこと。
異世界で前のお店の主人に会ったこと。
そして異世界に行くにあたり指輪を山田さんから貰ったこと。
大切な相手を許可も無く葉君にしてしまったこと。
最後に勝手に葉君を恋人のように、山田さんや異世界の住人に伝えてしまったことを土下座して謝る。結婚しているだけでなく、同姓のしかもおっさんに嘘とはいえ恋人と紹介されて気分がいいわけがない。どんな攻撃を受けても全てを受け止めるつもりで土下座の体勢で待っているが、足での攻撃や言葉すらなかった。呆れてしまって何も言えないのだろうか?
葉君の姿を確認しようと顔を上げると、顔を真っ赤にしてぼーっとしている姿が目に入った。想像と違う反応に戸惑う。
んっ・・・・・・どういう反応だ?
先程まで感じていた殺意を感じないので怒ってはいないと思うのだが。
「大兄と・・・・・・恋人・・・・・・まり・・・・・・思い・・・・・・子供は2人」
葉君が顔を赤くしたままで悶えながらぶつぶつと呟いている。体調が悪いのだろうかと心配して肩に手を置いて顔を近づける。
「葉君、大丈夫? 」
「ふぁ・・・・・・ふぁぃい・・・・・・大兄と結婚します」
んっ・・・・・・? 結婚?
そして、予定調和のように部屋の扉が開く
「今日は早く帰れたよ葉きゅん♪」
部屋の様子は、メイド姿の可愛らしい子に大型のおっさんが肩に手を置き逃げられないようにして顔を近づけている。可愛らしいメイドの子は顔を赤くして少し涙目・・・・・・
うん、言い訳できる要素一つも無し。状況証拠も揃ってる。
俺は葉君の肩から手を離し奏の前で正座する。奏の手と足が体中に飛んでくる。そして俺の耐久力が今日も上がっていく。
ゆっくりのんびり更新します。