31話 第20回コスプレ大会決着
ついに大会の決着。優勝はいったい誰だろうか。
俺は人を避けるように進み何の躊躇もなく舞台へと登りジャージを脱ぎ、ずぶ濡れの子の肩にジャージをかける。シャツに手をかけ自分で引き裂いてジュースをかけた3人組に投げつける。その異様な光景と緊張感に舞台は静寂に包まれる。
「お前逹にこの子を笑う権利なんてない。一生懸命やっている人間を笑う権利なんて誰にもないんだよ!!!もし、この子をこれ以上傷つけるつもりなら俺が相手になる」
そう叫んで3人を睨みつけると怯えて転びながら会場から去って行った。
うっ・・・・何をしているんだ俺は。
何故俺はいつも体が勝手に動くんだ・・・・・
50前のおっさんが傷だらけの汚い体を晒して・・・・情けない・・・・
それにせっかくの大会をぶち壊してしまった・・・どうすればいい・・・
謝って許してもらえるものだろうか。
そう考えていると想像していた反応とは違う事が会場で起こる
「ホブマ師匠だ・・・・本物だ!!!」
「あ・・あの伝説の14話のあの台詞の再現だと・・・」
「抱いてくれホブマ師匠!!」
「ホ・ブ・マ・ホ・ブ・マ」
自分では全く理解できない状態になった。時間にして何分だったかは分からないが会場は『ホブマコール』に包まれることになった。
しばらくしてやっと会場が静かになる。俺は何故かステージの上に立っていた。逃げられない雰囲気になってしまい気がついたらそのままの状態になってしまった。
「優勝は・・・・・」
司会者の言葉に皆が息を飲む
「エントリーナンバー6番のホブマ師匠です!!!」
名前を告げると同時に歓声と拍手そして『ホブマコール』が起こる。そして司会者がマイクを渡してくる。
困った・・・・・何だこの状況は・・・・皆の視線がこちらに集まる。
「すみませんが、優勝は辞退します。理由は俺はもともとこの大会に参加していません。それどころか大会をぶち壊してしまいました、申し訳ない」
深々と頭を下げると周りが静寂に包まれる。
「もし、優勝を俺に選ばせていただけるのであれば、勇気を持ってコスプレをして野次からも逃げ出さなかったこの子が優勝だと思う」
そういってジャージを着せた子を肩に乗せ軽々と立ち上がる。会場全体が信じられないものを見たように静寂が続く。笑いたければ笑え、怒りたければ怒るといい。大会をぶち壊したのは俺だ。しかし、その後の反応は自分の想像したものとは違っていた。
会場に大きな拍手が広がる。中には泣いている人もいた。
えっ・・・・何だいったい???
理解ができない。
「ホブマ師匠・・・・最高だよ・・・うぅ」
「15話のラストシーン・・・泣けるんだよなぁ・・・・」
「ホブマ師匠、体エロ過ぎ、何もしなくてもインスタ映え」
歓声も全く理解できなかった。ただ喜んでくれている感じは受けたので大会を壊さなくてよかったと安心した。結果として優勝者はジャージを着せた子と俺の2人で優勝という形になった。その後は会場全体で記念撮影して終わりなのだが、観客が自分と写真を撮りたいという話しになり、時間の関係もあり5人で1組の撮影会が始まった。冗談だとはおもったが参加者全員と撮影することになった。観客だけでなくコスプレ参加者とスタッフとも撮影を行った。断ったのだがジャージを洗って返すと聞いてもらえなかったので連絡先を交換して帰ることにした。こんなおっさんと連絡先なんて交換させて申し訳ないと思う。
上半身裸では見苦しい上に職質されても困るので適当なお店でシャツを買い、家まで走って帰ることにした。帰り道の俺の頭の中はホブマ師匠がどんなキャラクターなのかという気持ちでいっぱいだった。
ゆっくりのんびり更新します。




