制裁
今回はギャグ回です。
さて、生徒会室を後にした小太刀が何をしていたかといえば
(うわー、やっちまったよ。絶対ドン引きされてるよ、俺。)
自己嫌悪の真最中なのであった。
(昔の名前にいつまで固執してんだか、我ながら情けない。俺はもう神具の呪師じゃない、ただの影森小太刀だ。それでいい。)
己の中で結論を出し、小太刀は時間を確認した。昼休みが終わるまでまだ20分ほどある。屋上に戻ってお茶を飲むくらいの時間はある。小太刀は判断し、屋上へ向かった。
「お帰り、お兄ちゃん。早かったね。」
小太刀が屋上に足を踏み入れると彼方が声をかけてきた。
「ああ、依頼品を渡すだけだからな。そんなにかからないよ。あ、日和。お茶くれ。」
「はい、どうぞ。こーくんが戻ってくるかもって思ってたからちゃんと残しておいたよ。」
日和はほんわかとした笑顔を浮かべ、小太刀にお茶を手渡した。
「さんきゅ。あー、うまい。さすが日和だ、いいお嫁さんになれるぞ。俺が保証しよう!」
「も、もう!褒めても何も出てこないよ。でもありがと、こーくん。うれしい。」
日和は幸せそうに頬を赤らめながらこたえた。
「なんか私たち」
「かやのそとですねぇ。」
彼方と狐孤は所在なさげに呟くのだった。
放課後、小太刀は日和、彼方といういつものメンバーで帰路に就く。三人とも部活動には所属していないため、時間が合わないことはほとんどない。いつも道理の帰り道、今朝方の日和のお願いどうりに買い物に付き合い、のんびりと帰る・・・・・・はずだった。その幻想は彼方の何気ない一言によってぶち壊されるのだった。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。」
「何だ?彼方。」
「一つ聞きたいんだけどさ、お小遣い、何に使ったの?この間聞いたときは、まだ余裕あるって言ってたよね。」
「そういえば、こーくん今朝は何も言ってなかったね」
ピタリ、小太刀が歩みを止める。小太刀の全身から冷や汗が噴き出す。
(ご主人様、どうなさったのですか?そんな青い顔して。今にも倒れそうですよ。)
狐孤は小太刀の脳に直接語り掛ける。(ストラップモードの狐孤は念話の呪を使用することで小太刀たちとかいわするのだ!!)
「え、いや、あれだよゲームだよゲーム。新作の発売日が重なったんだ。」
「ふーん、何のゲーム?まさかお兄ちゃん、マエミタイナイカガワシイゲームジャネイヨネ?」
彼方の背後に般若のシルエットが登場し始める。小太刀は己の不利を悟り逃走経路を模索する。アイシールドをつけたどこぞのアメフト選手よろしく、一筋のラインを発見した小太刀は全身の筋肉をフル稼働させて逃走を図るが・・・・・・。メキャ!という音と共に何者かに肩を掴まれてしまう。小太刀は恐る恐る後ろを振り返る。そこには、なまはげと化した幼馴染がいたのだった。
「ねぇ、こーくん。約束したよね?もうエッチなゲームは買わないって。どうして約束破っちゃうの?ねぇ、どうして?」
「いやですね、日和さん。わたくしも健全な男子でありまして。そういうことには少なからず興味をそそられてしまうのですはい。」
「でも約束したよね?」
「いや、だから。」
「し・た・よ・ね?」
「はい、しました。すみませんでした。」
命の危機を感じ取った小太刀は道端であるにもかかわらず即座に土下座した。
「お兄ちゃん、最低。しかも土下座とか、プライド無いの?」
「妹よ、プライドで飯は食えん。プライドも命があるからこそもてるのだ。」
「こーくん、まだ話は終わってないよ?おしゃべりはダメだからね。」
(狐孤!ご主人様のピンチだ!何とかしろ。)
(無理です。)
(はや!せめて少しは葛藤しろよ。てかお前仮にも神だろう。)
(神様でも無理なものは無理です。とゆうかご主人様、自業自得じゃないですか。)
(薄情ものめ、ばけてでるからな!)
(どうぞご自由に、その時はわたくしが責任をもって黄泉平坂までお連れします。)
(やめて!お前本当にできそうだから!)
「こーくん?狐孤さんともしゃべっちゃダーメ。」
狐孤との念話を見抜かれ愕然とする小太刀、小太刀はそのまま人通りの少ない裏路地へ連行され、意識を失った。小太刀が目を覚ましたのは翌朝のことだった。そしてゲームを根こそぎ没収され、失意の淵に沈むのであった。
第五話でした。いかがでしたか?