2.初めての魔法そして驚愕の事実
「よっしゃ、決まりだな。学校まで連れて行ってやるよ、ガハハ」
ゴーゼルさんは高笑いしながら、そう言ったが私には、不気味に感じた。初めて出会った人に対して、そんなに親切に接することが出来るのだろうか?何か裏があるのではないかと思い、私は直接本人に聞いてみた。
「あの〜、ゴーゼルさん。なんで見ず知らずの人に対して、そんなに親切に接することが出来るんですか?最初に、盗賊に襲われるぞと言っていましたが、その私が盗賊と思わなかったんですか?」
「あぁ〜、それはな嬢ちゃん。商人ってゆーのは、信頼関係が命なんだ。そして信頼関係の始まりは、親切に接することから始まることもあるんだ。商人は、出会いの機会を逃すなんてことは、あまりないんだ。でもそれは建前で、本音は、親切にしてくれた人が、恩返ししてくれるのを期待してんだよ。」
あぁ〜、棚ぼた的な感じで親切にしているのかな?
私には、出来そうもないね。私、自分で言うのもあれだけど、シャイだし。
「俺たち商人は、積荷を運んでいるときに、盗賊に襲わられることが多いんだ。嬢ちゃんは気づいていないだろうが、今後ろの馬車の積荷が乗っていた場所には、護衛の魔術師や騎士が乗っているんだ。最低でも二人づつ商業ギルドから雇っていないと俺たちの命が危ないからな。もし、君が魔術師になれたなら、俺たちの商会の護衛依頼を受けてくれたらなぁと思っている。」
私が、精霊と契約できるか微妙な気もするけど、異世界人だし。
こういう時って、異世界にやって来た主人公が敵を倒して行くのが多いけど、この世界は、比較的安全そうだなぁ〜。
「おい、もうそろそろ門前に着くぞ。」
「あ、そういえば、こちらの自己紹介は、まだでしたよね?私は、小笠原雪菜っていいます。」
「あぁ、自分ばかりしゃべっていたからなぁ〜、聞くのを忘れてたわ。嬢ちゃんでも違和感なかったからな。オガサワラユキナ?長い名前だな。もう少し短く出来ないか?」
「う〜んと、じゃあ、ユキって呼んでください。」
「ユキか、わかった。じゃあユキちゃんは、門前にいる役人に身分証を再発行して貰えるように頼め、金は、こっちで払っとくさかい。」
「わかりました、ありがとうございます。」
なんか私、この世界に来てから[ありがとうございます]って連呼してる気がする。
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門前にて
「おい、通行証を見せろ。」
ヒィ〜、なんか役人の言動が怖い。
「はいよ。」
ゴーゼルさんは、通行証を役人に見せながら、こちらに視線を向けて来た。早く言えって?えぇ〜心の準備がまだ出来て無いよ〜。ヤバイよ、ヤバイよ。
「はぁ〜、あの嬢ちゃんの身分証を再発行してくれ、金は、俺が払う。」
「わかった。そこの娘、付いて来い。」
私は、少し怯えながら「はい」と答えた。
ついて行き、ある部屋にたどり着いた。その部屋の中央に水を張った大きな水瓶があった。
「おい、そこの娘。この水瓶の中にお前の血を垂らすんだ。そこにナイフがあるから使え。」
へ?血?自分で切るの?無理、無理、無理。予防接種の注射だって、今でも抵抗があるのに、、、
出来ないよ〜。もたついていると役人が催促してきた。
「おい、早くしろ。」
「おい、どうしたんだ?嬢ちゃん。」
そこへ、ゴーゼルさんが部屋に入ってきた。
「なんだ、ナイフで指先を少し切るだけじゃねーか。
今まで、どんな生活をしていたんだ?嬢ちゃん、もしかして貴族の出身か?しゃーねーから、代わりにやってやるよ。左手の小指の先でいいか?」
「うぅ〜、ありがとうございます。ゴーゼルさん。」
私は、切られる瞬間、目をつぶり顔を後ろに向けていた。
チクリと少し痛みを感じたが、水瓶に血が垂れた瞬間に、水瓶に張っていた水がひかり出したことに、びっくりしたので、あまり痛みを意識することは無かった。その幻想的な光を見つめていると水瓶の水面上に、文字のようなものが浮かび上がっていた。
「15歳っと、お前、名前は?」
え?じゅ、じゅうご歳?私、19歳じゃなかったの?
今まで、自分の姿、鏡で見たことが無かった。
ここなら、鏡ぐらいあるよね?
早く自分の姿を確認せずには、いられなかった。
「お、小笠原雪菜です。あの〜、こちらに鏡とか置いていたりしないですか?」
「オガサワラユキナか。長いな。」
「長ければ、ユキでいいです。あの〜、鏡は?」
役人が厚紙みたいなものに、私の名前を書いたのかな?なにやら書き込んでいた厚紙を水瓶の水面上に浸した瞬間、その厚紙が光りだした。
「これで身分証の発行は、完了だ。あぁー、鏡か、この水瓶が鏡がわりにできるので、少し待ちなさい。」
と、役人が言ったあと。何か、聞き取れなかったが、呪文を唱えているようだった。
次の瞬間、水瓶の水が鏡のようになった。
覗き込んで恐る恐る確認すると、その水面に映っている私は、中学生の頃の私にそっくりだった。
「うそっ!」
どういうこと?次々起こる出来事のせいで頭がパンクしちゃいそう。
「ユキは、結局15歳だったか。」
ゴーゼルさん?そういえば、出会った当初15、16歳かって聞かれたんだった。その時に気づけよ、私。
「これで、ノイベルグ王国に入れるな。じゃあ、今度は、学校の方だな。文字は読めるか?」
え、文字?あの、水瓶にうつされた自分の年齢の数字すら、読めなかったのに、文章となると多分読めないよ。
「ちょっと、読めないかもしれないです。」
「かもって、おいおい。じゃあ、文字を学ぶための教材を売ってやる。」
「すいません、今手持ちのお金がなくて、、、、、」
「つけでもかまわねぇーよ。」
つけでもいいって言ってくれてるけど、借金みたいなものだと思うし。どうしよう、何か案は、、、
私は、頭をフル回転させて考えた。
出てきた答えは、、、
「ゴーゼルさん、珍しい玩具とかに興味はありませんか?」
「玩具か、球で遊ぶ、遊びしか知らないな。他にあるのか?」
「屋内で、二人で遊ぶものですが興味がありますか?」
「かなり興味あるな。屋内で遊べる遊びがないから、みんな外で遊ぶんだ。」
ふーん、屋内ゲーム自体がないんだ。生きるために、元いた世界の知識を少し出してもいいよね?まぁ、私は、元の世界に帰れるように足掻くつもりだから、手っ取り早く稼ぎたいんだよ。
私は心の中で、何度も自問自答して、知識を少しづつ出して行くことを決めた。
「で、どんな遊びなんだ?」
ゴーゼルさんが少し急かしてきた。
私は、元の世界で、日本で流行っていた(今も人気かな)とある盤上のゲームを口に出していた。
「それは、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、 将棋です。」