131話 水族館にて5
鈴君の終わらない攻撃。
「いや、大丈夫だよ。新しいの買うから」
予想していなかった行動に慌ててしまう。いつもの鈴君から貰っていたら飲んでいたかもしれないが、今日の鈴君のを飲むのは何だか躊躇してしまう。俺が変に意識をしてしまっているのがよくないと思うのだが。いや逆に飲まない方が意識をしていると思われるんじゃないだろうか。
「ふふっ、どうしたんっすか?喉渇いてるんっすよね?」
ニヤニヤしながらジュースを手渡す。断ることができずジュースを受け取る。
ゴクリッ・・・・・・
唾を飲む音が響く。酷く大きい音がしたんじゃないかと心配になる。
意識することじゃない・・・・・・
鈴君は男だ・・・・・・
意識する方がおかしい。いつもの悪ふざけで俺が戸惑っている姿を見て楽しんでいるだけだ。俺ができることは鈴君から貰ったジュースを飲み普通にしていることだけだ。
缶に口をつけて一気に飲み干す。口から喉に、喉から胃袋に冷たい液体が流れていく。味なんて分からない。とにかく普通にしていないと。
「どうっすか?自分の味は?」
鈴君が背筋を伸ばして耳元で囁く。香水をつけているのだろうか、いつもは感じない甘い香りと艶やかな声に背筋に電気が走る。
「いや、すいません、悪気はなくて」
立ち上がり離れてあたふたしながらも何故か謝る。自分でも意味不明で何をしているか分からない。
「ふふっ、すいませんやり過ぎたっすかね?気にしなくても大丈夫っすよ♪」
鈴君が小悪魔のように笑う。
多分俺は鈴君に勝つことはできないだろう。勝てる姿を想像できない。鈴君が危ない目に会わないことを祈るしかない。
「さぁ、お土産でも見て帰りましょう大♪」
手を差し出されるので手を繋ぐ。こうなれば最後まで付き合うしかない。お土産売場にはお菓子からぬいぐるみまで様々な品揃えだった。家族やカップル、集団などなど楽しそうにお土産を選んでいる。葉君にお土産を買っていこうかな。仕事で使うようにペンギンの装飾のあるボールペンなんてどうだろうか。色々と悩んでいると鈴君が近づいてくる。
「鈴も何か欲しいものがある?あるなら買うよ」
「うーん、そうっすね、せっかくだったら普段使えるものがいいっすかね」
ボールペンかメモ帳か迷ってイルカショーを思い出してイルカの装飾のされたボールペンを購入して鈴君に渡す。葉君の分も購入して出口に向かう。水族館を出て駐車場に向かう。助手席を開けて鈴君が乗るのを確認して運転席に乗り込みエンジンをかける。商店街に着く頃には夕方になっているだろうかと思いながら車を走らせた。
ゆっくりのんびり更新します。




