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14.シャインの提案

「それで、提案ってなに?シャイン。」

[そうですね、わたくしがあの子の心に入り込みます。そうすれば、光と闇の均衡がたもたれ、魔女の魂を外に出すことが容易くなります。闇の力に偏るほど魔女の魂の定着が強固なものになりますが、逆もまた然りです。]


え?そんな事できるの?精霊の加護を一時的に他人に移すってことだよね?


[出来ますよ。過去に、こき使うご主人様が嫌になり、逃げ出した精霊がいますからね。契約後も精霊の加護を無くす可能性も無くはないのです。]


そうなの? ……ってわたしの心を勝手に読まないでよ!


[そんな呑気なことを言っている場合じゃありませんよ!時間がもったいないので、あなたの心を読んで先に答えました。では、ここからが重要な話です。よく聞いてくださいね。]


わたしの文句が軽く受け流されてしまったが、シャインの重要という言葉を聞いて、はっと息を呑んだ。


[わたくしがあの子の中に入り込めば、ユキは光の属性が失い無防備になってしまいます。そうなれば、追い出された魔女の魂は、今度はユキに乗り移ろうとするかもしれません。]


え?


[あなたの意識を保つことができるかが大事です。出来ますか?もし、自信がないならこの作戦を実行しない方がいいと思います。]


わたしは少し悩んだ。

割とわたしって心が強い方じゃないんだけどなぁ……

でも、リーリエちゃんみたいに大事な家族はこの世界にいない。この世界における大事なものは、学校に通うことによって出来た友達だ。

そして、その友達の一人が苦しんでいるのに、せっかくの作戦に否を唱えることが出来るだろうか? ……

いや、そんなこと出来ない!

わたしは、心の中で覚悟を決めた。


「シャイン!やる!せっかく、リーリエちゃんを救える可能性が示されたんだもん!やらなきゃ、後悔してしまうよ。」

[ですが……]

「わたしは、やるよ!きっと、大丈夫だよ!わたし、この世界の人間じゃないし。」

[はぁ〜、わかりました。でも、油断は禁物ですよ?]

「うん!わかってるって。」

[では、一瞬でもいいので、あの子、リーリエさんに触れてください。]

「触れればいいんだよね?わかった。」


わたしはすぐにルミアちゃん達の元に向かった。

「おまたせ!もう、リーリエちゃんのお父さんは大丈夫だよ。それで、わたしに考えがあるんだけど、リーリエちゃん、いや魔女に隙を作って欲しいんだけど……」

「わかった、ユキ。何をするのかわからないけど、隙を与えればいいのね?」

「わかったよ!ユキちゃん!」

ルミアちゃんとシャーロットちゃんは理由も聞かずに協力の意思を示してくれた。

まぁ、別に、やましいことをするわけじゃないし、理由を聞かれても大丈夫だと思うけど……

理由を聞いて反対されても困るしね。

わたしはルミアちゃんやシャーロットちゃんが了承してくれたので自分のことだけに集中することにした。


「シャイン?準備はいい?」

[はい、こちらは準備は出来ていますので、いつでもいいですよ。]

シャインの準備が整ったことを確認すると、わたしは再びルミアちゃんたちの方を見た。

リーリエちゃんを抑えるのに苦戦しているようだ。

もしかして、またリーリエちゃんの意識が魔女に飲み込まれた?

早くしないと!

わたしはルミアちゃんたちが魔女の意識を引いているうちに、魔女の後方に回り込んだ。


いまだ!

わたしはルミアちゃんたちが魔女に与えた隙を見逃さず。魔女、リーリエちゃんの背中に触れた。

お願い、シャイン!

[わかりました。ユキも魔女に食べられないようにしてくださいね。]

シャインがそういうと、わたしの手を経由してリーリエちゃんの中に吸い込まれていった。


「ぐはぁ、あ、あなた何をしたの?」

こちらをゆっくり振り向いて、睨みながら魔女は問いかけた。

こ、怖いよ!

