42話 帰宅中の寄り道
現実の世界に戻ってきて主人のリストを見ながらお酒を購入していると李音君と出会った。
山田さんと別れて商店街を歩いている。いつの間にか外は暗くなっていて少し肌寒くなっている。商店街の酒屋が集まる場所に向かって歩いていると、朝とは違い仕事終わりの人が増えてきて他の通りに比べて賑やかになってきた。お酒は好きだが、ビールやチューハイ以外はほとんど飲まないので、酒屋に並んだ世界中のお酒の名前や飲み方、度数などを見て自分の無知さを認識する。葉君はお酒が詳しそうではないので自分が勉強しないといけないと再度認識しながらお店をまわった。
リストのお酒は簡単に見つかった。今後の為にも主人にもっていく分と勉強の為に、普段は飲まないお酒などを購入して帰ることにした。
「あれぇ、ホブマ師匠じゃないですかぁ♪」
後ろから抱きつかれたので振り返るとそこには李音君が抱きついていた。周囲から慣れてしまった殺意の視線を浴びながら声をかける。
「李音君、いきなり抱きつくのは止めてくれないかな? 」
「何ですかぁ、もしかして興奮してるんですかぁ? 変態ですねぇホブマ師匠は♪」
李音君の今日の服装は、セーターにミニスカートに黒タイツを履いて髪は三つ編みで、男性と知っていても女性と勘違いしてしまう感じだった。本人がそれを知っていてやっているのが、たちが悪い気がするのだが。
「もう少ししたら服が完成するので取りに来てくださいね」
「値段っていくらくらい? 」
「にゃははぁ、お姉ちゃんは気に入った服を作る時はお金は取らないから大丈夫だと思いますよぉ。服を着てポーズを取ってあげればそれだけで喜ぶと思いますよぉ♪」
何だか悪い気がするが計さんは変に頑固な所があるように感じたから李音君の言う通りなんだろう。李音君に別れをつげて電車に乗り家へと帰る。
家に着くと玄関からすでにいい匂いが漂っていた。いつものように葉君がお風呂を沸かして可愛いエプロン姿で料理を作ってくれているのだろう。感謝をしながらリビングに向かうと予想通り葉君が料理をしていた。ただいつもと違う所はバイト先で着ていたふりふりのメイド服を着ていたことぐらいだろうか・・・・・・
「おかえり大兄」
いつものように笑顔で声を掛けてきたと思ったが急に表情が変わる。
んっ・・・・・・どうしたのだろう?
いつもとは違う感じに少し戸惑う。葉君が無言で近づいてきて手を掴み指輪を触りながら聞いてきた。
「大兄・・・・・・これ・・・・・・何? 」
びくっと背筋に何かが走った気がした。
ゆっくりのんびり更新します。




