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18 救済

「まずは、あなたから・・・死ね!」


(あぁ、わたし、ここで死ぬんだ。短い人生だったな・・・)


ルミアは死を悟り、両目を閉じた。


「ルミアちゃん/ルミアさん!」


シャーロットとリーリエの声が辺りに響きわたった。

そして、シャーロット達も目を伏せてしまった。


ガシャン

「ウゥ・・・」


突然、金属が地面に落ちる音がするのと同時に呻き声が聞こえた。

そしてルミアは、恐る恐る目を開いた。

視界に入ってきたのは、頭を押さえて苦しんでいるユキの姿だった。


「ユキ!」


突然のルミアの声にシャーロット達は、伏せていた目を上げた。


「ユキちゃん/ユキさん!」

「無事だったのですね・・・良かった・・・」


リーリエは、ルミアが無事であることに安堵した、さらにユキの意識が戻ったことにも・・・


「ウゥ・・・な、なぜだ・・・我が、我が・・・完全に支配していたというのにどうして今更・・・る、ルミアちゃん・・・い、今のうちに・・逃げて!」


魔女の言動の中にユキの言動が垣間見えた。


「ユキ!、ううん、私は逃げない・・・だから、ユキも頑張って!」

ルミアはそういいつつも先に受けたダメージにより、動けずにいた。

「小癪な!我に従え!・・・ぜ、絶対に・・嫌!世界を滅ぼすなんてダメだよ!・・何を、知った風な口を利く・・・我は、私は、大切なものをすべて失った・・・そして、この世界の奴らは、私を暗闇に閉じ込めた。私は、何も悪いことはしていないのに・・・どうして!」


魔女はどうして自分だけが不幸な目に合うのかと・・・次第に、2000年前の闇に飲み込まれる前の少女の言動に戻っていった。


「確かに・・・あなたは、運が悪かったかもしれない。でも、それは、2000年も前の話よ!今を生きている人たちは何の罪もないのよ・・・私たちだって」


ルミアは魔女に向かってそう言い放つ。


「私は・・・私はただ・・・世界をリセットしたいだけ・・・この世からすべての悪意がなくなるように・・・だからっ!」

「だから何?あなたは、私たちと同じ年だったんでしょ?闇に飲み込まれる直前。だったらわかるでしょ?人間に感情がある限り、悪意はなくならないって!」


ルミアが魔女に諭したが、再び魔女の周りの黒い霧が濃くなっていった。


「わかってる!でもこの気持ちは抑えれないの!憎くて仕方ない・・・私をこんな目にあわした・・・この世界をっ!」


自分が報われない世界なんて、消えて無くなればいい。魔女は、自分の気持ちに折り合いをつけれずにいた。





「ルミアちゃん!大丈夫!?」

「ルミアさん!大丈夫ですか!?」


回復を終えたシャーロットとリーリエがルミアの元へ向かう。


「ええ、大丈夫よ。刺された傷は、シャインに治癒魔法をかけて貰ったから。それより・・・」


ルミアはシャーロット達の肩を貸してもらい、ゆっくりと立ち上がった。そして、魔女の方に目を移した。


「それより?」

「ううん、なんでもないわ。後は、ユキを信じるしかないわね。」

「本当に、わたくし達は何も出来ずに見ていることしかできないのですか・・・友達が苦しんでいるのに・・・」


リーリエは、何かを考えるように目線が下に向かう。

そして、何かを思いついたのか突然顔を上げた。


「では、わたくしは」

「ダメよ!どうせ、ユキと同じことをしようと考えているのでしょうけど、させないわよ」


ルミアはリーリエの思考を先回りし、阻止した。


「どうして・・・今もユキさんは苦しんでいますわ。なぜ、止めるのですか?」

「それは、ユキがあなたを救うために身を挺したからよ。それなのに、あなたがまた危険な目に合うと、ユキが行った行為じたい無駄になってしまうわ。そうなれば、ユキはどう思うかしら?」

「それは・・・」

「わたしは、ユキを信じてる。きっと戻ってくるって。さっきも、ユキに助けてもらったから・・・」

「わ、わたしも信じてるよ、ユキちゃんのこと!」


シャーロットは二人の雰囲気に呑まれ、言葉が出せずにいたが、自分もと返事をした。


「ルミアさん、シャーロットさん・・・そうですわね、ユキさんは大事な友達です。友達を信じることも大切ですね。わかりました。わたくしもユキさんを信じます」


リーリエはそういいながらユキのほうに目を向けた。ユキが無事戻ってきてくれることを信じて・・・        


▽         ▽          ▽



(うぅ、ルミアちゃんを確認できたと思ったらまた視界が真っ暗になっちゃったよ。ここどこだろう?早く意識が戻らないとまたさっきみたいに、自分の手で友達をケガさせてしまう・・・何とかしなきゃ)


