119話 そしてまた週末
いつもとは違う勝負に挑むことに。
目覚まし時計の音に目を覚まし体を起こす。二日酔いのせいか少しふらふらするが無理矢理体を起こす。下に降りて顔を洗いグラスに注いだ水を飲み干す。ひんやりとした水が体中に染みわたり少し落ち着く。
ジャージに着替えて準備運動をしてゆっくりと走り始める。いつもの場所で鈴君が準備運動をして待っていた。軽く会話をして走り出す。今日は珍しくポニーテールにしているので何かあったのか聞いてみると
「ふふっ、何となくっすよ。どうっすか可愛いっすか?」
抱きついてニヤニヤした顔で見上げてくる。
「まぁ・・・・・・はい」
いつもの鈴君の悪戯に素直に答える。こんなおっさんをからかっても何にもならないと思うのだが。神社の階段を上り下りると自販機前で柔軟運動をしている鈴君がいた。やはり今日も俺の負けだった。
金曜日恒例の組手が始まる。
「どうっすか大さん、今日は賭けをしないっすか?」
「賭け?」
柔軟運動をしながら尋ねる。いつもと違う状況を作ることでもしかすると鈴君に不利な状況ができて、もしかするといつもよりいい勝負ができるかもしれない。悪い癖でいつものように負けてもしょうがないという気持ちが最近できていて本気で勝とうとしていなかったかもしれない。ここは鈴君の提案に乗らない手はない。
「そうっすよ。負けた方が勝った相手の言うことを何でも一つ聞くっていうのはどうっすか?」
「了解。今日こそはいい勝負が出来るようにするよ」
頬を思い切り叩いて気合いを入れる。
さて・・・・・・どう攻めようか・・・・・・
力勝負の体勢に持っていければよいのだが上手くいったことは無い。攻めれば間接を決められて投げられるし、守ろうにも間接を決められたら逆らえず倒れるしかない。いつもと一緒ではだめだ、何か違うことをしないと
効果的かどうか分からないが服を掴まれるのは不利になる。上着とシャツを脱ぎ捨て上半身だけ裸になる。寒さのせいか神経も研ぎ澄まされる。手首と指を捕まれないよう気を付けながら足に向けてタックルする。かわされた後に再度タックルしようと考えていたが鈴君はさけることはなく足を掴まえて尻餅をつかせることができた。予想外の出来事で少し驚いたが攻めるなら今しかない。このまま肩を掴んで押せば背中を地面につけることができる。この体勢になってしまえば力で何とか・・・・・・
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・乱暴はだめっすよ・・・・・・するなら優しくしてほしいっす・・・・・・」
鈴君が涙目で異様に艶やかな声で囁いてくる。その姿に頭が真っ白になって力が抜ける。その瞬間手首を掴まれて気が付いた時には逆に俺の背中が地面についていた。
ゆっくりのんびり更新します。




