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第一話 出会い

「まさか裸で放り出されるとは…まあ葉っぱとかつけときゃいいでしょ」


転生して早々裸とは…けど


「魔力もあるし…力はどうだろうか」


俺はそのへんの石を拾って海に思いっきり投げてみる。すると、あっという間に石は見えなくなるほど遠くへ飛び、その風圧で海が割れた…


「ふむ、力はそのままか…あとは船に当たらないことを祈ろう。恐らく近くを石が通るだけで海に飲まれるからな」


一通り出来ることを確認したところで前世の記憶を辿ってみる。


「前世はディーン、その前は…山岸哲也、出身は京都で中小企業の社員…妻子なし…32で…あ、軽トラに轢かれたんだったな。」


当時の俺はとある中小企業に務めていた。女性との縁もなく、いつも通りの会社の帰り道…完全に向こうの信号無視だった。


「それで…なんかあなたは勇者の素質があるから〜うんぬんでディーンとして…なるほど、完全に忘れていた」


どうやら前世の記憶は間違いなく戻っているらしい。


「…裸ってこと以外は最高だな。けど後ろのこの雑木林といい…まさかとは思うが…、」


俺は村人がいるかもしれないことを配慮し、インビジブルを使い思いっきりジャンプする。

すると…


「マジかよ…無人島やないか…。」


俺は頭を抱える…


「なんかランダムとか言ってたけど…これはまずい…。」


移動魔法や創成魔法などがあれば服も…何だったら前世の知識でキッチンやら出せるんだけど俺にはその魔法は使えない。それらが使えるのはよほど魔術に優れているもの…まあ平たく言えば魔族などだ。


「どっかに魔族いねーかなぁ〜…って、この世界に魔族がいるかも分からんけど…とりあえず島を一周するか。」


上空から見たところ島の大きさはそれほど大きくはない。日本でいうと沖ノ島の…半分って所だ。

沖ノ島は昔から神聖な島として普段は立ち入り禁止になっている島だ。オカルト好きの俺からすれば好奇心が掻き立てられるロマン溢れる場所でもあったためよく調べていた。


「けど…何だろ…落ち着く所だな。見たところ人もいないみたいだし」


そう呟きながら歩いていると、海から人が上がってくるのが見えた。


「は?まじ?人!?第一村人発見か?!」


俺は裸ということを忘れて走り出す。今思えばかなりの変態だっただろう。裸の男が走ってくるのだ。恐怖でしかない


「おーい!そこの…」


そう言いかけたところで俺は目を疑った。

頭からは耳が生え、犬の尻尾を生やした女の子がこちらを見つめていた。白くやわらかそうな肌に体に少し胸の膨らみがある…そう、この少女も裸であった。


「は、ははっ裸!?」

「何を言う、お前も裸ではないか。」


その少女は恥ずかしがる様子もなく俺と会話を交わす。


「い、いや…そうだけど。」

「それに少女にそのようなイチモツを見せるではない。汚らわしい」


えらく大人びた口調の少女はまるで誰かの体を乗っ取っているかのような話し方をする。

そんな事はいいとして俺は急いで手でソレを覆う


「…君はこの島に住んでいるのかい?」

「いや、さっきこの島に飛ばされてきたばかりだ。と言っても、信じないだろうが…」


ん?飛ばされてきた?


「いや、実は俺も気がついたらこの島にいて…」

「ほう、貴様もか。私は転生…とやらでこの島に来たみたいだが…なにぶん魔力もすっからかんでな。やることがないので少し海に浸かっていたところだ」


転生?俺と同じ転生者か?そんな偶然が…まさかとは思うが…


「変な事聞くけど、転生される前は何をしていたのかな?」

「その聞き方…転生とやらを知っておるようだな。」


まぁ転生って言葉はバリバリ日本語だからな。意味くらいわかる


「私はとある軍隊を率いる王だったのだ。だが、夢半ばでその野望は潰えたのだ…。」

「……魔王」


すると少女は驚いたようにコチラを見つめる。澄んだ青い瞳にほのかにピンク色の唇。何もかも整った完璧美少女だ。もう少し年がいってたら確実に惚れているだろうな。


「貴様…スノーフィアのものか…!!」


スノーフィアとは俺の…()()がいた世界の名だ。五つの大国と、魔王の国に分かれ常に戦争をしてきた。


「やっぱり…数日ぶりだな。魔王」

「まさか…勇者…か?」

「…あぁ!勇者ディーン様だ!」


ここで俺は警戒態勢に入る。自分を殺そうとした宿敵が目の前に相対しているのだ。いくら魔王でも魔力が使えないのなら聖剣の無い俺にも分がある。


「そうか…お前も結局死んだのか」

「あぁ、王女様の裏切りでな…まんまと嵌められたもんだ」


すると少女は高らかに笑う。


「ははははは!」

「?何がおかしい」


すると少女はニコッと笑う。その笑顔は、元魔王とは信じ難いほどだった。


「あぁ、そうか、お前も開放されたのだな。あの柵から」

「しがらみ?」

「お前は勇者として、私は魔王として、あの世界の秩序を保ってきた。俺とお前が死んだ後も、またあの世界では新たな魔王と勇者が誕生するだろう。」


何の話をしているのだ?秩序?新たな勇者と魔王?なんのこっちゃ


「お前は…前世の記憶を持っているか?勇者として生まれる前の記憶だ。」

「…あぁ、この世界に転生される時に思い出した。」

「そうか…俺には魔王としての記憶しかない。魔王だった頃はあったのだがな…」


こいつも転生者だったのか…


「前世で死亡した私は神の命により転生し、魔王となった。279年という長い年を過ごし、魔王としての役目をはたしてきた。そしてお前に…いや、正確にはお前の連れてきた()()|にだな。」

「あれは俺もびっくりしたさ。まさか裏切られるとは…」

「ふむ、しかしもう済んだことだ。わたしはこの世界でゆっくり過ごすとしよう」

「それには俺も賛成だ」


そして俺は一つの案を魔王に提案した。


「なあ、この世界、まだ何があるかわからないし…一緒に暮らさないか?」


まったく情報がないこの世界で一人は危険だ。何より服がない。移動手段もろくにない。移動魔法は俺も使えるが一度行った場所のみ可能だ。それを無視して移動するにはかなりの魔力量を有する。できるのは魔族、それも幹部や魔王クラスだ。今はこの元魔王様を頼るほかない。魔力がないのが不安だが…


「む?もちろんそのつもりだ。前世の記憶があった魔王時代とは違い、いまは魔族としての知識しかない。存分に頼らせてもらうぞ?勇者よ」


おどろいた。断られると思っていたが…


「なんだ、意外だったか?そもそもこの姿になったのも魔族としてだけではなく、人として生きてみたかったからだ。まあ、この耳と尻尾は飾りみたいなものだ。」


そういってしっぽと耳をひょこひょこさせる。お前ホントに元魔王かよ…

めちゃくちゃかわいいな


「そういうことなら、これからよろしくだな!」

「ああ、よろしく頼む」


俺たちは軽く握手を交わす。忘れているがこの二人、裸である。


「さてまずは…」

「ああ、まずは…」


二人は顔を見合わせ同時に話す


「「飯だ!!」」















次からちょっと話進むよ

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