ユキは暗闇の腕を手前に伸ばしながら、前方を確認しつつゆっくりと歩みを続けた。しばらくして、光が正面から斜め上方向に見えた。まるで、北極星のように・・・


「あっ、出口!?」


闇から抜け出せると信じて、ユキはその光に向かって一生懸命走った。しかし、光に近づいているようにみえない。


「はぁはぁ、まだ?・・・きゃっ!」


突然、光がふくらんでいきユキを包み込んだ。


「うー、眩しい・・・目がチカチカするよ。ここどこだろう?森の中?」


ユキの目が光に慣れ、自分の周りに木が沢山あることを把握する。


「取り敢えず、このまま真っ直ぐに進んで行けばいいよね?」


ユキは木々の間にある、道らしき道を歩き続けた。そして、木造の家屋が遠くに見えた。


「あっ、家だ。もしかしたら、人がいるかも」


ユキは、その家屋に向かって歩みを進めた。




「ごめんくださーい・・・誰かいませんか?・・・留守・・・かな?」

「ひっく・・・ううっ・・・」

「泣き声?」


ユキは家の中から誰かの泣いている声が聞こえたので、恐る恐る家の戸を開けて中を確認しようとした。


ガラガラ


「お邪魔しまーす・・・うっ、なんか鉄臭い臭いがする・・・」



家の中に足を踏み入れたユキだが、中に入ると背中を震わせている少女の後ろ姿を確認した。


「あの子が泣いているのかな?」


ユキはその少女に話しかけた。


「大丈夫?どうしたの?」

「あれ・・・」


ユキが話しかけると、その少女は家の奥を指さしながら答えた。

ユキはそのまま家の奥に歩いていった。


「うっ!」


そのまま歩みを進めてユキが見たものは、男と女が血を流して倒れていた姿だった。

男の人はその女の人を守ろうとしたのだろうか?男が女に覆いかぶさっており、剣が2人を串刺しにしていた。


「お父さんもお母さんも死んじゃった・・・ライアもエリスも・・・村の人、みんな死んじゃってた。わたし、みんなを守れなかった・・・もう、こんな世界で生きていく意味なんてない・・こんな世界滅べばいいのに・・」


ユキはその少女の言葉にデジャブを覚えた。

(これ、図書館にあった常闇の魔女の話と似てる?もしかして、この少女は魔女になる前の姿?ここが過去なら、この子の魔女化を阻止すれば今を変えられる・・・かも)


「滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ滅べ・・・あぁっ!」


少女に黒い霧がまとわりついてきた。


「まずい、このままじゃ・・・」


ユキはその少女に触れようと手を伸ばした。


「熱っ!」


少女にまとわりついている黒い霧が熱を帯びていたため、ユキは反射で手を引っ込めた。


「何これ・・・っ!?」


ユキは少女に触れられず、少女を覆う黒い霧がさらに大きくなっていった。


「うぐっ、ひっく・・・」


少女の頰に一粒の雫が線を引いて垂れていった。


(え?泣いてるの?・・・そうだよね・・・大切な人が死んじゃったら、誰だって悲しいよ・・・)


ユキはその少女の気持ちを分かる気がした。そして、誰にも手を差し伸べられず、そのまま悪者として扱われている。


「うぐぁあああああああああああああ」


少女の泣き声が突然叫び声に変わった。


「まずい!」


ユキは少女を纏う黒い霧の熱さを忘れて、その少女に抱きついた。


「うぐっ、熱い・・・でも耐えられないこともない」


少女は未だ叫び声をあげていた。ユキは少女に抱きついていたが、少女に触れている部分の服が焼けはじめた。それでもユキは少女を落ち着かせようと必死だった。


「あなたが・・・うぐっ、今、闇に呑まれたら・・・世界を滅ぼす魔女になるんだよ・・・はぁはぁ、それはあなたがあなたが望むことなの?」


「あああああああああああああああああっ!我は、我は、そうだ・・・それが我の望み・・・この世界を終わらせる!」


少女はユキの言葉を返答したが、それはユキの望む答えではなかった。


「どうして・・・どうして、わからないの!」


バチン!


ユキは涙を浮かべながら、少女の頰に平手打ちをした。


「うぐっ、我は・・・わたしは・・・」

「しっかりして!あなたが世界を滅ぼすことを両親や村の人達は望んでいないはずだよ!だから・・・目を覚まして」

「われ・・・わたしはっ!」


ユキの言葉に答えるように、少女に纏わりついていた黒い霧がだんだんと薄くなっていった。


「私は、ただ皆と笑いあい、楽しく過ごしたかっただけなのに・・・こんな最後・・・あんまりだよ」

「わかる、わかるよ、その気持ち・・・でも、あなたが村の人達を弔わなきゃ・・・安心して天国へ行けるように」

「うん、そうだね・・・私、間違ってた・・・ありがとう、お姉さん」


少女は涙を浮かべながら、ハニカムようにユキに笑顔を向けた。


「お姉さん・・・」


ユキは自分の体を見回した。異世界に来た時は15歳だったが今は、来る前の姿に戻っていた。


「ぷっ、お姉さん・・・それにしても変な格好、あははっ」


ユキの衣服が至る所焼け落ちており、酷いありさまだった。ユキは、頬を赤く染め、弁解する。


「それはっ、あなたを助けようとして・・・」

「うん、分かってるよ・・・本当にありがとう。じゃあ、もう行かないと・・・」

「え?行くって・・・どこに?」

「皆のとこ」


少女は、立ち上がりユキの方を向いて微笑みながら答えた。そして、少女に光が帯びはじめた。まるで少女を迎えに来ているかのように。


「そっか・・・じゃあ、元気でね」

「うん、バイバイ・・・それとありがとう」


そう言うと少女は、光の粒となって消滅した。


「わたしも行かないと、ルミアちゃん達が心配してるよね・・・」


ユキが建物を出ると周りの空間に亀裂が入り始め、光につつまれていった。


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