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そのいち

少し息抜きに書いた作品です

一応連載という形はとっていますが、続きを書くかどうかはわかりません

ひとまずはこの話で完結と考えてください


僕は平凡な人間だと思う


身長は平均、顔立ちもそこそこ、成績は中の上と上の下を行ったり来たり。

特技はこれといったものがなく、親からはもっと面白い人間になれと五才の頃から言われ続けて十一年。


そんな面白味のない僕でも、どうやら恋をするようだ。


十六歳、高校二年生になって、人生初めての恋。


そう初恋だ。


相手は一年の頃からのクラスメイト、白石百合子しらいしゆりこさん。


その名の通り白百合のように美しい美貌と、汚れを知らない心の無垢さは見るものを汚れ切ったこの世界から救うようだ。


そしてそんな白石さんの一番の良さ。

それは絶妙に地味なことだ。


どこの学校、どこのクラスにも一人はいる

「あれ、こいつよく見るとそこそこかわいくね?」

って感じの女子、それが白石百合子という女子である。


さて、そんないわゆる地味女子を好きになったんならさっさと告白すればいいじゃないか、なんてことを思う人がいるだろう。


まったくその通りである。


僕が今日の放課後にでも告白をしようものなら九割の確率で成功するであろう。


しかし、しかしだ。そこには残りの一割、振られる、という事態が存在する。

それはなぜなら…




このクラスに僕以外の男子が存在するからだ。






このクラスは男子二十人女子二十人の合計四十人のクラスである。

そして男子はその中で更に二つに分けることができる。


すなわち、「イケてる男子」と「イケてない男子」だ。


うちのクラスにはその「イケてる男子」が六人いる。


白石さんがもしも、もしもこの「イケてる男子」とくっつけるかも、なんて幻想を抱いて、その一縷の望みにかけて僕を振るなんてことは、絶対にあってはならない。


ではどうすればいいのか。

そんなのは決まっている。



ライバルは蹴落とせばいいのだ。




キーンコーンカーンコーン


おっと授業が終わったようだ。

四時間目の退屈な現代文が終わり、クラスがガヤガヤと騒がしくなる。


友達と学食へ向かう運動部や、グループで机を突き合わせて弁当をつつく女子集団、教室の隅で一人寂しくスマホ片手にサンドイッチをもそもそ齧るボッチ。


そんな有象無象の雑音に紛れながら、僕の机に近づく存在があった。


英人ひでと~!飯食おうぜ~!」


僕の友人であり、先ほど言ったクラスの「イケてる男子」六人のうちの一人、田辺沙羅たなべさらだ。


百七十センチ後半くらいの身長に染めた明るい茶髪、制服はだらしなく来崩し、耳にはピアスをつけている、これ以上ないってほどチャラさ全開のチャラ男である


このチャラ男、もとい田辺とも白石さんと同じく一年からの付き合いである。


普通の体現者たる僕と、チャラ男の体現者たる田辺がどういうきっかけで友達になったかはあまり覚えていないが、田辺は根はいいやつなので、こうして一緒に昼食を摂ったり、相談に乗ったりしている。


さて、今日も一緒に弁当をつついていたのだが、どうやら今日は相談の日らしい。


「あのさ、英人…。」

「うん。」

「俺、白石さんのこと好きだ。」






…白米が胸に詰まって死ぬかと思った。




それから田辺は僕が聞いてもいないような、なぜ白石さんを好きになったのか、その経緯をペラペラと語りだした。


「いや~こないだの球技大会の時に思ったんだけど、白石さんって意外と胸あるんだな~って。」


そこかよ!

そんなクソみたいな理由で顔だけは無駄にいいこいつに白石さんを獲られる訳にはいかない。


「いや、もちろんそれだけじゃないぞ?美化委員の仕事をマジメ~に頑張ってるところとか、日直の仕事手伝ってるところとか、なんかいいなって思って。」


ふむ、意外とよく見てるんだな。


が、これはまずいな。


もしも田辺が白石さんに告白なんてしてしまった日には、こいつは顔だけは良いから、白石さんがうなづいてしまうかもしれない。


それは何とか阻止せねば。


「でさ、俺ってこんな感じじゃん?白石さんってやっぱ俺のことビビってるかな~?]


