132話 デート前夜(鈴side)
水族館に行く前の鈴君の話。
お風呂に入ってパジャマに着替え布団に入る。明日は大さんとのデートがあるから早く寝ないといけない。目を閉じて眠ろうとするがやはり眠れない。予想はしていたけど心臓の鼓動が外に聞こえてしまうんじゃないかと心配するぐらい早く動いている。11時に布団に入ったのに時計は夜中の2時になっていた。このままだと大さんのデート中に眠そうにしてしまうかもしれない。温めたミルクでも飲んで落ち着こうかと思いリビングに向かうと玄関から鍵の空く音がする。
「あらー鈴、こんな時間まで起きてるなんて珍しいじゃない?」
肩までの金髪を後ろで纏め化粧をして薄手のコートにシャツにジーンズを履いた音兄が現れる。身長は180センチを越えていて体は細身でいわゆるイケメンっすかね。
警察学校中に住むアパートを探していた時に偶然に兄に会って警察学校を卒業してから住ませてもらっている。親とはあまり仲が良くなくて実家から通う選択肢は避けたかった。警察学校に通っている間は寮だし給料が貰えたから安いアパートを探すのもありだったけど将来何があるか分からないからお金を貯めておけと合気道の師匠に言われたっすからね。
音兄はメイクの仕事をしている。仕事が忙しいのでほとんど家には居ない。住んでいる時間でいえばどちらが同居人か分からないくらい。
音兄は自分が小学生の時に親と喧嘩して家を出て行った。メイクの仕事をしたいという進路を否定され高校の途中から家を出てそれから一度も帰っていないらしい。
「ふふっ、明日が楽しみで眠れないのかしら?鈴ったら可愛い♪」
「音兄、からかうのはやめてほしいっす。本気で眠れないんっすから」
疲れているはずなのに音兄がついでだからと二人分のホットミルクを作って出してくれた。音兄とは実家に居た時はほとんど話さなかったけど一緒に暮らしだしてからはよく話すようになった。どちらかというと音兄がずっと話している感じっすけど。
「鈴のデートの相手って前に話してた大って人かしら?今度連れてきて紹介しなさいよ♪」
「うーん、いいっすけど、変なこと言わないでよね音兄」
自分の気持ちを大さんに伝えてしまいそうで不安になる。音兄はそんなことはしないと思うけど、大さんへの気持ちは自分で伝えないと意味がないっすからね。
音兄と話ながらホットミルクを飲むと胃の中が温かくなり眠気が襲ってきた。音兄におやすみと伝えて部屋の布団に横になるとすぐに意識は薄くなっていった。
ゆっくりのんびり更新します。