それでもリーリエちゃんの意識が前みたいに戻ることを期待して、呼びかけた。

「リーリエちゃん!今なら魔女を追い出せるかもしれないよ!しっかりして!」

わたしは、いや、わたし達は、リーリエちゃんに呼びかけ続けた。

「ウフフ、少し我の力が光の属性で弱くなったみたいだが、この子の意識が戻ることはな……」

魔女の言葉が途中で途切れた、そのときリーリエちゃんの身体から光があふれ始めた。

「な、なんだ!これは……ぐはぁ、や、やめろ」

すると魔女は苦しみ始めた。そして、魔女は倒れ込んだ。

これって大丈夫だよね?リーリエちゃん自信が魔女を追い出せないと詰んでしまうんじゃ……

もう手がないから、信じるしかない…リーリエちゃん頑張って。

わたし達は、見守り続けた。

魔女がのたうちまわっている勢いが弱くなっていた。

その時、リーリエちゃんの身体の中から、黒い靄のようなものが飛び出してきた。


「くそっ!計算外だ。我の力を凌駕する光の精霊を持つものがいるとはな……」

黒い靄から声が聞こえたが、おそらくそれが魔女の思念体なのだろう。

「やったわね!ユキ!」

「やったね!ユキちゃん!」

「うん!」

わたし達はすぐに倒れ込んでいるリーリエちゃんの元に行こうとしたが、魔女の思念体が行く手を阻んだ。

「ふ、ふふふ…フハハっ!よくも我の計画を邪魔してくれたな…。こうなったら、あなたに乗り移ってやるわ!」

「きゃあ」

「ユキ!」

「ユキちゃん!」

わたしの周りに黒い靄が纏わり付いていた。そして

次第に、わたしの意識がおぼろげとなっていった。



▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼



うぅ…。

ここは?

目を開くとわたしは、木造の小屋の床に横たわっていた。

え?あれ?

わたしは、今まで何を……

確かルミアちゃんとシャーロットちゃんとでリーリエちゃんを助けようとして……

それから、それから……えっと……

もしかして、今までの出来事はわたしの夢?

「あっ、そうだ、今の時間は……」

ポケットからスマホを取り出そうとした。

「え?あれ?ない…」

わたしは、大慌てで自分のスマホがどこかに落ちていないか探した。

「あ、あった〜。良かった〜。」

思いの外、自分の近くに落ちていたので、すぐに見つけることができた?

スマホを見ると19時21分を示していた。

「あ、やばい。もう夜!?早く帰らないとお兄ちゃんが心配しちゃう。」

わたしはすぐに外に出て、自転車で帰路についた。


「ただいまー。あれ?電気付いてない?でも鍵開いていたし…。もしかして、鍵をかけずに出掛けちゃった?」

わたしは、そのまま部屋に入った。

なんか、変な匂いしない?

気のせいかな?

そのまま、電気のスイッチを探し、明かりをつけた。

すると、今まで真っ暗で見えていなかったが、ソファの陰に人の足が見えた。

「お兄ちゃん、寝ちゃったのかな?」

わたしは、お兄ちゃんが床で寝ると風邪引いちゃうと思ったので、お兄ちゃんを起こそうとした。

「ねぇ、お兄ちゃん?こんな所で寝てると風邪引いちゃうよ?」

お兄ちゃんの身体を揺さぶった、次の瞬間。

ぬるっ

え!?

なんだろうと思い、自分の手を見るとその手は赤く染まっていた。

「これって…血?うそ!お兄ちゃん!しっかりして。」

「うぅ〜、ゆ、雪菜か?」

「だ、誰にやられたの?」

「わ、わからない。いきなり黒い影が現れて通り過ぎたと思っていたら…ハァハァ……腹にナイフが刺さっていたんだ…ぐはぁ」

「待って、今、救急車を呼ぶから!」

わたしはすぐにスマホを取り出したが、すでにスマホの電池が切れていた。

「どうして、こんな時に!?」

今度は家の固定電話の方に向かったが、電話線のコードが切られていて使い物にならなかった。

わたしは外に助けを求めようと扉を開けようとするが………

ガチャガチャ

え?

「どうして…だ、誰かー、救急車を呼んでください!お兄ちゃんが誰かに刺されたんです。助けてください!」

ドア越しに叫んだが誰も反応してくれない。

「うそっ、このままじゃ、お兄ちゃんが……お兄ちゃんが……死んじゃう。どうして!どうして…ドアがあかないの!?」


ガチャガチャガチャガチャガチャ


「雪菜……もういいよ。ハァハァ、そ、それよりもこっちにきてくれないか?」

わたしはお兄ちゃんの元に駆けつけた。

「ゆ、雪菜。俺はもうダメかもしれない。ハァハァ、最後にお前の顔を見れてよかった…」

自分の血で真っ赤に染まった手でわたしの頰をなでながらそう言った。

「もうダメなんて言わないで!お願い死なないで…」

次第になでる力弱くなり、腕が力なく崩れ落ちた。


「いっ、いやーーー」


その時、わたしの視界が真っ黒に染まった。

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