見誤り
遅くなって申し訳ありません。
あと今回はかなり短いです。
どんな罠を張り巡らせているかと警戒心を最大限発揮していた小太刀は拍子抜けしてしまった。それもそのはず、廃墟には罠など何一つ設置されていなかったのだから。
「暗満、どういうつもりだ?」
「ご主人様の実力を目の当たりにして恐れおののき逃げ出した。というわけでもなさそうですね。」
そのとき、どこからともなく暗満の声が響いた。
「ふははは!この私が逃げ出す?面白い冗談だ、これ以上の実験の場など世界中を探しても見つかるわけがないというのに。」
小太刀は気配を探るが、周囲に暗満の気配はない。
「私はそこにはいない。故に私を探しても無駄だ。」
「へぇ、じゃあお前はどこにいるんだ?まさか遠巻きに見てるだけが実験か。」
「まさか、言っただろう。準備があると。もうすぐ支度は整うもうしばらく待っていたまえ。」
「俺たちが大人しく待っているとでも?」
小太刀は懐から扇子を取り出す。
「吹キスサベ“天嵐”!!」
扇子を広げ、大きく仰ぐ。扇子から生まれた風が巨大な竜巻となり、天井をぶち抜く。
「なっ!」
暗満の声にはじめて焦りの色が浮かぶ。
「お前がどこにいるじゃなんて関係ない、その気になればこんなぼろい廃墟なんてすぐにでも消し飛ばせる。お前ごとな。実験の準備?ハッ、知ったことか。いい迷惑なんだよ。五秒やる、その間に姿を現せ。じゃなきゃここを消し飛ばす。」
小太刀は冷淡な口調で告げる。しかし暗満は・・・・・・
「あははははははははははははははははは!!いい、いいぞ!!」
狂ったように笑っていた。
「5」
「その呪具、そして呪、素晴らしいじゃないか!!。」
「4」
「さすがだよ、最高だ!」
「3」
「君は最高の実験対象だ。」
「2」
「さぁ、楽しもうじゃないか。」
「1」
「最高の実験を!!」
「0」
小太刀と暗満の言葉が重なる、小太刀はカウントを終えると同時に扇子を自分を中心とした円を描く宇王に振るう。
「全テヲ消シ飛バセ“崩天”」
扇子から先ほどとは比べ物にならないほどの風が巻き起こり、球体を成した。球体は天に舞い上りそして、爆ぜた。
びゅごごごごごごごぉぉぉ!!!!!
すさまじい音を響かせながら、球体から解き放たれた風が刃となりすべてを切り刻んだ。あとに残ったものは、油断なく呪具を構える小太刀と周囲の保護のために結界を維持する狐孤、そして狂った笑みを浮かべる暗満だけだった。かつて廃墟であった場所はただの荒れ地と化していた。
「今ので無傷とは、認めてやるよお前は中々いい腕してる。」
「ククク、神具の呪師に認めてもらえるとは、身に余る光栄だね。」
「そうか?そのわりにはちっとも嬉しそうじゃないな。」
「いやいや、私は感情が顔に出にくいタイプでね。」
「じゃあそのトチ狂った笑顔をどうにかしてくれ、気味が悪い。」
「これはこれは失敬。」
「ま、どうでもいいや。あんたの実験場は消えた、これで終わりだよ。大人しく縄につくってんなら痛い目を見ないで済むぜ。」
小太刀は警告する。
「ははははは。」
「何がおかしい。」
「君ほどの呪師でも見誤ることがあるのだと思ってね。」
「見誤る、何をだ?」
「たしかにここは私の隠れ家であり、研究所でもあった。しかし私は一度たりともここが実験場であるといった覚えはない。」
ハッタリではない、小太刀は暗満の顔を見て直感した。では実験場はどこなのか。その時、小太刀の頭にある恐ろしい仮説が浮かんだ。
「――!!お前まさか!」
「気が付いたようだね、そう、私が用意した実験場はこんなちんけなものではない。もっと大きく、広大な場所。この町そのものだ!!」
第二十二話でした。本当のバトルは次回から始まります。
次回はもう少し早く、そして文字数を多くして投稿できるよう頑張ります。




