生徒会長
今回はいつにもまして短いです。ごめんなさい。
小太刀は生徒会室に前にきて、無駄に豪勢な飾りが施された扉をノックした。
「どうぞ」
ハスキーな女性の声を確認すると、小太刀はすぐに扉を開いた。
「失礼します、2年1組の影森です。会長、例の物をお届けに参上しました。」
「おお、待っていたよ。影森君。しかし、その言い方はよしてくれ。いかがわしい取引をしてるみたいじゃないか。」
女性は苦笑しながら、ハスキーな声で答えた。手入れの行き届いた美しい黒髪、スタイルも抜群。凛とした顔立ちからは気品があふれ出ている。大和撫子を体現したような美人。彼女こそが小太刀の依頼人、聖鵬学園生徒会長、白百合紅羽その人である。
「冗談ですよ、会長。はい、これが以来の品です。確認していただけますか?」
例の小刀を紅羽に手渡す。
「うむ、拝見する。」
紅羽は小刀を受け取ると真剣な表情になり、見分を始めた。紅羽はおもむろに刃を鞘から抜いた。そして目を見開き、言った。
「これは素晴らしい。想像以上だ、思わず見とれてしまいそうだよ。」
彼女がそう評するのも無理はない。刃はまるで磨き抜かれた鏡のように輝き、紅羽の顔を映し出していた。10㎝しかない刃はそれでいて大きさ以上の存在感を放っている。たとえ素人であってもこの小刀を業物と見抜くことは容易である。そう思わせるほど素晴らしい出来栄えであった。
「お気に召したのなら何よりです。ああ、蛇足かもしれませんが一応忠告しておきますね。その刀、滅多なことでは抜かないでくださね。危険ですから。」
小太刀は厳かに告げた。
「わかっているよ、これほどの業物だ。そうやすやすと抜いたりはしないさ。それに私とて呪師のはしくれだ、こいつがただの業物でないことぐらい承知している。」
そう、白百合紅羽は呪師である。呪師の連合組合「呪言会」から聖鵬学園周辺の管理を任されているのだ。(ちなみに小太刀と彼方は呪言会に所属していない。)
「あなたが端くれなら世の中のほとんどの呪師は見習い以下でしょうに。」
仮にも組織から一つの土地の管理を任されているのだ、白百合紅羽は優秀な呪師なのだ。
「そんなことは無いさ、私とてまだまだだ。さて、では報酬を支払おうか。しかし、自分からこの金額を提示しておいてなんだが、本当にいいのか?この刀ならこの10倍出しても惜しくないぞ。」
「今更ですよ。あなたは報酬を提示し、俺が納得したから仕事を受けた。それだけです。」
「まぁ、私としてはその方がありがたいからいいのだが。いやはや恐れ入ったよ。さすがは神具の呪師d!!?」
紅羽はその言葉を最後まで紡ぐことができなかった。「神具の呪師」その言葉を口にした途端すさまじい殺気が彼女を襲ったからだ。
「その言葉、軽々しく口にしないでください。俺としてはあなたとこれからもよい関係を保ちたいのです。あなたはどうですか?」
返答次第では即座に殺す。紅羽は暗にそういわれた気がした。そう思わせるほどの殺気を小太刀は放っていたのだ。
「あ、ああ、私も君とは仲良くしていたい。すまなかった、謝罪しよう。私が軽率だった。」
紅羽は冷や汗を全身でかきながら震え声で答えた。その瞬間それまで感じていた殺気が嘘のように消え去った。
「ならいいです。では、報酬を。」
「!!ああ、これだ、確認してくれ。」
報酬が入った封筒を手渡すと小太刀は中身を確認し、ほくそ笑んだ。
「確かに、では、今後ともごひいきに。あ、そうそう言い忘れてましたけどその刀、まだ無銘なんです。会長が名付けてあげてください。」
小太刀はそういうとそのまま生徒会室から姿を消した。
「ふぅ、君に比べれば、私など見習いの見習い以下だよ、影森小太刀君。」
紅羽は誰にも聞こえないほど小さな声でそうつぶやいた。
小太刀「おい、作者言い残すことはあるか?」
作者 「いや、きりがいいところって考えるとですね、この分量になったわけです。」
小太刀「やれやれ、成長しないな。」
作者「そんなこと言わずに見守ってくれませんか?」
というわけで第四話でした。
小太刀君の新たないちめんがみられるお話です。さあ、物語が動き出しますよ。
次回もお楽しみに!