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私の家族 前編

奏の過去の話を少しだけ。気になる人だけ読んでいただけると幸いです。

「僕ね、将来は奏ねぇと結婚するね。大好きなお姉ちゃんを僕が絶対幸せにするんだから僕が大きくなるまで結婚しちゃだめだよ」


「うん分かったよぁ、悠たん♪お姉ちゃん待ってるからねぇ♪」


目の前の最愛の弟を抱き締める。弟の悠は私にとっての生き甲斐だった。悠のためだったら何でもしてあげたいし、願うことなら何でもしてあげるつもりでいる。父は私が小学生の頃に病気で死んでしまって母が私達を一生懸命に育ててくれた。そんな母を尊敬していた。少しでも母の役に立つために中学校を卒業したら工業高校に入って卒業したらすぐに働くつもりだ。


だから就職もせずに大学に入って就活もしているかどうか分からない大のことはあまり好きにはなれなかった。最近は挨拶を交わすだけであまり会話をしていないと思う。確かに父さんの保険金もあって苦しい生活をしているわけではないけど、特に目的もなく大学に通っている大には凄くイライラしていた。付き合っていた彼女にフラれてから特に脱け殻みたいになっている。


男の癖にうじうじしやがってカッコ悪い。それに私が一番苛ついていたのは悠たんが大のことを心配していることだ。本当は私がずっと一緒に居たいのに大が家に帰ってきたら大の部屋にずっと居る。寝る時もお風呂も一緒に入る。理由を聞いたら『将来、大兄みたいにがっちりした体格になれたらお母さんや奏ねぇを守れるようになるから。それに大兄は優しいから大好き♪』そんなことを無邪気な天使のような笑顔で言われたら何にも言えなくなる。


そんなある日だった。


私にとって人生最悪の日が訪れる。


正直、今でも夢だったらと思っている。


「奏ねぇ、えへへぇ、大好き」


「私もだよ悠たん。世界で一番愛してるよぉ」


今日は私の誕生日パーティーで大が車でケーキを取りに行っていて帰ってくるのを待っている。大学から帰ってくるのが遅くなってケーキを取りに行ったせいで渋滞に巻き込まれていて少し遅れると連絡があった。本当に大はどうしようもない。ただそんな気持ちを吹き飛ばすように悠たんが膝の上に乗って甘えてくれている。それだけで大のことなんて気にならない。


「そういえば、買い忘れたものがあるのよね。大ちゃんが帰ってくるまで少しありそうだから近くのスーパーで買ってくるわね」


「そんなの大に買ってこさせればいいじゃん」


「ふふっ、そうしたら大ちゃんが帰ってくるのが遅くなっちゃうでしょ。歩いてすぐだし大丈夫よ」


「夜はあぶないから僕がぼてぃーがーどする。大にぃと腕たてしてるから悪いやつがきてもだいじょうぶだよぉ」


そう言って悠たんが私の膝から降りてもちもちの力こぶを見せてくれる。


二人が部屋から出ていく瞬間なぜだか凄く嫌な予感がした。それが何だか分からないけど、とにかく今まで感じたことがない凄く嫌な気持ちだった。あの時どんな手段を使ってでも二人を止めておけばよかった。



「いってらっしゃい」


そう言って二人を見送った。




それが二人と話す最後になった。

かなり不定期に更新します。期待せずお待ちください。

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