学園
本日二度目の投稿です。お楽しみください!
私立聖鵬学園は影森家から徒歩10分ほどの場所に位置している。進学、就職など幅広いニーズに対応したこの学園は県内でもトップクラスの人気を誇る。しかしながら、私立であるがゆえに学費が少々お高い。当初影森兄妹は少し離れた場所にある公立高校に進学するつもりだった。ただでさえ、刃向井家には普段からお世話になりっぱなしなのだ。せめて学費がいらない公立に行こうと影森兄妹で話し合っていた。幸い学力も十分であったため、特に問題はないはずだった。影森兄妹最大の誤算は日和に進路希望調査表をみられたことであった。当然同じ高校に進学すると考えていた日和は大激怒、ついでに刃向井家両親も大激怒。刃向井一家がなまはげ一家に変貌し、影森兄妹をひっとらえたのであった。
「子供がそんなこと考えるんじゃない!!まして私たちは家族だろう。たとえ血はつながっていなくても。それともお前たちは私たちを赤の他人だと感じていたのか?違うだろう。私たち夫婦は生半可な気持ちでお前たちを育てているわけではないんだ。もっと頼ってくれ、もっと甘えてくれ。そうでなければ私たちは刃と峯子にかおむけできん!」
日和の父、刃向井太陽のその言葉を聞き、影森兄妹は感涙し、聖鵬学園への進学を決意したのであった。余談ではあるが、なまはげと化した刃向井一家のあまりの怖さに影森兄妹は恐怖し、、その夜、兄妹は同じベッドで互いに震えながら一夜を過ごしたとか。
閑話休題
そんなこんなで無事聖鵬学園への入学を果たしや、現在に至るのだ。無事に登校した影森兄妹と日和はそれぞれの教室へ向かった。彼方は1年3組小太刀と日和は2年1組である。ちなみに全学年30人一クラスで10クラスが設けられている。みごとなマンモス校ぶりである。小太刀と日和は自分の席に着いた、ここでもお隣さんである。
「ふー、思ったよりぎりぎりだったな。明日はもう少し早く出た方がいいかもな。」
「そうだね、明日はもう少し早起きしてご飯作りに来るね。」
「いつもすまんな、迷惑かけて。いつか必ず恩は返すから。」
「迷惑でも何でもないよ、私が好きでやってるんだから。うーん、そうだなー、じゃあ今日の放課後お買い物に付き合ってくれる?卵が特売なんだよ!」
「それくらいならいつでも。てかこれくらいじゃ恩を返した内に入らんからな。」
「もう、別にいいって言ってるのに。」
「俺の気が済まないの。」
「わかった、じゃあ楽しみにしてるね。」
「おうよ!」
「なぁ、そろそろ突っ込んでいいか?いいよな!?」
「ん?なんだ、鍔鳴かどうしたんだよ、朝から大声出して。」
「鍔鳴くん、おはようございます。今日も元気だね。」
「おはようございます!刃向井さん今日も変わらずお美しい。ってそうかねぇよ!どうしたはこっちの台詞だよ!何朝からイチャラブ空間発生させてんの?自慢か?自慢なのか!?」
読者の方々の気持ちを代弁したこの少年、鍔鳴断は小太刀の中学時代からの親友である。ノリが良く、だれに対しても裏表なく接することから学園内でのの人気は高い。
「いや、イチャラブって何言ってるんだよ。普通に話してただけじゃん。なぁ日和?」
「そ、そうだよ!イチャラブなんてしてないよ。したくないわけじゃないけど。。。。。。。。」
日和は頬をわずかに赤く染め言った。最後の一言は声が小さすぎて小太刀はおろか鍔鳴にすら聞こえていなかったが。
「それみろ、日和もこう言ってるだろ。何度も言ってるけどさ俺と日和は幼馴染で家族なの、
わかる?」
「いや、マジで一回爆発してくれ。ほんとに。」
(ほんとですよねぇ、ご主人様は鈍いくせにおもてになるんですから。)
