152話 のんびり食事
おっさんVS丼
「よし決めた。あれにする」
葉君が決めたものは自分が想像していないものだった。俺としてはどれを選んでもよかったのだが葉君が選んだものは俺の視覚と嗅覚とお腹をかなり刺激してきた。
「葉、こんなに食べられるのかい?」
「大丈夫、食べられなかったら大兄が食べてくれるし♪」
目の前に置かれた山盛りの天丼に胸が高鳴る。出来立てのせいか湯気が立ち油の匂いが鼻の奥まで刺激してくる。
間違いなくこいつは旨いはず。
唾を飲み喉の音が鳴る。
『いただきます』
手を合わせて葉君と一緒に食べ始める。
まずは匂いからだ・・・・・・鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。鼻の先から脳みそに天ぷらの香りが伝わる。いい感じじゃないか。天ぷらはどこから攻めようか。どの天ぷらも美味しそうだ。どこから攻めてもいいのだが俺を挑発してくる海老天から攻めてみることにする。丼からはみ出している海老天を口一杯に頬張る。口内に海老と衣の旨味が広がる。
いいぞいいぞ。どんどん攻撃してこい。
次は半熟卵と戦ってみるとするか。箸で卵をつついてみると白身から黄身が溢れて残りの天ぷらとご飯を黄金にコーティングしていく。
おいおいおいおい・・・・・・やってくれるじゃないか・・・・・・
それから先はあまり記憶がない。気がついた頃には大量の天丼は空の丼になっていた。
「ふふっ、大兄美味しかった?」
のんびりと食べながら葉君が尋ねてくる。しまった・・・・・・葉君のペースを考えず食べてしまった。
「ごめん葉、美味しすぎて我を忘れてしまって」
「ふふっ、今度は天丼作ってみるね。まぁ、こんなに美味しいのは作れないと思うけど」
「葉の作るもので不味いものなんてないよ。楽しみにしてるから」
葉君の瞳を真っ直ぐ見つめてお願いする。葉君の作ってくれる料理は本当に美味しい。本来であれば自分や奏の為に作ってくれればいいのに俺なんかの為にもご飯を作ってくれる。一人分も二人分も変わらないし葉君自体があまり食べないから逆に一人分の方が作り辛いらしい。俺なんかは適当に大盛りで作ってそれを平らげるだけだからその悩みは分からないのだが葉君の言い分が普通なのだろう。
「うぅ・・・・・・大兄・・・・・・そういうの無意識でやるの反則だから・・・・・・」
葉君が顔を背けてしまう。何か気に障ることを言ってしまったのだろう。葉君に甘えすぎてしまっている自分に反省する。葉君は天丼を半分食べた所でお腹が一杯になってしまったようで残りを遠慮なくいただくことにした。葉君は俺が食べる姿を嬉しそうに見つめていた。
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