12話 出された料理は残さず食べないといけません。
運ばれてきた料理は何だか分からないものだった。ただ俺に手作りの料理を残すという選択肢はない。
しばらくすると目の前に大盛の料理が運ばれる。これがオススメか、何だかぐちゃぐちゃな上に所々焦げていて、何の料理か分からない。食べてみれば分かるかと、スプーンに手を伸ばした所で止められる。最後の仕上げかあるそうだ。ケチャップをかけるのか、なるほど、可愛いらしい従業員にケチャップをかけてもらう事で美味しくなる気持ちになるという事か。自分の珈琲に対してと同じ考えなのだろうと思いそのサービスをお願いする。書く文字を選べる・・・・・・困った・・・何も思い浮かばない。これもおまかせにしたら『筋肉兄』と書かれた。
「いただきます」
鈴君に先に食べていいと言われて、手を合わせスプーンで料理を口に運ぶ。味は、少し辛いような、酸っぱいような、苦いような、甘いような、不思議な味が口内に広がる。一般的に言って不味いと言えばいいのだろう。心配そうにミク君が見ている。作ったのは彼なんだろうと聞かなくても分かるぐらいこちらを気にしていた。心配しなくても大丈夫。俺は出された食べ物は残した事がない!!ゆっくり味わうように完食する。
「筋肉兄・・・無理して食うなよ・・・そんな危険物」
申し訳なさそうにするミク君に、料理が美味しくなかったことは素直に伝えて、自分は人が作ってくれた料理は残さないと説明した。何のフォローにはならないが、味に対して嘘を言うのはミク君に対して悪いと思うから仕方ない。その言葉を聞くとミク君が微笑む。何が良かったのか分からないが笑ってくれたことは嬉しいのでほっと息を吐く。
「お待たせしました♪」
そう言いながらシホ君が少し大きめなパフェを運んでくる。
「大さん、パフェなんて変っすかね?」
心配そうに尋ねる鈴君に気にする事はない、自分も甘い物は好きだと伝える。疲れた時には糖分が一番だからな。
ふとパフェが乗ったスプーンが口の前に来る。おや・・・何だ?
そうか、甘い物が好きと言ったからお裾分けか
「大丈夫だよ鈴君、俺が食べたらお返しにならないし」
「いいから、食べるっすよ。それとも自分のパフェが食べられないんっすか?」
鈴君のパフェではないと思うが、機嫌を悪くされてはお礼ではなくなる。そう思ってパフェを口に入れる。味はかなり甘い普通のパフェだった。もしかすると、全部が従業員の手作りということか。大変な仕事だと更に感心する。
ふとまたパフェが乗ったスプーンが口の前に近づく。断っては申し訳ないと口に入れる。
「どうですか?お兄ちゃん♪」
前を見るとそこには不機嫌な鈴君とクスクス笑うシホ君、そして殺意の眼差しで睨み付けるお客様がいた。
俺が何かしたか?
ゆっくりのんびり更新します。




