18話 物件確認に来ているのですが
物件は思ったよりいい物件だった。だからこそ逆に気になることが・・・
自分に注がれていた視線から逃れる為に、少し足早に商店街の中を歩いている。平日だというのに人の数は多く、活気がある。ただ歩いているだけでも楽しいのだろうが、今は葉君と話していた物件を見る為に、商店街を歩いている。商店街は何本かの通りで構成されていて、例外はあるが、その通りごとに基本は似たお店が固まっている。いったいどんなお店なのだろうかと思いながら葉君に着いていく。
目的の場所に着くと、何分先から待っていたかは分からないが、入り口に物件の担当の人が待っていた。30代後半の眼鏡をかけた、特に特徴のない印象を受ける人だった。『山田 公平』と書かれている名刺を見て、名前も普通だなと思いながら受け取る。
問題の物件は、レンガ作りの雰囲気がある普通の物件だった。変に尖っている外観だったらどうしようかと心配になったが、普通の外観で少しほっとした。鍵を開けて中に入ると、前のオーナーがしっかり整理していたのだろう。ゴミなどはなく今からでも営業できる程、良い状態の物件だった。カウンターの奥もスペースもしっかり整理してあり、壊れている場所もない。立地も悪いわけでは無いし・・・・・いったい何で前のオーナーは辞めてしまったのだろうか?
葉君と再度契約書や金額などの確認をしていて、やはり値段の安さが気になる。曲がりなりにも調べてみたのだが、建物の中に何も無く、中の清掃状況などが悪ければ提示された金額は正しいのかもしれないが、ほぼ、大抵のものが揃っていて、保管状態もいいこの物件の金額に相応しいとは思えない。何かあるそう思って聞いてみた。
「何で、この物件こんなに安いんですか?」
「まぁ・・・・ワケありでして・・・・」
何だかはっきりしない
「前のオーナーは何で辞めたんですか?話しを聞けたら聞きたいのですが」
「うーん・・・無理ですねぇ・・・」
確かに、何の関わりもない俺と合ってくれる理由もないか。
「そうではなく、こちらの世界には居ないんです。前のオーナーは・・・・異世界に行って戻ってこないんです。それで最初の契約通り、次の契約者を探していまして」
うーん・・・この人は何て言った?異世界?何だそれは?海外とは違うよな。真面目な顔をして冗談を言うとも思えないし。この後はその事が気になって物件の中を見れなかったので外に出ることにした。
「まだ考えるお時間はありますので、また連絡してください」
そう言って頭を軽く下げ、山田さんは帰っていった。俺も葉君と一緒に今日の物件の話しをしながら帰る事にしたが、会話の内容はほとんど入ってこなかった。
ゆっくりのんびり更新します。




