2226話 告白5
覚悟はできた
『バシャ、ピシャ、ビシャ・・・・・・』
静かな洗面所に水で顔を洗う音が響く。
胃袋の中身が空っぽになったせいか顔を洗ったせいなのかは分からないが少しだけ気分は楽になっている。
葉君を待たせているから早く行かないといけないが、鏡に映る自分の表情はお世辞にも良い状態とは言えなかった。
これから葉君となにを話すのかは決めていない。
ただ話さないといけないと思っている。
吐き気の原因は体調不良ではなく今の状態がそうさせているんじゃないかと思う。
葉君と話して納得することで体調は回復するんじゃないかと自分勝手な希望を持っている。
「ごめんね葉君待たせて」
「僕は大丈夫だよ大兄、それより体調はかなりまずいんじゃないの?病院行こう」
葉君が本当に俺のことを心配してくれているのは表情を見て明らかに分かった。
「多分病院に行って治るものじゃないと思うんだ・・・・・・」
「・・・・・・」
葉君は俺の言葉を聞いて俯くようにしてなにも言わなくなってしまった。
葉君もなにか思う所があるのかもしれない。
何分経過したかは分からない。
2人とも言葉が出ないまま時間だけが過ぎていった。
このままなにも話さないままで時間切れを待つという選択肢を選ぶことは俺にできなかった。
理由は時間が過ぎれば過ぎるほど話し辛くなるし俺の体調が回復することはないと思ったからだ。
葉君のため葉君のためと言いつつ結局自分の体を心配をするなんてクソ野郎だなと苦笑する。
「ねぇ葉君、奏と別れたのって嘘だったりとかするのかな?」
それは希望だったんだろうか?
口から出たのは吐瀉物ではなく言葉だった。
直後にさっきトイレで吐き出していなかったらお店の中で吐いていたかもしれないぐらいの目眩に襲われる。
我ながら酷い質問だなと思う。
「嘘じゃないよ大兄・・・・・・嘘でこんなこと言えないよ・・・・・・」
「そうだよね・・・・・・うん、ごめん」
「大兄が謝ることなんて一つもないよ僕と奏さんが話し合って決めたことだから。そのせいで大兄が落ち込んでいることも伝わってきたしね・・・・・・」
葉君と奏の話なのに俺が足を踏み入れるのは間違っている。
それなのになんで俺はこんなにも足を踏み入れて
「大兄聞いてくれる?」
葉君の言葉に頷くことしかできなかった。
逃げ出そうと思えば逃げ出すことはできたがそうしたら後悔することは間違いないと思った。
だから俺は葉君の話を聞くことに決めた。
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