190話 相談
悩みを打ち明けていく。
グラスを口に当ててハイボールをゆっくりと喉に流し込む。甘い香りと爽快な炭酸が胃の中にゆっくりと染み渡る。お酒はそこまで好きではない俺が美味しいと思えるのだからお酒好きには堪らないはずだ。これで値段も安かったら流行るはずだよな。
「どうしたんですか悩みがあれば聞きますよ?本当はあなたの話なんて聞きたくはありませんが、あなたに元気が無いとガリィとラビィに元気が無くなるので」
そう言って白髪を手でかきあげて椅子に座る。性格と性癖にはかなり問題があるが、マスターは切れ長の瞳の二重で顔が整っている。いわゆるイケメンというやつだ。基本的に座ることが無いマスターが椅子に座るのを見るのは珍しい。真面目に聞いてくれる姿勢を見せてくれているのだからこちらも真剣に悩みを打ち明けてみることにしよう。悩んでいていも仕方ないし、意見を聞けるのはありがたい。
やっぱりお酒の力を少しだけ借りよう。
残りのハイボールを一気に飲み干して、大きく息を吐く。
「マスター・・・・・・俺はここに逃げてきたんです」
お酒のせいで少し口が軽くなったおかげで情けない台詞を口から発することができた。
「まぁ、私もここに住むことを選んだので現実の世界から逃げてきたわけですから気にすることは無いですよ。全員が真っ直ぐ進めるわけではありませんから」
マスターが何か悪いことをしましたかという顔でこちらを見つめてくる。
うわぁ・・・・・・何このイケメン?
店が流行っていたのはマスターの性格がお客様にばれていないせいもあったと思う。
「逃げ出してきた理由は例の店の件ですか?それならのんびりやっていけばいいと思いますよ。無理をしても良い店はできませんし、体も心ももたないですよ」
「実は、お店のこととは別に悩みができまして・・・・・・」
口に出していいか一瞬考えるがここで言わなければ何も変わらない。ここは相談に乗ってもらうことにしよう。
「その、二人にほぼ同時期に告白されまして、恥ずかしい話ですが、自分にとって初めてのことなのでどう答えていいのか分からなくて」
「なるほど、それでどちらの気持ちに答えたらいいか迷っていると」
マスターは嫌な顔もせずに話を聞いてくれる。あれだけ悩んでいたこと少し吐き出しただけで少し楽になった。俺が考えすぎだったのだろうか。
「はい、両方とも自分にとって大切な人なんですが自分に好意を持っているなんて全く思ってなかった上に、一人は結婚しているので」
少しずつマスターに悩みを打ち明けていくことにした。
ゆっくりのんびり更新します。




