16話 立ち話もなんなので近くの喫茶店に行く事になりました。
前の職場の上司と後輩に会い、そのままでいるのも申し訳ないので喫茶店に入る事になった。
近くの喫茶店に入り、注文をしてから何分経っただろう。時間にしたらそんなに経過していないとは思うのだが・・・・この雰囲気は何とも言えない。誰も何も話すことがなく時間だけが過ぎていく。
「お待たせしました」
店員さんがオーダーの飲み物を運んできてくれて、テーブルに置いていく。珈琲にカフェオレが2つ。
「その・・・あの・・・元気にしていましたか?」
「大丈夫だよ元気にしている」
そんな何とも言えない会話しているとありすさんが割り込んでくる
「戻ってくる気は無いのか?・・・その私も言い過ぎたと思ってるし・・・」
ありすさんがこんな事を言うのは初めて聞いた。本当に悪いと思っているんだなと・・・申し訳ない気持ちになる。ただ、職場の雰囲気の気まずさに耐える事ができなかった。俺が辞めた事で、ありすさんの評判が下がるかもとも考えたが、彼女の能力があれば周囲が何も言えないだろう。それに御言葉を受けていたのは自分だけだし、そもそも俺の方が周囲の評判が良くなかった気がする。休憩中のスクワットが良くなかったのだろうかと色々考えるがいまだに理由は分からない。
「部長、ありがたい御言葉ですが、お断りします。俺はいい歳をして、仕事から逃げ出す男ですよ、仕事もそこまで出来るわけでもないですし、また迷惑をかけるだけです。ありさちゃんにもフォローをいっぱいしてもらっていたし・・・」
つらつらと口から出てくる事はいい訳ばかり、本当に情けない。
そう思っていると胸ぐらを掴まれ顔を近づけられる、懐かしい感触だ、それにいつ見ても美人だなと思う。口には出さない、間違いなく殺される・・・・ぐちぐちと情けないことを言う俺に腹をたてたのだろう
「何でありさが『ありさちゃん』で私が『部長』なんだ大?」
「えっ・・・そっち?」
その反応を聞きお腹にまたパンチが入る。本当に懐かしい・・・
「大・・・なんだこの腹は、相変わらず鍛えてるのか?板チョコかお前の腹は?」
確認されるようにお腹に弱めのパンチを繰り返しもらう。その姿をありさちゃんにじっと見つめられる。止めようとしてくれているのだろうが、とばっちりをくらっては申し訳ないと思い、大丈夫と目で伝える。
「ありすちゃん、そろそろ止めてもらってもいいですか?」
「あ!!!!あぁ!!!あああああぁあああ!!!!ふざけんな・・・大・・・・急に・・・呼ぶな!!!」
顔を真っ赤にして、今までで一番いいパンチをお腹に入れて店を出ていった。
「ありさちゃん、追いかけて上げて。お金は払っておくから」
「すみません大先輩、今度またゆっくり」
頭を下げて、転びそうになりながら一生懸命に走って追いかけていく姿に癒される俺だった。しかし、俺はその時、葉君との約束の時間が過ぎていて、着信が何度もあったのを気付いてはいなかった。
ゆっくりのんびり更新します。