10.魔法そして発生
私たちはルミアちゃん達の伝言を聞き、4人で先生のもとへ戻った。
「お、リーリエ、戻って来たのか。魔術の授業に参加できるのか。」
「はい、先生。ご心配をかけました。ユキさんと話をして気分が晴れましたわ。」
「そうか、じゃあ早速だがお前たちに魔術というのをみせてやろう。」
やったー。どんな魔法なんだろう?
わたしは、初めて間近で見ることができる魔法に興奮していた。
「最初は、赤の精霊の力だ。赤の精霊は、主に火や熱を司るから火をつけたり物に熱を加えたり奪ったりすることが可能だ。じゃあ、いくぞ!」
と言った後、先生は口を少し動かして呟くように詠唱をしていた。わたしは口を動かしたら、読唇術を心得ている人に何を言っているかバレるんじゃないかと思ってしまった。
まぁ、読唇術を使える人なんて、そうそういないよね?
先生の詠唱が終わると先生の真横に一つの火の玉が生じていた。
「これが赤の精霊の力だ。これはな、攻撃に使えて便利なんだみとけよ!そらっ!」
火の玉が地面にぶつかり、そこには小さな穴が生じていた。
すごい威力……。
人に当たったら怪我だけじゃ済まないんじゃ……。
(あれは、ファイアーボールっていうやつだな。あたしならあれ以上の威力はだせるぜ。)
え、サラ?
わたしは、ファイヤボールって聞いて、ディズニーのあれを一瞬想像してしまった。違うことは知ってるよ、火の玉を英語でそのまま読んだだけなんだよね。うん、知ってた。
でも、サラ。あれ以上の威力を出したら大惨事だよ?
(大丈夫だって、治癒魔法を使える人がいるから。卒業検定の時は、ぶっ放してやろうぜ!)
サラ、口調がかなり荒っぽくなってるよ!
そんな精霊をわたしなんかが上手く扱えるのかな?少し不安。
ていうか、サラは知っていたんだ、卒業検定があることを。
「まぁ、魔法ってこんなもんだな。赤の精霊の魔法しか見せていないが、あとはお前たちの契約した精霊たちに聞けばいい。それぞれの属性ごとに分かれて練習しろ。ここは、学校だからな失敗したらやり直しができる。だからたくさん練習しろよ。ただし、授業時間中な。それ以外の時間に失敗してしまうと治癒魔術師がいない可能性があるから気をつけろよ。」
こわっ!失敗したら大怪我する前提?
魔法って危険なんだ。
「あ、それとリーリエとユキは光属性持っているから治癒魔法は使えるはずだ。あと闇属性なんだが、あの精霊と極力関わらないほうがいい。闇の精霊なんだが、精神攻撃が得意みたいだ。術者にも悪影響を及ぼす。常闇の魔女の話どうりだと、闇の精霊に精神が飲み込まれると見境なく破壊行為を繰り返すみたいだからな。お前たちは、絶対に闇に飲み込まれるなよ!」
「はい、わかっていますわ。」
「はい、わかりました。」
わたしとリーリエは、普通に返事をしたが何故かわたしは嫌な予感がした。
まぁ、気のせいかな?
さっそく、わたしとリーリエは、二人で練習を始めることにした。
「じゃあ、さっそく始めましょ!ユキさん。最初は、青の精霊さんと光の精霊さんの魔法を練習しましょ。」
「うん、そうだね。でも光の精霊って、治癒魔法が一般的じゃないの?」
わたしはてっきり先生の話からそう思っていた。
しかし、リーリエは
「光の精霊って言うぐらいですもの。周りを照らす魔法があるのではなくて?」と言った。
あ、そうか失念してた。光って言うぐらいだもんね。
「じゃあ、さっそく練習しよっ!リーリエちゃん」
わたし達は、二人で互いに魔法の出し合いをした。
水魔法を使っているとある考えが浮かんできた。
それは、魔法を組み合わせることができるのではないかということだ。例えば水を氷に変えるとか?以前、お兄ちゃんが言っていたけど水から氷に状態変化するとき、水分子がなんちゃらって言って気もするけど忘れちゃった。要するに熱を水から奪えば氷になるよね?
わたしはリーリエちゃんに複合魔法を提案してみた。
「リーリエちゃん、青の精霊と赤の精霊の組み合わせで氷を作れないかな?水から熱を奪って氷に…。」
「大胆な発想ですわね。出来るかもしれませんわ、やってみましょ!」
わたしは、サラとアクアに呼びかけてみた。
さっきの話聞いてた?サラは、水から熱を奪うことはできる?
(ああ、できるぜ。余裕だな。)
本当?じゃあどんなものでも熱を奪うことが出来るの?
(物にもよるが、出来る。)
人からも?
(ああ。そういえば聞いたことがある、赤の精霊と契約した術師が気温が暑いのに耐えられず、自分の体温を赤の精霊の力で冷ましたってな。なんか腹立たしいんだよな、いいようにあたしらの力を使われて。)
へ、へぇー。そ、そうなんだ。
やばい、一瞬いいなと思いかけた。
サラの力を使うときは注意しなきゃだね。
「リーリエちゃん、いくよ。」
わたしはまずアクアの力で水を出した。
取り敢えずシャボン玉みたいに丸めた水を一気に凍らしてみようかな?
サラ、お願い!
(はいよ!)
カキッン
「で、出来た…。」
「す、すごいですわ。では、わたくしも。」
カキッン
「出来ましたわ。」
それから、授業中わたし達は、色々な魔法の組み合わせを試していた。
わたし達二人は治癒魔法をお互いに使えるんだから失敗なんてあまり怖いと感じていなかった、でも痛いのは嫌だけどね。
ここ一週間は、授業中は魔法の練習のみだった。
いつしかリーリエちゃんともかなり仲良しになっていた。そして毎回、リーリエちゃんはわたし達の部屋へ遊びに来るようになった。
ルミアちゃんとリーリエちゃんの組み合わせは、言い争いなどが多かったがいいコンビのように見えた。シャーロットちゃんは、ルミアちゃんとリーリエちゃんの口喧嘩を見守っていた。たまに火に油を注ぐようなことを言っては二人に怒られていたけどね…。
わたし達は充実した日々を送っていたのだが……
教養の授業中に一発の爆発音が轟いた
「なんだ、なんの音だ?」
先生は大慌てで窓の外を見た。
他の生徒も次々と……。
そして、わたし達も。
するとリーリエの顔が強張った。
「あ、あの方角はわたくしの屋敷があるところですわ。」
え、うそ…
「お前ら、ここで待機しとけ少し見に行ってみるから、絶対に外に出るなよ。特にリーリエ、心配なのはわかるが決して外に出ないように!」
と言い残して先生は行ってしまった。