本人は知らないことだが、小太刀に好意を寄せる女生徒は結構いたりする。特別イケメンというわけではないが、悪くないルックス、ほかの同年代の男子よりも大人びた雰囲気、そして何より優しい。ぶっきらぼうではあるが、なんだかんだで困っている人の手助けをしてしまうのだ。そんなわけで、意外とモテる小太刀なのであった。
「お前のいうことは相変わらずよくわからないな。まぁいいや、ところで今日の一限なんだっけひよ・り・さん?」
「うん、何かな?こーくん。今忙しいから手短にお願い。」
ご機嫌ななめな日和がそこにいた。
「いや、一限なんだったかなーって思いまして。はい。」
「数学だよ、ほら、早く準備しないと。」
「あ、はい。」
(まて、落ち着け俺。何をしたかはわからんが日和の機嫌を損ねたのは確かだ。大丈夫、まだなまはゲージのたまり具合は20パーセント強だ。今日一日対応を間違えなければ死ぬことは無い、はず。)
やっぱり鈍い小太刀であった。
キーンコーンカーンコーン。四限目の終了を促すベルが鳴る。それは同時に昼休みへの突入を意味している。小太刀と日和は席を立ち、いつものお弁当スポット、屋上へ直行した。
キョロキョロと周りに誰もいないことを確認し
「よし、狐孤もどっていいぞ。」
「はい、ご主人様。ほいっと。」
ストラップがピカリと光ったかと思うと、狐孤が人間に変身して姿を現した。
「うーん、やっぱりこの姿の方が落ち着きますね。」
「姿を変えてると疲れるもんなのか?」
「いいえ、そんなことはありませんよご主人様。気持ちの問題です、気持ちの。」
「そんなもんなのか。」
「はい、そんなもんです。」
と他愛ない会話をしていると、彼方が到着した。これで全員集合である。
日和お手製の弁当をつつきながら小太刀は彼方に尋ねる。
「今日は遅かったな、彼方。なにかあったのか?」
「ごめんごめん、結界張るのに思ったより手間取って。」
「あれ?呪具に問題があったのか?」
「ううん、呪具は問題なかったよ。てゆーかお兄ちゃん作の呪具が不良品なわけないでしょ。」
「では、どうなさったのですか?あの程度の結界、彼方様なら容易く張れるでしょうに。」
「教室の穢レが思ってたより濃くてさ、発動に時間がかかっちゃった。」
「おいおい、大丈夫なんだろうな。」
「そうだよ、邪魅がでたりしないの?」
「結界は発動したから問題はないよ。穢レが濃いって言っても邪魅が生まれるほどじゃなかったし。」
「でも結界を張る程度には濃かったわけだろ?何があった。」
「何がっていうかね、クラス全体がギクシャクしてるんだよねー今。派閥ができちゃってさ、そのせいだと思う。」
生き物が発する穢レの量は一定ではない。むしろ変化が大い。穢レとは邪な気、要するにマイナスの気なのだ。精神が安定していれば穢レは減り、不安定だったり、ストレスを抱え込んでいたりすると穢レは増える。
「なるほどね、そりゃしんどいわな。穢レが溜まるわけだ。」
「ですがその程度でしたら彼方様もおっしゃられたように問題なさそうですね。当面は様子見でいいのではないでしょか?」
「うん、それでいいだろう。彼方、何か変化があればすぐに知らせろよ。」
「わかってるよお兄ちゃん。」
「よかった、心配いらないんだね。こーくんがいうから間違いないね。」
「買いかぶりすぎだよ。っと、ごちそうさま。うまかったよ、日和。」
「お粗末さまでした。お茶あるけどのむ?」
「うーん、いや、ちょっと用があるから遠慮しとく。ちょいと生徒会室に行かなきゃならないんだ。」
「生徒会室ってお兄ちゃん、なにやったの?」
彼方はジト目で小太刀を見る。
「何もしてないからな!妹よ少しは兄を信用しろ。」
「冗談だよ、で、何しに行くの?」
「依頼人に会いに行くんだよ。」
小太刀は今朝披露した小刀を取り出し、そう答えた。
第三話でした。いかがでしたか?
さて、次回は影森兄妹以外の呪師が登場します!お楽しみに。