126話 目的地は
車で到着した場所は俺の好きな場所で。
「大さん、何で逃げたんっすか?軽くショックなんっすけど」
じぃっと見つめてくるが化粧のせいか可愛さの破壊力が上がっている。そもそも化粧のことに触れていいのだろうか?止めようセクハラになる。
「いや鈴君、その、いつもと雰囲気が違ったからすぐに気がつけなくて、そのごめん・・・・・・」
「仕方ないっすね。特別っすよ。そういえば今日ってどこに行くんっすか?」
駅に向かおうとする鈴君を止めて駐車場に向かう。車で来ているとは思っていなかったようで少し驚いていたが嬉しそうに後をついてきてくれる。今日は良く晴れているせいかそこまで寒くない。出掛けるにはいい日だと思う。
駐車場について助手席の扉を開けて鈴君が乗るのを確認してから運転席に乗り込む。エンジンをかけて車を走らせる。ラジオ放送をかけながら車で下道を走る。週末はどこも混んでいると思うが渋滞の時間には早いようで目的地には予定通り到着する。
鈴君の行きたい場所があれば後から行くことにして最初は俺がたまに行く水族館にやって来た。車を停め助手席を開けて鈴君が降りるのを確認してから鍵を閉めて入場口へと向かう。
「どうして水族館なんっすか?魚が好きなんっすか?」
「特別に好きとか詳しいわけではないけど魚を見ていると心が落ち着いてね。嫌だったかな?」
心配そうに尋ねると鈴君は大丈夫と微笑み手を引くようにして入場口に向かう。周りにはカップルや親子連れなど少しずつ人が増えてきた。
周りから見たらどう見えるだろうか。年齢も離れているし親子にでも見られているだろう。カップルにでも見られたら鈴君に申し訳ないがその心配は無いだろう。
入口でチケットを買って中に入って行く。中は空調が聞いていて少し寒い感じがするが鈴君は大丈夫だろうか?
「鈴君寒くないかい?」
「うーん・・・・・・そうっすね、少しだけ寒いっすかね♪」
不意に鈴君が腕を組んでくる。
えっと・・・・・・
あれだな、うん、いつものやつだな。ここで断るということは鈴君を楽しませてしまうことになる。たまには鈴君に負けないようにしないと。
腕を組むのを気にしないで歩くことにする。身長差があるので鈴君に負担がかからないようにゆっくり歩く。普段腕を組んで歩くことなんてないからぎこちない歩き方になってしまう。周囲からクスクスと笑い声が聞こえる。
「ふふっ、初々しい」
「私達もああいう時期がありましたね」
「ふーん・・・・・・いい感じじゃん」
いつもの殺意の視線とは違って優しい視線が向けられていた。
ゆっくりのんびり更新します。




