表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

手頭螺ポット

作者: 聖徳ゴブゴメリ

1995年

この世にフタツの命が生まれました。

かい手頭螺てとらと名付けられました。

一卵性双生児、その響きは現在、何もかもが同じで似すぎている子供を思い浮かべるでしょう。

しかし、此処に何かしらの理由で全く似ても似つかない二人が存在させられてしまったのです。


海は普通の人間の赤ん坊の形で生まれましたが、手頭螺は違いました。

脳みそは普通の五分の一程度、手足は胸や頭の後ろなど変なとこから四本生えている。

その姿が容貌が、テトラポットを創造させました。

親はその姿に手頭螺と当て字で名付けました。

海とテトラポット。そんな名称で呼ばれる二つの人間を神様は存在を意義づけたのです。


海はとても大切に大切に育てられました。手頭螺は姿形は違えども、健康で生きていくことはできました。

しかし、その子を育てる責務のある親は育児を放棄したのです。

それどころか手頭螺をまるで、生き物として扱いませんでした。

生みの親は手頭螺を風呂敷に包み、何度も壁にぶつけました。

手頭螺はもちろん痣だらけになり、骨は折れ、内臓や神経までも傷つけられました。

それでも手頭螺は強く粘り強く、生き抜きました。

天から授かった命を命懸けで守り抜いていきました。

一方、海は二人の親の大きな愛の下で、すくすくと育っていきました。

ハイハイができるようになり、立てるようになり、歩けるようになり。

言葉を発せるようになり、文字を読み書きできるようになり。

海は自分の片割れの手頭螺を気にしていました。

風呂敷に包まれたままであったり、出されたときには醜態が露わになりました。

海は少しずつ手頭螺を助けるようになりました。

風呂敷から出したり、体を拭いてあげたり、言葉を教えてあげたりと。

手頭螺も少しずつ成長し、声を発したり、動けるようになってきました。

脳みそが奇跡的に一般的な子供の八割程度まで発達し、五感を使って様々なことを自ら学び出しました。

海は自分が覚えたこと全てを手頭螺にひたすら教え込みました。手頭螺もそれを必死に憶えようとしました。

それでも、親は海ばかりを大切に育て、手頭螺をほとんど放置していました。

生まれてから見事なまでに成長してはいるものの、姿は、、やはり人間とは言い難いものでした。


海と手頭螺は小学校に入学するときとなりました。

海は何事もなく他の普通の子たちと同じクラスになりましたが、手頭螺は障害児として常に養護教諭が付き、車椅子で少しずつ色々なことを学ぶと言うことになりました。


海は毎日全ての休み時間に手頭螺のとこへ生き、トイレや教科書の準備など世話をしました。海はそのため仲のいい友達ができませんでした。

親はその様子を先生から聞き、海に手頭螺の世話よりも自分が好きなことをやりなさいと言いました。

その時、海は急に暴れ出し、物を投げたり蹴飛ばしたりしました。親が海を落ち着かせ、話を聞くと、手頭螺は人と違う、でも一生懸命なんだよと言うんです。

海の眼は涙で溢れていました。

その時、親は今まで行ってきた過ちをやっと気づかされました。何があっても耐え抜き、強く生きる手頭螺をほとんど育児放棄していたことを後悔し、手頭螺にどんなに謝ろうと後の祭りだと。

手頭螺が学校から帰ってきた時、両親二人で手頭螺をきつく抱きしめました。


「ごめん、、ごめんね、、本当にごめんね、、今まで、、、」


これからは手頭螺を大事に大事に育てることを、我が子を死ぬ気で守り抜くことを誓いました。


涙を地面に落とし続け、ずっとずっと抱きしめました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