91話 晩御飯(葉side)
いつものように家事を終えて、いつものように大兄の家に向かう。
「行ってくるね、愛してるよ葉きゅん」
奏さんが苦しいぐらい抱きしめてくる。いつものことで慣れてしまったけど最初は凄く恥ずかしかった。
「奏さんお弁当忘れないでね」
手作りのお弁当を渡して奏さんを見送る。見送りが終わるといつものように掃除を始める。掃除自体が好きではないけれど綺麗な部屋で過ごすのは気持ちいいし奏さんは女性なのに綺麗とか汚いとか関係なく床に座るから綺麗にしておかないと。本当に大兄も奏さんも豪快だから。
リビング、お風呂場、トイレ、洗濯など流れるように掃除を行っていく。洗濯物を干し終えてお茶をいれてのんびりする。そういえば大兄から明日、物件を見に行くってメールが来てたなぁ。二人でしたいって言ったのに大兄に任せっきりになってしまっていて申し訳ない気持ちでいっぱいなんだけど、大兄は葉君は仕事があるからと気にしないでといつも頭を撫でてくる。
洗濯物を回収すると買い物に向かう。大兄は多分疲れて寝ているからがっつりした晩御飯にしよう。大兄も奏さんもカレーを作るとスープのように平らげていくから見ていて気持ちいい。
よし、カレーにしよう。そう決めて大量に材料を買っていく。商店街の人は優しくてサービスしてくれるので申し訳ない気持ちになりながらも笑顔を見るとついつい甘えてしまう。
大量に材料を買ったせいかふらふらとした足取りで大兄の家に向かう。夜になるとだいぶ寒くなってきて吐く息も白くなる。少し生地の厚いコートを明日から着ようかなと考えながら大兄の家に到着する。
合鍵で玄関を開けて中に入ると大兄がソファーで眠っていた。毛布も何もかけずに寝ているから風邪をひかないか心配ですぐに毛布をかける。
ふふっ・・・・・昨日の話し合いで疲れたのかな。まじまじと顔を見つめていると自然と心臓の音が早くなる。
無意識に顔を近付けていく
唇が合わさるぐらいまで近づいてふっと我に帰る。
危ない・・・・・・何をしようとしていたんだろうか?最近何だかおかしい・・・・・・前はこんなことしなかったのに。
一緒に大兄とお店をすると決めていつも以上に話したり出掛けたりするようになって一緒に居る時間が増えていくようになってから今まで押さえつけていた感情が溢れだしたみたいだ。頬を両手で叩いて自分に渇を入れて両手をはじめる。
カレーのいい匂いが漂いだすとソファーの方から音がする。
「葉君、今日はカレーかい?」
「うん、大兄も奏さんも好きでしょ?沢山作ったからいっぱい食べてね」
そんな何でもない会話でも幸せに感じてしまっている自分の気持ちをこの先、押し潰せるか心臓を押さえながら考える。
ゆっくりのんびり更新します。




