剣姫
第九話です!!予告道理の戦闘回です。短めではありますがお楽しみください。
日和と彼方の不安の元凶たる暗満常夜は道に迷っていた。
「うーむ、これは困った。どうやら道に迷ったらしい。一般人を無視したのは失敗だったか。一人くらい案内役をとらえておくべきだった。」
「ならばその役目、私が引き受けよう。」
そんな暗満に声をかけるものがいた。そう、白百合紅羽である。
「おお、それはありがたい。いやはや、学校とは思ったより複雑な形状をしているのだな。この年になって迷子になるとは、情けない話だ。それで、美しいお嬢さん、君は誰だい?」
暗満は何の気負いも見せず、自然に問いかける。
「何、ただの案内役だよ。地獄までのな!!!」
ダッ!!
そう答えるやいなや、紅羽は暗満との距離を一瞬で縮め、腰の刀を勢いよく抜刀し居合切りを見舞う。刃がすさまじい速度で暗満に襲い掛かる。しかし、暗満は表情一つ変えず、懐か取り出した数枚の札を宙に放り出し、言霊を唱える。
「我ヲ守護セヨ」
その途端、無造作に放り出された札がきれいな五角形を描くように配置され、強力な結界を生み出す。しかし、紅羽は並の呪師ではない。勢いを多少そぎ取られたものの、人一人を制圧するのには十分すぎるほどの威力を保ったまま結界を切り裂き、暗満に襲い掛かる。暗満の顔に驚愕の表情が浮かぶ。
「チッ」
暗満はバックステップで回避を試みる。しかし完全に回避することはかなわず、頬にわずかな切り傷を負った。
「これは驚いた。即席とはいえ、私の結界をたやすく切り裂き、あまつさえ一撃入れてくるとは。恐れ入ったよ、お嬢さん改めて名を問おう。」
頬から流れる血をぬぐい、先刻までとは別人のように真剣な表情を浮かべた暗満は尋ねる。
「貴様のような外道に名乗りたくなどないが、名を問われて答えないのは礼に反する。白百合家次期当主、白百合紅羽だ。覚える必要はない。」
紅羽は警戒を解くことなく、単調に告げる。
「白百合?ほう、では君がかの有名な“剣姫”というわけか。ふむ、本番前の予行実験を行うのも悪くはないが、剣姫相手では分が悪い。ここは一旦引かせてもらうとしよう。」
「私を相手にして逃げられるとでも思っているのか?」
「ああ、思うね。君は、私を逃がさざるを得ないからね!!」
暗満はポケットからビー玉くらいの大きさをした白い球体を大量に取り出し、一斉に地面にたたきつけた。紅羽は即座に回避行動をとり、暗満との間合いを広げる。しかし、紅羽を襲ったのは攻撃的な呪ではなく、大量の煙幕だった。
(目くらましか、小癪なまねを・・・・・・いや、これは!!)
「ククク、どうだい?私オリジナルの呪具“穢レ玉”だ。これ一つで中級の邪魅を一体生み出すことができる。すごいだろ?さて、“剣姫”殿?私よりも優先すべきことがあるようだが。邪魔をしては悪い、私はこれにて失礼するよ。」
暗満の気配が薄れていく。
「くっ、待て!!」
紅羽は暗満が立っていた場所を切りつけるが、すでにもぬけの殻だった。
「くそっ!!私としたことが。」
冷静沈着な紅羽にしては珍しく、声を荒げた。しかし、周囲の状況を察するとすぐに冷静さを取り戻した。
「やつめ、面倒なものを残してくれたな。」
紅羽の周りには、数十体もの邪魅がたむろしていた。
第九話でした。いやー、戦闘描写って難しいですね。読んでいただけたならお判りでしょうが、下手なことこの上ないです。バトルものを書かれている先達の方々には感服いたします。
作者の中ではもっとスピード感あふれるバトルになっているのですが(;´・ω・)
感想でアドバイスなどいただけたら幸いです。
今後とも精進してまいりますので、どうかよろしくお願いします。