つけ入るならここだな。


「そうだね、白石さんは静かなタイプだから田辺みたいなタイプは苦手なんじゃないかな」

「な~!やっぱりそうだよな~!どうしよ~!」


ここで、これだ。


「でも、別に学校の女子全員が田辺みたいなタイプを嫌いなわけではないと思うよ。」

「っていうと?」

「これはここだけの話なんだけど。」


僕はそう前置きして、声量を抑えて、少し田辺に近づいた。

うーわ、整髪料くさ!


「生徒会長の秋岡さんっているでしょ?」

「ああ、あの告白五十人切りの女帝サマだろ。それがどうしたんだ?」

「そう、その秋岡さんの好みのタイプが、実は田辺みたいな、少し世の流れに逆らって生きている、ロックなタイプなんじゃないかって噂があるんだ。」


たった今僕が作った噂だけどね。


「な!?マジかよ!?」

「しー!声が大きいよ。」

「す、すまん。でもなんでまたそんな噂が?」


食いついた!


「というのも、秋岡さんが今まで振ってきた人には色んなタイプの人がいるけど、田辺みたいなタイプの人はいないんだよ。」

「ふんふん。」


ここからが腕の見せ所だ。


「それに、秋岡さんって服装とか髪型に厳しいでしょ?じつはそれが愛情の裏返しなんじゃないかって。」

「ま、まじでか…。じゃあひょっとして、こないだ俺がしこたま注意されたのも…?」

「きっと田辺のことが好きなんだよ。」

「おお~!」


単純な男である。


まあ、無理もないか。


秋岡さんは一年の後期から生徒会長選挙に立候補して、対立候補の先輩を、票数は公開されてないものの二倍以上の票差で勝ったなんて噂がある人だ。


生徒会長としての人望はもちろん、事務能力や学業の成績、運動能力、整った容姿そのすべてがトップクラスの美少女、いやその大人っぽい立ち振る舞いと落ち着きは美人と言うべきだろう。


そんな秋岡さんが自分のことが好きかもしれない、なんて話があったらこの学校の大抵の男はイチコロだろう。


そして田辺はそんな大抵で、大衆で、有象無象の一人に過ぎなかったのである。


「じゃ、じゃあさ今日告白しにいったらOKもらえるかな!」

「秋岡さんは放課後は生徒会室にいるから、行ってくるといいよ。」


僕は成功するとは一言も言ってないがな。


「おお~!ありがとう英人!俺、今日の放課後に秋岡さんに告白するよ!」

「上手くいくといいね。」


いくわけないがな。


そして単純な田辺は秋岡さんに振られた後にこう言うだろう。


秋岡さんに振られた男がみんな言うセリフ


「女なんていらねえ!」と











次の日、普段よりほんの少し早く教室に入った僕は、その僕よりも更に早く教室にいた田辺に捕まった。


「英人~!」

「どうだった?」

「英人…俺、俺…。」

「…。」

「女なんていらねえ!」


やっぱりな!


っと、いかんいかん、口元がにやけてしまいそうだ。

ここはびしっとしなければ。


「なにがあったの?」

「あの女よ~!俺のこと、俺のこと…!」


それから田辺は赤子のように泣き出しながら事のあらましを話した。


いわく、その髪はない。

いわく、カッターシャツのしたに色付きのTシャツを着こむな。

いわく、そもそも態度やしゃべり方がチャラチャラしているのが怒るのを通り越して軽蔑する。

いわく、ピアスを没収。

いわく、いわく、いわく…。


出るわ出るわ、田辺へのダメだしと罵倒の嵐。


こうして田辺の淡い恋心は叩き折られて今朝を迎えると。


そしてここで僕のことを恨まないところが本当にいいやつなんだよなあ…。


そんなこんなで田辺の話を話半分で聞いていると、一時間目の授業が始まる十分前になりクラスメイトのほとんどが教室に入った頃に田辺が声を張り上げて言った。


「決めた!俺はもう彼女なんて作らねえ!」






クラスが静まり返る中、僕は心の中で一人嗤った


…一人脱落!


最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

よろしければ評価や感想をよろしくおねがいします

作者のモチベが上がるかもしれません(笑)

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